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氏 名所 属
春名 秀機 (財)名古屋都市センター 副理事長

■ご意見の内容

1 これまでの道路政策に関しての改善点。


「人と車の共存  車社会から人社会への転換」

@  道路は、長い歴史の過程で、人が移動する空間、交流する空間として機能してきた。車馬は、道路を従たる立場の利用であった。

A  ここ数十年の間に、道路は、主として自動車が移動する空間であって、従として人は(自動車走行の危険性を避けて)道路の端を遠慮して使用する立場へと逆転した。

B  自動車による交通死亡事故件数は、年間8000人に上る。

C  都市の主要道路や新市街地は歩車分離が整備されたが、一歩旧市街地に入ると、歩行者は、自動車の危険にさらされている。
このように人が自由に歩けない道路は、都市ではない田舎の市町村も同じように、車の走行台数は少ないにもかかわらず、スピードを上げて走る自動車の危険にさらされて、劣悪な状況である。

D  主として車が走る道路(地域内幹線道路)と、主として人が歩く道路(生活道路)を、明確に区分するため、生活道路優先地域を設定し、その地域内のスピード制限を30km/hに抑制する法制度を設けることはどうか。

本当の意味での、「人と車の共存」になるものと考える。

2 今後、道路政策において、無駄を排するなど効率化の徹底で重視すべき点。


「全国津々浦々、高速道路はじめ高品質の道路の費用対効果」を。

@  日本の隅々まで、山間部の村落まで、立派な連続橋脚、トンネル等の道路築造費が、日本経済発展の原動力として寄与してきた(ケインズ理論)ことは、重大な事実である。
Aしかし、それらの道路の使用頻度、長期にわたるメンテナンス、将来のクラッシュ&ビルトを考えると、抜本的な道路政策の変更を余儀なくされると思われる。

「道路埋設物(ライフライン)のキャドシステムの導入」を

@  ガス、水道、電気等の埋設管渠の掘り返し工事は、相互の管理者が時期、箇所等についてしっかり調整すべきである。

A  全ての道路にミニキャンド整備することが、結果として長期的な効率化を進めたことになるのではないか。

3 道路に関して無駄と感じること。


「車社会における遊休地の多い都市周辺部」の市街化の促進

@  都市周辺部の農地が区画整理事業や開発行為で宅地化されても、それらの土地が長い間遊休のまま放置されていることが多い。
A  点在する住宅地域で、道路、公園のメンテナンスに、都心部と同じ費用(税金)が注ぎ込まれるのは時に無駄を感じる。

4 今後、取り組む道路政策の優先度の高い課題への対応。


「サスティナブルシティ、コンパクトシティ」の実現

@  少子高齢化に伴う人口減少、化石燃料等の使用に伴う地球環境問題と自動車走行のエネルギー、鉱物等の資源の有限化を考えると、50年、100年、500年、1000年後のスパンで、メンテナンスやクラッシュ&ビルトの将来予測を想定し、道路行政についても政策展開を図るべきと考える。

A  課題の解決に当たっては、特に人優先の社会を配慮されたい。

B  解決のヒントは、サスティナブルシティ、コンパクトシティにある。




5 幅広くご意見を頂く際に特に留意すべき点。


「車が使う道路でなく、人が使う道路」について、国民がどのように理解し、期待しているのか、のアンケートに留意してほしい。

6 その他、道路政策全般に関して。

社会資本としての道路は、人の社会は道路を血管として機能しているから、永遠に国策上の最重要課題である。時に社会資本の整備はほぼ完了したような議論を聞くが、前述したことを含め、アメリカの道路行政やヨーロッパの広場の概念なども参考にして頂きたい。