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氏 名所 属
天谷 光治 前 大野市長

■ご意見の内容

○これまでの道路政策に関して、特にどのような改善点があるとお考えですか。
イニシャルコストのみで予算を立てるのではなく、将来に渡っての道路維持管理費を含めた予算の計画を立てる。省庁のセクショナリズムで、機能の良く似た農道、林道、一般道路の見直しが必要である。
インターネットなどの回線は将来必須であるので基本幹線道路では道路工事とあわせて計画施工したら良い。


○その他、道路政策全般に関して、ご意見、ご要望があればお聞かせください。
道路をとらえる時、国道・県道・市町村道がある。国が計画した道路を県が代行して整備する事は理解できるが、住民にとっては国道だろうが県道だろうが道路である事には変わりはない。
私も実際に行政をやっていて困った事は、国道は『幹線から幹線を結ぶのは国道』であると思うが、それが市町村の補助金行政に対する思惑で、国道に昇格させ補助金をもらって整備しようとし、街の中の道路を国道に昇格させているので、国道の道路構造に関する規定(道路構造令)があって、それに合わせようとして無理をしている。
町の特徴を活かす意味ではある程度地方に財源を移し町の中の道路は市町村に任せてもらう方が効率が良い。町の形態もその町々で特色があって初めてその町の魅力となる。全国一律の基準(道路構造令)をあてはめると特色がなくなる。(補助金を目当てにしている)市町村も悪いが、財政が厳しく予算が無いものだから何とか国や県から補助金をもらって道路整備をしようとして、町なかの道路においても過剰基準(道路構造令)を満たそうとして建設費が膨らむ。大野市の様な城下町に、例えばR(カーブ・曲線半径)や道路幅を確保した様な道路を整備する事は実際無理である。でも、補助金を貰うためにどうしても基準に合わせなければダメだという事になっている。

 一例を挙げると大野の亀山(大野城)にトンネルを掘って市内につなぐという計画がある。それを防止するため、私が市長になったきっかけの一つでもあるが、城下町を壊したくないという思いがあった。財源が厳しい大野市が国道の整備という名目で補助金を貰って道路整備をしようと考えて、県道を国道に昇格させた。しかし、国道に昇格するとR(カーブ・曲線半径)が厳しいと『曲がった道は認めない。真っ直ぐにしなさい。』と言われ、花山峠から大野市内に下りてきた道路を亀山(大野城)にトンネルを掘って、大きな道路と繋ごうという事になった。その様な計画は、結局町を壊してしまう。市町村が町に合った道路を作る方が、市民も誇りが持て、観光客が来ても『この町にはこんな特色があったのか』などと地域の特色を理解して貰いやすいと思う。大野市ではこの問題で未だにもめている。もめている理由は、地方が財政が豊かではないため、補助金をもらって道路整備をしようというところにある。
今言われている1.5車線道路などは良い考え方だと思う。私が市長になったころには、県は基準を満たす事しか言わないので、直接国に行ってローカルルールの話をすると考え方に賛同してもらえる。公務員は国民の為にあるべきだという考え方はあっているが、だんだん末端になってくると、その様な考え方はどこかに行ってしまって、基準のために仕事をこなすようになっていると感じた。そういう意味で道路特定財源を道路整備の目的で一般財源化するのであれば、地方の個性が出る事となり非常に良いと思う。

 また、今までの道路は車が速く走れる事を重要視していたが、道路は単に車だけの物ではなく、楽しむ道路があっても良いと思う。

例えば道路にベンチが置いてあったり、計画道路の真ん中に樹木があれば、樹齢200年も経つ様な樹木を道路が通るために伐採してしまえと言う様な話にはならない。シンボルがあって初めて、『ああ、昔あそこはこんな所だった』と分かるが、道路構造令をもって道路を整備すると樹木を伐採しなければいけなくなるので、もっと道路整備には『心や遊び』を入れてやる必要があるのではないか?
歩道を歩いても、安全なバリアフリーの歩道である事も大切だが、通行する事だけを考えるのではなく、とどまれる事が出来るのも道路である。今までは通行することを主に考えた道路であったが、憩いの道路というようなとらえ方をした道路行政が必要だと思う。そうすれば、全国何処へ行っても一律の道路ではなくなるし、町の個性が出てくると思う。特に今後団塊の世代が出てくると、今まで高度経済成長の時代に早く効率的にお金が儲けて車を買うなどの事を考えていた価値観が、これからは生きるという事はどういうことな価値観に変わると、先程の道路構造令の道路ではなくて、人が憩える様な道路であると思う。国の規定を城下町や宿場町に取り込んでしまうと、その町並が壊れてしまうので、その様な事が無い様な仕組みを作ってもらいたいと思う。一般財源化についてもその様な方向であると良いと思う。
新幹線やコンビニなどは何処にいっても同じ物だ。何処の町に行っているか分からないのは寂しい感じがする。効率的には良い事かも知れないが、人が生きていくうえで、『ただ効率だけで生きているのではなく、生きているという価値観はそこで生まれて育って土に戻るのだ』と思う事を考えれば、生きている価値観が分かる様な道路であって欲しいと思う。最近観光道路を通ると、借景の良い所がある。あの様な道路は非常に良いと思う。

