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氏 名所 属
岩井 珠惠 (株)クリエイティブフォーラム 取締役会長
(大阪市立大学 非常勤講師)

■ご意見の内容

・ 地方部においては道路の量的不足が目立つ。まず、ネットワーク整備を重点的に図るべき。交通量だけで整備効果を考えているようでは不十分。広域医療における搬送など、たとえ一度の救急車の通行であっても、道路が整備されたことで人命が救助される可能性が格段に高められているという効果はもっと評価されるべきものである。また、例えば徳島県では医師が多く患者が少ないが、大阪では医師が少なく患者が多いという現状の課題を、補完し合うことが可能になると考えられる。
・ 現在は、地域間の道路基盤に格差がある状況であり、地域間競争を議論できる段階ではない。
・ 都市部においては災害時の代替道路が十分とは言えない。阪神地域の道路(国道2号、43号、山手幹線など)は同じ地盤上の道路と考えられ、代替性があるとは言えず、広域的視点が必要。阪神大震災の直後は、リダンダンシーの確保が叫ばれたが、最近は忘れられがちではないか。
・ ヨーロッパでは、道路からの眺望を考慮し道路を設計、建設しており、先進的といえる。日本においても、こうした視点を取り入れた設計、建設を進めていくべき。
・ 道路は24時間利用可能であり、祭りやイベント等に用いられてはいるが、人を集め、交流のできる道路づくりという発想など、道路をさらに活用、運用するという視点は不十分ではないか。ドイツのアウトバーンでは、道路サイドの休憩施設から森の中にピクニックに行くことができるなど、自然や地域とのふれあいに貢献している。
・ 道路の寿命、ライフサイクルをどのように考えればよいのか、一般の方々には周知されているとはいえない。同じ箇所を何度も掘り返す改修などは無駄の象徴であるが、ローマのアッピア街道は今も通行されているように、道路のライフサイクルを当初に適切にイメージしておけば、効率的で質の良い改修や維持管理ができるのではないか。
・ 新規道路の建設などで、計画決定までの調査、設計の工程でPR用の過剰なCGなど無駄が多いと感じる。手続きの簡略化を検討すべきではないか。
・ 開通できないためにそのままになっている道路空間や、買収した用地など、暫定的な有効活用を考える必要がある。
・ バイパスが整備されたにもかかわらず現道が残されているのは、無駄ではないか。
・ 道路緑化でも、庭園のような緑地や過剰な修景は無駄ではないか。
・ 道路空間から道路付属物にいたるまで、美しい国土づくりに「寄与するもの」と「害するもの」に識別することから着手すべきである。その結果として、道路政策の優先度が見えてくると考える。
・ JRの「きくぞうボックス」など、一般の方々が、道路について提言や意見する窓口が身近にないと感じる。「道の相談室」があることを周知すべき。言いたい時にすぐ言えるような仕組みづくりが大切。また、事業内容の地元説明でも、自治体、自治会経由で一般の方々に情報が伝えられる場合がほとんどであるが、伝えたい情報が伝わっていないというのが実態であり、その解決方法を検討する必要がある。
・ ユビキタスやタウンガイドのQRコードなど、道路に盛り込みすぎではないか。整理していくことも検討すべき。
・ 大規模な道路ほど、無機質で心暖かくない印象が強い。パリのシャンゼリゼなど、海外では大規模道路ほど心暖かく感じられ、日本でもコンセプトの転換が必要ではないか。また、古来から日本の道路は全て歩道であって、現在は一部を車の通行に貸し出しているだけという認識が必要。道の役割の本質は、人の通行である。