閉じる
氏 名所 属
橋本 清勇 広島国際大学 工学部建築学科 准教授

■ご意見の内容

Q.これまでの道路政策について特に改善すべき点
・ 道路および自動車は、人が移動するためのひとつの仕組みでしかなく、バスや鉄道、自転車など他の交通機関等を含めて総合的な議論を行うべき。特に、今後「環境」が益々重要なキーワードとなっていく中、自動車の利便性と環境負荷を比較考証した議論をキチンと行うことが重要。
・ 自転車道の必要性は感じるが、自転車道の整備のみを先行して進めることは早計では無いかと考える。すなわち、交通手段として自転車が認知され、住民の交通行動やライフスタイルが変化するまでには相当の時間を要することが想定され、その見込みも定かではない。そのような甘い見通しの下で整備を進めては無駄も生じかねない。そのため、ドイツなどを参考にして、公共交通機関(電車等)への自転車乗り入れを可能にするなど、多様な施策を組み合わせながら、自転車利用の気運を高め、実現可能性を見極めた後に本格的に取り組む方が良いと考える。また、このような総合的な仕掛けがこれまでの道路行政では不足していたのではないか。
・ 土木技術者は、本来、将来のまちやみち、かわの姿を予測して事業や管理を行っていくものだが、せち辛い世情のためか、近視眼的になっていないか。致し方ない部分もあるかも知れないが、考えるべき論点である。
・ 道路整備と都市計画・地区計画等のまちづくりが十分に連動していないように感じる。例えば、渋滞対策としてバイパス整備を行う前に、既存道路ストックを活用した交通分散、公共交通機関の利用や相乗りの促進による発生交通量の抑制、オフピーク通勤によるピーク分散などまちぐるみの取り組みを行えば渋滞の緩和・解消を図ることができるかも知れず、試行する価値はあると思う。しかし、十分に行われていないのではないか。

Q.効率化を図るべき点、道路に関して無駄と感じること
・ 無駄とは何か(定義)を明らかにした上で議論を進めるべきである。なお、議論に際しては、いわゆる費用対効果・コストパフォーマンスなどの一面的な価値観のみで全てを割り切る(切り捨てる)ことがないよう十分な議論を望む。物事の優先度は、立場(都市部に住むか、地方部に住むか等)によって異なるため。

Q.道路政策の重点化を図る上で、優先度が高い又は低い課題への対応
・ 道路整備の必要性は、地域毎の与条件に応じて異なるはずであり、的確な現状分析が必要。例えば、鉄道・バスなどの公共交通機関がある地域と無い地域、都心部で便が良いところか地方部で便が悪いところかなどの分析を行った上で、なお移動するための手段が限られる地域(地方部で、鉄道・バス等の公共交通機関もない地域等)では、交流を確保するため幹線道路整備が必要であると考える。

Q.国民の皆様に幅広くご意見を頂く上で特に留意すべき点
・ 今回のアンケート票は、内容や用語等、一般の方が理解するには難し過ぎないか。本件に関心のある建設業者や道路行政関係者は目的を理解してキチンと回答するかも知れないが、大多数の国民には難度が高いと感じられる。多くの国民は、日頃から道路行政や特定財源に対する意見やニーズを意識して考えている訳ではない。まず、道路行政に対するニーズや問題意識等を持っていただくための取り組みが必要ではなかったかと思う。