 北海道へ行くと、道路の側溝が無い事があるが、全然イメージが違う。道路の際はすぐ牧草だったりすると北海道に来たという感じがして良いと思う。維持管理上問題がなければ、北海道の道路整備の特色なのかと思う。

 大野に住んでいると雪が降る。除雪車を出すと一日500万程度費用がかかり除雪費用の負担は雪国の自治体運営は難しい。だだっ広い道路ならば、雪が無い時は閑散として寂しいが、ヒューマンスケール(人や車が通る道路)としては幅が狭くても充分だと思う。
雪の処理について具体的にどの様にしたらよいか分からないが、大野に住んでいると雪で本当に泣かされる。

 地元としては道路を整備して良くなった面と、道路に過剰にお金をかけずに他の事に使った方が良いのではないかという思いがある。
それは地域間格差の問題にも絡んでくるが、何処の道路は整備する・整備しないなどの優先順位を決めるのは難しく、自分の所は早く整備して欲しいが、他の町に行くとなんでこんな立派な道路があるのだと思ったりする事があり難しい面がある。それは優先順位を現時点で付けるのか、将来的に整備された後の効果を考えて優先順位を付けるのかでは、内容が全く違うと思うからである。私も国県へ要望に行ったが、ただ道路を整備してくれと言うだけでは意味が無いので、『大野の町をこんな町にしたい。』あるいは『こんな町でどうしても困っているから道路を整備して欲しい』というお願いをした。『道路を整備しないから町が良くならない』とするの一面的だと思った。しかし、今の価値観で必要な道路なのか、将来こんな形になるから必要な道路なのかという問題があって、どこで価値観を切るかによって、道路の整備も変わってくると思う。道路が整備された事によって、良くなった町もあるし、悪くなった町もあると言う事である。例えば白鳥などは東海北陸自動車道でつながる郡上八幡までの工事中には人口が増え、職人さんが増え、立ち退きでお金が入るなどすごかった。しかし、開通してからはどうなったかと言えば、逆に人口はどんどん減ってしまって沈んだ町になってしまった。また、町に魅力が無いので、他の魅力のある町への通過交通になってしまったという例もある。道路を整備する時の価値観による優先順位の付け方も一つの大きな課題であると思う。


○今後、道路政策においては、無駄を排するなど効率化を徹底する必要があると思いますが、特にどのような点を重視すべきとお考えですか。
談合をなくす入札制度の改革が一番である。毎年アスファルト舗装の改修をいたるところでしているが、耐久性のある道路材料の開発。

○今後取り組む道路政策の一層の重点化を図ることが必要であると思いますが、優先度が高い又は低い課題への対応は何であるとお考えですか?
国道は町と町を幹線で結んで、国道からアクセス道路で市街地に結ぶことが良いと思うし、またその方が町を壊さないと思う。矛盾を感じる事は、町なかに道路を通すと賑やかになるという考え方である。地元の要望で大野市〜福井市間の国道158号は、計画されたと思うが、大野から福井に行くのには真っ直ぐ国道(トンネル)を作って、30分程で行ける道路として、町からは国道までのアクセスを作る様な仕組みの方が、町の平野部を壊さないと思う。そうすれば安く出来るし、雪の処理も少なくてすむと思う。道路が整備されれば町が繁栄するという短絡的な考え方が問題なのだと思う。自分の町をどれだけ魅力を付けるかと言う事が重要だ。道路が整備されないと魅力が出ないのではおかしい。魅力があれば、自然と道路が整備されるのだと思う。私も色んな所に行くとやはり魅力がある所に行きたいと思う。そんな時には道路があれば便利だと思う。


○国民の皆様に対し、幅広くご意見を頂くこととしておりますが、特に留意すべき点などがあればお教えください。
 昔と比べて、国土交通省が聞く耳を持つ様になったと思う。意見が反映されるかどうかは別として非常に良いと思う。