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氏 名所 属
藤田 素弘 名古屋工業大学大学院 教授

■ご意見の内容

○都市部と地方部の意見のちがいと道路政策
 まんなかビジョンの策定時の地域討論会で感じたことだが、都市部と地方部では、意見がかなり違う。自分の町のことは考えているが、ほかの町のことはよくわかっていない。都市部と地方部の意見の違いをしっかりと地域全体で十分共有できるようにしたほうが良いと感じる。
 予算が縮小傾向の中で、今後、何をやっていくべきか。これからは、特に地域によって要望する意見が異なってくると思われるので、メリハリをつけた政策をしていかなければならないのではないか。
 たとえば、地方部では、都市部とちがい災害時の代替路線も十分に確保されていない場合や、高齢化の度合いを考慮した歩道整備・事故対策、公共交通輸送への支援など、地方の声を正しく吸い上げ、必要に応じて道路整備を進めていく必要がある。
  
○公共交通へのアクセス
 公共交通へのアクセス道路や歩道、パークアンドライド施設等、人がスムーズに移動できるようにするのは大事。
 また、地方ローカル線では、自宅から駅へのアクセスが重要な課題になる。駅前ロータリーがないところも多い。また、道路が狭く、駅までバスがアクセスできないようなところもある。
 歩道、自転車道についても、毎日の通勤に利用するアクセス道の整備は必要。

○住民意見
 住民参加、市民意見の集約は、限られた財源において有効な施策を行っていくうえで、これからますます重要となってくるだろうし、うまく住民意見を引き出す仕組みを作る努力を続けていく必要がある。
 行政が考えることや、計画することには、まだまだ不十分なものや配慮の余地が残されていることが少なからずあり、住民意見と行政との緊張感のある対話の中から、よりよい施策につなげていくことが重要である。それには、行政担当者側の姿勢が重要で、まだ見逃した問題点がなかったか自問自答し、慎重に意見を聞く姿勢が重要と思われる。
 ところで、住民参加には、事業によっては、行政と住民の双方にとって、大きな負担となることもある。これまでの住民参加事業の取り組みを教訓としつつ、住民が自ら輝く場となるような、より効果的な住民参加の在り方についての工夫も必要と思う。

○まちづくりと交通政策
 将来の交通政策を議論するうえで、まちづくりの議論が十分できていないのではないかと思われることがときどきある。特に、地方部では、人口が減少し、高齢化の進みも早いので、都市構造の変化も大きいことが予想される。このような変化に対して、住民が今後のまちづくりをどうしていきたいのかみえてこない。これはいことではあるかもしれないが、まちづくりが一部の担当者の政策シナリオとシミュレーションに留まるようではいけない。10年後、20年後のまちをどうしたいのか、まちづくりと交通計画を一体で考えていくことが、過去にもまして必要となってきている。大きな変化をうまくとらえ、まちを維持、発展させるのに、交通の役割もまた増している。交通政策は、そのまちづくりの方針づくりに深く関わっていかなければならない。交通のあり方を強く意識しながら、まちづくりの将来ビジョンを住民とともにつくりあげ、その将来ビジョンの中で、地域に合った交通システムを練り上げていくことが重要と考える。

○道路政策と財源
 現在は、道路は渋滞量等の指標で対策を行い、鉄道、バスはまた別の指標で対策を講じている。交通システムを一体としてとらえる総合交通的観点から、道路、公共輸送、徒歩・自転車を含めた人の移動のしやすさに対して、総合的な評価指標を考えていく必要がある。その総合評価指標を向上させるために、何にどれだけの財源を充てるのか、効果的・効率的に財源を配分するにはどうしたらよいか、総合的に判断するための体制づくりを行うことが必要。
 さらに、まちづくりも含めて、道路と総合交通政策をいくつかの指標のもと、統一的に展開し、効果的に進めるべき。統一的に展開するためには、全体政策の調整機関が必要。財源の問題と総合交通政策は、一体化して進めてほしい。

○中京都市圏の渋滞対策と交通状況
 名古屋周辺では、体感として渋滞が緩和された地域が増えてきていることを感じている。道路整備を中心とする、これまでの渋滞対策が機能しているのではないか。
 地方部では、渋滞の激しいところがまだまだ残っている。地方部では、渋滞対策もまだ必要。
名古屋高速は、首都高等とちがい、常に渋滞していないのが良い。高速道路は、高速で走れるよう維持してもらいたい。一般道や高速道など、異なるサービスをもつルートのオプションは、地域の強み。
 中部国際空港の開港で、名古屋駅周辺が劇的に活性化したり、東海環状自動車道の開通で、沿線地域の開発が進んでいる。交通インパクトが地域の活力に大きな変化を導いている。
 このような整備効果については、まだ長期的に見ていく必要があるものの、市民にもっとPRしていってもよいと思う。PR方法がまだ洗練されていないのか、交通整備とその都市への効果についての関係を十分理解していていただいていないようにも感じる。より多くの住民参画を促すうえでも、これまでの実績と効果について、PR方法をもっと工夫したほうがよいのでは。

○歩道整備
 歩行者・自転車の事故対策は大事。
 地方では、歩道整備が十分ではない。
 高齢者が増えていく中で、気持ちよく歩ける歩道を整備することは重要。
 歩行者のすぐ際を大型車が通過するなど、危険な箇所はまだまだ残っている。
 特に、交差点等の結節点では、少なくとも安全に滞留できるスペースを確保してもよいのではないか。歩道はのんびり歩いていけるようにするルートも計画してほしい。

○道路のみどり
 沿道緑化等、みどりを増やしてもよいのではないか。住みよい町をつくるために、緑がもっとあっても良い。ヒートアイランド対策を考えていかなければならない中、壁面緑化、都市内緑化をいろいろな視点で充実させていくことは重要。

○放置自転車問題
 放置自転車問題があとを絶たない。特に置き捨てられた自転車が問題に拍車をかけている。置き捨て自転車の処理費用も膨大で、自治体や民間施設においても財政負担となっている。新品の自転車の低価格化によりリサイクルも難しくなってきているが、モラルの向上を含め、処理費用負担制度の見直し、法制度の整備により、置き捨て自転車の抑止とリサイクルの促進を進めたほうがよい。