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ITS開発・展開目標

第5章 ITS開発・展開目標

 5.1 ITS開発・展開計画
 5.2 ITSと国民生活の係わり

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5.1 ITS開発・展開計画

1)基本的な考え方

 ITSは、交通事故の増大、交通渋滞の拡大、沿道環境の悪化、地球環境との不調和、エネルギー消費の増大といった深刻な道路交通問題解決の切り札として期待されるものであることから、可能な限り早期に開発・展開を行っていく必要があり、産学官のITS関係者が共通の努力目標の下で、積極的に取り組みを行っていくことが重要である。このため、9つの開発分野ごとにシステムの実用化実績や研究開発等の進捗状況、さらには、海外での類似システムの開発状況等を勘案し、システムの実用化時期等に関する開発・展開目標を設定することとした。
 なお、ITSの開発・展開目標に関しては、今後の研究開発等の進捗状況、技術の進歩等にあわせて適宜見直しを行っていくものとする。

2)開発・展開計画

 ITSの開発・展開計画としては、9つの開発分野ごとに開発・展開の必要性を整理した上で、各開発分野の利用者サービスに対応したITSとしてのシステムの概要及び開発・展開の目標を提示した。

(1)ナビゲーションシステムの高度化
(2)自動料金収受システム
(3)安全運転の支援
(4)交通管理の最適化
(5)道路管理の効率化
(6)公共交通の支援
(7)商用車の効率化
(8)歩行者等の支援
(9)緊急車両の運行支援

(1)ナビゲーションシステムの高度化
開発・展開の必要性
 我が国においては、交通渋滞により経済損失が年間12兆円、時間損失が年間56億人時間発生しており、社会・経済にとって多大な負担となっている。こうした交通渋滞は沿道環境の悪化、地球環境との不調和、エネルギー消費の増大などの深刻な問題を招いている。また、我が国における交通事故による死亡者数は、1988年以降8年連続年間1万人以上に達している。
 こうした中、利用者の快適性、利便性、安全性の向上を図るため、機器の安全な利用にも配慮しつつ、ナビゲーションシステムの高度化分野の利用者サービスを早期に実現していくことが必要である。
利用者サービス
 ・交通関連情報の提供
 ・目的地情報の提供
システムの概要
 ドライバーが移動中に、経路、移動時間等について最適な行動の選択を可能とし、交通流の分散等により、ドライバーの利便性の向上等を図るため、各経路の渋滞情報、所要時間、交通規制情報、駐車場の満空情報等を、オンデマンド等に対応したナビゲーションシステムや情報提供装置により提供する。また、移動に際して、同様の情報を家庭、オフィス等において事前に提供することにより、効率的な旅行計画の策定を支援する。
 さらに、目的地の地域情報等のサービス情報を、車載機や高速道路上のパーキングエリアやサービスエリア、一般道路上の道の駅等においてオンデマンド等で提供する。
開発・展開目標
  • 車載機等への「交通関連情報の提供」については、順次全国への展開に努める。
  • 家庭、オフィス等での「交通関連情報の提供」については、サービス内容の充実とサービス提供エリアの拡大に努める。
  • 「目的地情報の提供」については、サービス内容の充実を行いつつ、順次パーキングエリア、サービスエリア、一般道路上の道の駅等への導入に努める。
  • オンデマンドに対応した車載機等への情報提供サービスについては、21世紀初頭までの実用化を目途に研究開発を推進し、全国への展開に努める。

