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氏 名所 属
朝倉 康夫 神戸大学大学院 工学研究科 教授

■ご意見の内容

○はじめに(自由意見)
 ・神戸大学では現在文科省の「21世紀COEプログラム」、「安全と共生のための都市空間デザイン戦略」の研究を行っている.その中で、21世紀のまちづくり、みちづくりの計画目標として「安全」、「共生」という価値を重視すべきであることを指摘している.「自然」、「社会」との関係で,安全と共生にかかわるみちづくりの政策目標を整理すると
*事故のない安全なみちづくり
*災害に対して安全で信頼性の高いみちづくり
*自然環境に負荷の少ないみちづくり
*多様な人々の利用を考えたみちづくり、コミュニティ形成に役立つみちづくり
を進めるべきであるといえる.もちろん、効率化という視点が重要であることは自明であり、安全と共生の制約の下でモビリティを最大にする政策を考える必要がある。

○これまでの道路政策に関して
改善すべき点:
 ・幹線道路計画における参加型アプローチのあり方
その理由:
 ・地域の生活道路を整備する際に、ボランティアサポートなどのボトムアップ型の参加型アプローチは比較的進めやすいが、大阪湾岸道路西伸部のように国づくりの骨格となる幹線道路ネットワークの計画についても、参加型アプローチが重要であるということで、いきなり住民に意見を聞くという形式を取るのは再考すべきであろう。国づくりの骨格となるネットワークは事業者サイドで十分な議論をし、そのポリシーを明示して関連の利害関係者(住民等)の意見を聞き、必要に応じて原案を修正するという進め方のほうがベターではないだろうか。幹線・広域の道路網計画では,トップダウンの計画とボトムアップの計画のおりあいのつけ方をさらに検討すべきであると思う.

道路に関して無駄と感じること:
 ・アウトカム指標。
その理由:
 ・道路整備を評価する適切な指標になっていないのでは。学術的に意味があるかどうか議論がされないまま政策的に取り上げられているように感じる。とりまとめる方にも負担がかかっている。海外の指標とも比較できる指標にしてほしい。もちろんそのためにはデータの整備・充実が必須であり,関連のデータを計画的にしっかり収集してほしい。

○国民から幅広く意見を聞くときの留意点は
 ・これまで以上に可視化の工夫を図るべき。渋滞のデータなど国民および政策決定者にわかりやすく見える形にしてほしい。維持管理などの見えにくい部分についても可視化の工夫を検討してほしい。
 ・アンケートについて、選択肢形式は大量に統計処理ができるので否定はしないが、それだと「なぜ」その選択肢を選んだのか理由がわからない。サンプル数は少なくてもインタビュー形式で詳しく背景を把握できるものも必要と思う。

○道路政策全般に対するご意見、ご要望
 ・入札制度について、非常に優秀な技術をもった小さな会社が仕事をとれなくなってきているのではないかと危惧している。プロポーザルにしても本当にいいプロポーザルが評価を受け、採用されているのか.過去の実績のある大企業(新しい仕事ができるとは限らない)が受けてはいるが、自社で対応できずに他社に再委託するケースも発生しているのではないかと危惧している。