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氏 名所 属
出光 隆 九州工業大学 名誉教授

■ご意見の内容

○道路特定財源について
 ・道路特定財源については、従来の様に道路のみに特定せず、使途を拡大すべきと考える。しかし、同財源は目的税であり、使途を決めずに一般財源化する考え方には反対である。
・具体的な使途として、以下に述べる諸理由から、道路特定財源の6〜7割を森林再生に、3〜4割を道路その他の基盤整備に当てることを提案する。道路から生じる大量のCO2を吸収してくれる森林の再生に道路特定財源を充てるのは、極めて当然のことと考える。

○提案理由
 ・わが国は国土の約7割が森林であり、その内の4割が杉・檜等の人工林である。従来から全総において都市と農村の均衡ある発展が謳われ続けてきたにもかかわらず、農村から多くの集落が消え、林業の営みが激減し、その結果、多くの人工林は間伐や枝打ちなどの手入れがなされないまま荒れている。
 ・荒廃して下草の生えない杉・檜等の人工林からは、栄養分を含んだ河川水が流れてこないため、海中のプランクトンが減少し、その影響が漁業にも及んでいるといわれている。
 ・近年、アジアの経済発展に伴い外国産木材は中国等で需要が高まり、値が上がっている。その影響で、日本では最近国産材の需要が急激に高まり、森林伐採が進行している。しかし、伐採後の植樹については、需要が一時的なものという見方から将来への投資が危ぶまれ、実施されないことが多い。そのため植林されていない放置林では斜面崩壊などの災害が頻発している。
 ・京都議定書においては、マケラッシュ合意により日本のみCO2の森林吸収分が認められているが、近年、北海道・東北・九州等で森林伐採後の放置林の拡大が進行している。
 ・地球温暖化による異常気象で100mm/h程度の集中豪雨は珍しくない。荒廃森林や森林破壊を放置していると、災害は間もなく山地から平地や大都市に及んでくるものと考えられる。
 ・国産材が注目されている今こそ森林再生のチャンスであり、わが国の大切な社会的共通資本である森林を早急に蘇生させるべきである。そのためには森林税等だけでなく、道路特定財源も用いるべきである。
 ・九州については、鹿児島県・宮崎県・大分県など東九州に豊富な森林資源があるにもかかわらず、それらは流通に乗っていない。東九州自動車道の整備は九州産木材の流通の面からも焦眉の急を要する。
 ・急速に進む地球温暖化に備えて、わが国の国土デザインを都市再生型から森林再生型へと転換し、国民が森林と共生する社会の実現を目指すべきである。その為には、各省庁の枠を超えた新しい発想が必要である。