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(2)自動料金収受システム
開発・展開の必要性
 我が国の高速道路では、交通集中による渋滞発生箇所の55%が料金所となっている※。また、大規模な道路ネットワークが形成された今日、有料道路における管理費も増大しており、より効率的な道路管理が求められている。
 こうした中、料金所での渋滞の解消、管理コストの低減等を図るため、自動料金収受システムを、料金徴収経費の節減を勘案しつつ、早期に実現していくことが必要である。
 なお、欧米や東南アジアにおいては、すでに自動料金収受システムの実用化が行われているなど、諸外国においても積極的な取り組みがなされている分野である。
※日本道路公団調査による
利用者サービス
 ・自動料金収受
システムの概要
 有料道路の料金所の渋滞解消及びキャッシュレス化によるドライバーの利便性の向上、管理コストの低減等を図るため、有料道路等の料金所で一旦停止することなく自動的に料金の支払いを可能とする。
開発・展開目標
  • 2000年頃の実用化を目途に料金所で一旦停止することなく自動的に料金の支払いを可能とするシステムの研究開発を推進し、順次全国への展開に努める。
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(3)安全運転の支援
開発・展開の必要性
 我が国における交通事故による死亡者数は、1988年以降8年連続年間1万人以上に達している。また、21世紀には4人に1人が高齢者という高齢化社会を迎える。こうした中、交通事故の防止等を図るため、道路及び車両を高度情報化することにより、安全運転の支援分野の利用者サービスを早期に実現していくことが必要である。
 なお、米国はNAHSC(National Automated Highway system Consortium:国家AHSコンソーシアム)が2001年に自動運転システムのプロトタイプを完成し、2002年から試験運用に着手する計画であり、諸外国においても積極的な取り組みがなされている分野である。
利用者サービス
 ・走行環境情報の提供
 ・危険警告
 ・運転補助
 ・自動運転
システムの概要
 事故等を未然に防ぐため、道路及び車両の各種センサにより道路や周辺車両の状況等の走行環境を把握し、車載機、道路情報提供装置により、リアルタイムで運転中の各ドライバーに走行環境情報の提供、危険警告を行う。
 また、車両に自動制御機能を付加することにより、自車両及び周辺車両の位置や挙動、障害物を考慮して危険な場合には自動的にブレーキ操作等の速度制御、ハンドル制御等の運転補助を行い、ドライバーの運転操作を支援する。
 さらに、自動制御が可能な運転補助機能を発展させ、周辺の走行環境を把握し、自動的にブレーキ、アクセル操作等の速度制御、ハンドル制御を行うことにより自動運転を実現する。
開発・展開目標
  • 「走行環境情報の提供」、「危険警告」及び「運転補助」のうち基本的なものについては、2000年頃の実用化を目途に研究開発を推進し、車両の安全装置として装着を開始するとともに、インフラについては順次高速道路及び事故多発地域への導入に努める
  • 「自動運転」については、2000年頃の試験運用着手を目途に研究開発を推進し、21世紀初頭までを目途に全国の主要な高速道路等への導入に努める。
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(4)交通管理の最適化
開発・展開の必要性
 我が国における交通事故による死亡者数は、1988年以降8年連続年間1万人以上に達しているほか、交通渋滞により経済損失が年間12兆円、時間損失が年間56億人時間発生しており、社会・経済にとって多大な負担となっている。また、交通渋滞は沿道環境の悪化、地球環境との不調和、エネルギー消費の増大などの深刻な問題を招いている。
 こうした中、交通の安全性・快適性の向上と環境の改善を図るため、交通管理の最適化分野の利用者サービスを管理者の立場からも着実に実現していくことが必要である。
利用者サービス
 ・交通流の最適化
 ・交通事故時の交通規制情報の提供
システムの概要
 交通の安全性、快適性の向上と環境の改善を図るため、渋滞や環境悪化が著しい地域のみならず、道路ネットワーク全体として最適な信号制御を実現する。また、交通の管理を行うために、車載機や情報提供装置によりドライバーの経路誘導を行う。
 また、交通事故にともなう二次災害を防止するため、交通事故の発生を素早く検出し、それに係わる交通規制を実施するとともに、交通規制情報を車載機、情報提供装置等により、ドライバーに提供する。
