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氏 名所 属
荏原 明則 関西学院大学大学院 司法研究科 教授

■ご意見の内容

○はじめに(自由意見)
 ・橋梁等の構造物についてどれくらい保たせることができるのか気にしている。

○これまでの道路政策に関して
改善すべき点:
 @人、物を運ぶという視点において、道路と鉄道、航空機その他の交通との分担を考えるべき。交通全体で使い分けし交通施策として考えるべき。高速道路はもう少しつくってもいいかなと思っているが、都市と都市を道路だけでつなぐアメリカ型ではなく、鉄道を含めた交通網を考慮したヨーロッパ型の整備をすべき。
 A林道、農道と重複のないように全体を見て考えるべき。
 B都市計画との調整。都心部に向かう場合と都市内での交通手法の分担をきちんと考え、まちづくりの観点で道路整備を考えるべき。都市の管理という面からも道路を含めた公共施設の整備・管理を検討すべきである。
その理由:
 @地方空港は交通施策上からいえば、無駄と思われるものが多い。道路でもそのようなことがないように。
 A道路と都市計画は縦割りになっている。住民は都市計画のほうを気にする。

道路に関して無駄と感じること:
 @費用対効果だけでの議論
 A現在の道路工事のやり方。
その理由:
 @費用対効果だけが全てではない。経済的に無駄に見えてもつくらなければならないものもある。交通網対策にも主眼をおいて、必要性をどう評価するかであり、わかりやすさが重要。
 A道路工事については各種の工事を調整してまとめてやるべき。

○今後の道路政策において
重視するべき点:
 ・生活道路の確保、及び生活空間としての道路の見直し。(道路法及び道路構造令の見直しも必要。)
その理由:
 ・阪神・淡路大震災のときに、住居地区に4m道路が整備されていなかったために、被害が拡大した。生活道路は最低4m以上必要であるが、これは都心部では困難なこともある。最低限バス通りの確保を考慮して欲しい。歩道と自転車道と車道を分離するとともに駐輪場の整備も必要。都心部では自動車の通行制限も。
 ・道路は自動車、歩行者、自転車の通行だけを考えるのではなく、人が立ち止まって会話ができるような人間としての多様な要素を考慮した道路構造に見直していくべき。
 ・防災とうるおい・やすらぎの空間としての道路は重要である。

○道路政策全般に対するご意見、ご要望
 ・道路法の目的(第1条)に環境への考慮を入れるべき。河川法も港湾法も環境配慮の概念を入れた。これからは、環境のことを抜きにして住民の合意形成は困難と思う。また、道路の目的は単なる交通空間ではなく、多様な価値と使用形態を前提とすべきことを確認すべきであり、また道路整備に関する合意形成プロセスの整備も法制化すべき。
 ・道路の維持管理の問題について、アメリカと同じように橋が落ちたりすることが日本でも起こりうる可能性がある。特に地方の橋梁の状態はひどい。このままにしておくと大きな被害が出る可能性があることや維持管理にお金がかかるんだということを、国民に対して公表し周知して行くべき。また、幹線道路の維持管理は、国だけでできるのかなと思っている。アダプトシステムは最近採用されてきたが、道路への注目、公共空間であるという意識の向上の面からも今後も推進すべきである。この件については、体系的かつ重点的にやってほしい。
 ・交通手段としての自転車の再評価をすべきである。東京訴訟のように自動車中心の道路政策は限界にきている。都市内の手段としては、自動車の制限、自転車および徒歩のためのスペース、施設の確保、充実が課題であり、これを重点とすべきである。