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氏 名所 属
足立 紀尚 (財)地域地盤環境研究所 理事長
(京都大学 名誉教授)

■ご意見の内容

[道路構造]
 日本の道路状況は、いわば「路地・畦道・獣道」のレベル。高規格道路といいつつ、4車線では十分とはいえない。
 国道1号にしても滋賀県の石山や大津などでは対面2車線であり、私から言わせれば路地レベルだ。
 延長、幅員とも不十分であることをもっと認識する必要がある。
 トンネルで整備される首都高速新宿線の幅員も3.25mと貧弱であり、防災や事故時を考えると信じられない構造ではないか。
 道路の幅が狭いために、神戸の地震の時も延焼が広り、また緊急車両も通行できなかったことをよく考えるべき。街のブロック化も必要。道路(全)幅員を20m以上確保し区画のブロック化をする。そうすれば災害時に1ブロックの被害はやむを得ないが、最小限の被害で済む。
 駅にバスが入れない道もあり、都市構造として不十分である。
 今後は、対面通行をあえて一方通行として歩道を拡げるとともに、災害などの緊急時は歩道を緊急車両が走れるなどの工夫により、良好な道路空間とすることが大事ではないか。

[ネットワーク]
 災害時に道路が寸断されると物流も悪くなる。例えば、神戸の震災の時も中国道が寸断されたため、東京の野菜の値段などが上がった。都市部は、いかに地方の物産の恩恵を受けているかを、もっと理解すべき。
 いわゆる「強災都市」を構築するため、都市計画に基づく道路整備が必要。この結果、安全・安心な街づくりが可能となる。
 渋滞が起きるのも部分的な構造が悪いところもある。新たなネットワーク整備だけでなく、既存の道路に少し手を加えて、大きな効果を生みだすことも可能ではないか。
 国幹道等の幹線道路は、国の責任で整備するのが基本。
 地上は人が利用するから、地下を利用することも考えるべきだ。そういう意味で、東京日本橋付近の構想は評価できる。ただし、トンネルは交通安全上は望ましくないことから、基本的には道路構造上やむを得ない箇所に限定すべきである。

[道路財源使途]
 鉄道整備を含めた交通システムにも道路財源を入れるべき。結果として、渋滞が低減するのであれば、財源の使途として利用者の理解が得られるのではないか。
 災害対策の観点から都市計画に基づく面的な都市整備のために道路財源を使っても良い。
 公共事業を儲けの対象に考える発想は問題である。直接の利益を生むものでなく、行うことによって豊かな社会基盤を創り上げる、それが公共事業だ。

[その他]
 奈良時代は小路でも12mの幅はあった。奈良時代に比べ、平成時代の政治家は社会資本に対する認識が貧困ではないか。
 高速道路も「料金」ではなく、「道路利用税」とすれば良かった。そうすれば「道路は税金で造る」という原則がより明確となった。
 彦根では商店街を整備して、道路が広くなり、観光客も増える等、高い効果があった。
 現在の対面道路を一方通行にして残りの車線を歩道にする等、良好な歩行空間を創出することも一案である。
 大都市部近辺でも社会基盤整備は不十分。もっと郊外の重要性を考えるべき。


【まとめ】

・日本の道路の現状は、いわば「路地・畦道・獣道」のレベルで、今の状況では十分な道路整備がされたとは言えない。社会基盤は豊かでない現状を認識すべき。

・車だけでなく、鉄道も含めた交通体系全体の社会資本整備が重要。鉄道を含めた交通システム整備にも道路財源を投入すべき。

・「強災都市」(災害に強い都市)を造るため、都市計画に基づき、広幅員の道路を有する都市整備を行うべき。