開発・展開目標
  • 「交通流の最適化」については、主要都市の管制センターや信号制御方式から高度化し、順次全国への展開に努める。また、推奨経路の車載機への提供については首都圏から順次導入に努める。
  • ITSによる「交通事故時の交通規制情報の提供」については、手段、方法等を確立した上で、順次全国の主要な道路への導入に努める。
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(5)道路管理の効率化
開発・展開の必要性
 我が国では、道路のストックが増大し、道路の維持・補修など道路管理に関するコストの伸びは道路建設に係る費用の伸びを上回っている。さらに、道路構造の保全、安全な交通の確保の観点から、特殊車両の通行管理が必要であるが、その許可手続きの迅速化、通行許可の一層の適性化が求められている。また、我が国では全国に5412箇所もの通行規制区間が存在しており、年間の通行規制回数は1万回を超えている*。
 こうした中、維持管理業務の効率化、特殊車両の効率的な管理、通行規制情報の提供などを図るため、道路管理の効率化分野の利用者サービスを着実に実現していくことが必要である。
 * 建設省資料による
利用者サービス
・維持管理業務の効率化
・特殊車両等の管理
・通行規制情報の提供
システムの概要
 各地域の自然、社会条件に応じて、安全、円滑、快適な道路走行環境の維持を図るため、路面の状況や作業用車両の位置等を的確に把握し、最適な作業時期の判断・作業配置の策定、車両への指示等を行うとともに、災害時には、道路施設や周囲の被災状況を把握し、道路復旧用車両の効率的配置等、迅速かつ的確な復旧体制の構築を行うなどの適切な道路管理を行う。
 また、特殊車両の通行許可申請及び事務処理の電子化、通行許可経路のデータベース化及び許可車両の実際の通行経路の把握、車重計等による通過車両の積載量等の自動的な把握により、特殊車両等の適切な管理を行う。
 さらに、各地域の自然条件に応じて、安全かつ円滑な交通の確保を図るため、雨、雪、霧、風、越波等の状況やこれによる通行規制に係る情報をすみやかに車載機、情報提供装置等によりドライバーに提供する。
開発・展開目標
  • 除雪車の最適配置などITSによる「維持管理業務の効率化」については、 2000年頃の実用化を目途に研究開発を推進し、21世紀初頭までを目途に順次全国への展開に努める。
  • ITSによる「特殊車両等の管理」については、2000年頃の試験運用着手を目途に研究開発を推進し、21世紀初頭までを目途に順次全国への展開に努める。
  • ITSによる「通行規制情報の提供」については、順次全国の主要な道路の通行規制区間、峠部等への導入に努める。
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(6)公共交通の支援
開発・展開の必要性
 我が国では、自動車交通の増大に伴い、市街地等においては渋滞等により、バス等の定時性が損なわれてきたことなどにより、乗合バスの総輸送人員は昭和50年に比べ70%以下となっている※。
 こうした中、公共交通において安全確保を行うとともに、事業運営の効率化、利用者の利便性の向上及び交通機関の最適な利用分担の実現を図るため、公共交通の支援分野に含まれる利用者サービスを実現することが必要である。
※地域交通年報による
利用者サービス
 ・公共交通利用情報の提供
 ・公共交通の運行・運行管理支援
システムの概要
 公共交通利用者のニーズに適した移動手段、乗り換え、出発時間帯等の選択を支援し、利用者の利便性の向上を図るとともに、交通機関の最適な利用分担の実現を図るため、公共交通機関の運行状況、混雑状況、運賃、料金、駐車場等の情報を出発前の家庭やオフィスの端末、あるいは移動中の車載機、携帯端末機、道路やターミナル、バス停、高速道路のサービスエリア等に設置された情報提供装置などにより提供する。
 また、公共交通機関の安全で円滑な運行による利便性の向上と、事業運営の効率化を図るため、公共交通機関の運行状況等をリアルタイムに収集し、必要に応じて優先通行を実施するとともに、公共交通事業者に基礎データとして提供すること等により、公共交通機関の運行・運行管理を支援する。
開発・展開目標
  • ITSによる「公共交通利用情報の提供」については、主要商業地域周辺等から順次導入に努める。
  • ITSによる「公共交通の運行・運行管理支援」については、主要都市を中心に効果的な地域から順次導入を行い、21世紀初頭までを目途に全国の主要な道路への展開に努める。
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(7)商用車の効率化
開発・展開の必要性
 近年の物流サービスの多様化と渋滞発生等により、集配業務における積載効率は低下し、現在では積載率は20%以下となっている※。また、物流事業におけるコストの増大、ドライバーの高齢化などの問題も顕在化している。
 こうした中、集配業務の効率化、業務交通量の低減、輸送効率の飛躍的向上を図るため、商用車の効率化分野の利用者サービスを実現することが必要である。
 ※自動車輸送統計年報による
利用者サービス
 ・商用車の運行管理支援
 ・商用車の連続自動運転
システムの概要
 輸送効率の飛躍的な向上、業務交通量の低減、輸送の安全性向上を図るため、トラック、観光バス等の運行状況等をリアルタイムに収集し、輸送事業者等に基礎データとして提供すること等により、運行管理を支援する。また、高度化・自動化・システム化された物流センターの整備、共同配送・帰り荷情報等の提供等により物流の効率化を支援する。
 また、自動走行機能を持った複数の商用車等が適切な車間距離を保ちながら、連続走行を行う。
開発・展開目標
  • ITSによる「商用車の運行管理支援」については、2000年頃の試験運用着手を目途に研究開発を推進し、21世紀初頭までを目途に順次全国の主要な道路への導入に努める。
  • 「商用車の連続自動運転」を可能とするシステムについては、2000年頃の試験運用着手を目途に研究開発を推進し、21世紀初頭までを目途に全国の主要な高速道路等への導入に努める。
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(8)歩行者等の支援
開発・展開の必要性
 我が国においては、21世紀においては4人に1人が高齢者となることが予想されている。一方、現在では歩行者・自転車交通事故死者の半数が65歳以上の高齢者となっている。
 こうした中、高齢者、障害者等の交通弱者も安心して利用できる安全で快適な道路環境の形成を図るため、歩行者等の支援分野の利用者サービスを実現することが必要である。
利用者サービス
 ・経路案内
 ・危険防止
システムの概要
 高齢者・障害者等の交通弱者をはじめ歩行者等が安心して利用できる安全で快適な道路環境の形成を図るため、携帯端末機や磁気、音声等を用いた施設・経路案内や誘導等により歩行者等の支援を行う。
 また、歩行者が道路を横断する際等の安全を確保するため、携帯端末機等による歩行者用信号の青時間の延長等により歩行者等の支援を行う。さらに車両側の対策として、前方の歩行者を検知し、ドライバーへの警告や自動的なブレーキ操作等により、歩行者等の交通事故に対する危険防止等を行う。
開発・展開目標
  • 歩行者等の「経路案内」については、2000年頃の実用化を目途に研究開発を推進し、主要商業地域周辺等から順次導入に努める。
  • 歩行者用信号の青時間の延長が可能となる信号の整備については、計画的な導入に努める。
  • 歩行者等の「危険防止」のうち、車両側の対策については、2000年頃の試験運用着手を目途に研究開発を推進し、21世紀初頭までを目途に実用化を図り、車両の安全装置として装着に努める。
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(9)緊急車両の運行支援
開発・展開の必要性
 我が国においては、阪神・淡路大震災における道路遮断等にみられるように、道路交通における迅速な緊急時対応は社会的な要請となってきている。
 こうした中、災害、事故等にともなう迅速かつ的確な復旧・救援活動の実現を図るため、緊急車両の運行支援分野の利用者サービスを早急に実現することが必要である。
利用者サービス
 ・緊急時自動通報
 ・緊急車両経路誘導・救援活動支援
システムの概要
 災害、事故等に伴う迅速かつ的確な復旧・救援活動の実現を図るため、車両等自らが自動的に緊急メッセージを関係機関へ通報し、災害、事故等の認知と地点等の特定までに要する時間を飛躍的に短縮する。
 また、交通状況及び道路の被災状況等をリアルタイムに収集し、関係機関への伝達、復旧用車両等の現場への誘導等を迅速に行う。
開発・展開目標
  • 「緊急時自動通報」については、研究開発を推進し、災害、事故時等の被害拡大防止に効果的な箇所から順次導入に努める。
  • 「緊急車両経路誘導・救援活動支援」については、2000年頃の試験運用着手を目途に被災状況の検知・予測に関する研究開発を推進し、21世紀初頭までを目途に順次全国の主要な道路、地域への導入に努める。
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図表5.1.1 ITS開発・展開計画
ITSの開発・展開計画(年表)

5.2 ITSと国民生活の係わり

 ITSは、国民生活に不可欠な道路交通の高度情報化であることから、その展開に応じて、我が国の国民生活は安全性や快適性の面で大きく向上していくことが期待される。21世紀に向けてITSと国民生活の係わりは、以下のように想定される。

1)第1フェーズ(2000年頃)

「ナビゲーションシステムをはじめとする一部先行システムのサービス開始」
〜ITSのはじまり

 ITSの創生期にあたるこの時期は、すでにサービスが開始されているVICS等による交通関連情報の提供により、渋滞情報や最適経路等がナビゲーションシステムに表示され、ドライバーは移動時間の短縮等、快適な移動が享受できる。また、第1フェーズの後半には、自動料金収受が開始され、料金所での渋滞が解消されはじめる。

2)第2フェーズ(2005年頃)

 「各種利用者サービスの開始」〜交通システム革命

 21世紀にあたるこの時期は、ITSの様々な利用者サービスが順次導入され、交通システムの革命が始まる。ITSにより利用者に提供される情報は、目的地に関するサービス情報、公共交通情報など、その情報内容が拡充され、一層の利用者サービスの向上が図られる。例えば旅行を計画する際に、利用者のリクエストに応じた魅力的な目的地を検索し、所要時間等を勘案した到着までの最適な経路、交通機関等が容易に選択可能となる。
 また、ドライバーの安全運転の支援と歩行の安全性向上により、高速道路、一般道路における交通事故の減少が図られる。交通事故等が発生した場合においても、迅速な通報と交通規制により、被害の拡大が防止され、緊急・救援活動の迅速化と合わせ、従来であれば命を落としていたかもしれない人々を救う。
 一方、公共交通機関の定時性の確保と情報サービス等の充実により、公共交通の利便性は飛躍的に向上する。また、輸送事業の業務等に関する効率化が図られ、物流コストの低減等により国民は利益を受けはじめる。

3)第3フェーズ(2010年頃)

 「ITSの高度化と社会制度の整備」〜自動運転−夢の実現

 ITSの高度化にあたるこの時期は、インフラの整備と車載機等の普及に加えて、ITSを社会システムとして定着させるための法的、社会的制度の整備も行われ、ITSによる効果は、広く国民全般に行きわたる。また、さらに高度な機能の実現により、これまでは夢とされていた自動運転が本格的にサービスを開始し、車内は安全で快適な空間となる。

4)第4フェーズ(2010年頃以降)

 「ITSの熟成」〜社会システムの革新

 本構想の最終期にあたるこの時期は、ITSの全てのシステムが概成するとともに、光ファイバー網の全国整備などによる高度情報通信社会の本格的到来により、社会システムの革新が行われる。
 この時期には、自動運転の利用者が増大しはじめ、一般的なシステムとして定着しはじめるなど、ITSに関しても熟成の時期を迎え、ITSは道路交通ならびに交通全体に係わる基本的なシステムとして広く国民に受入られている。これにより、交通事故による死亡者数はモータリゼーションの進展にも係わらず、現在よりも大幅に減少することが期待される。また、都市部をはじめとした道路等の渋滞は緩和され、快適で円滑な移動が可能となる。さらに、業務交通量の低減により沿道環境、地球環境との調和が図られる。