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井上 定彦 島根県立大学 総合政策学部 教授

■ご意見の内容

 昨今、人口減少や公共支出の縮減からくる地方経済の衰退といった地域の危機が叫ばれる中、他方では「地域の自立」が望まれている。中央では特に厳しい地方の状況を踏まえた上で、従来の発想とは異なる生活者の視点に立ったあるいは生活の再生産が可能となるような諸条件を踏まえつつ、地域はその自立を目指しながら公共部門への依存度が高い今までの政策戦略を変えるという発想に立つべきだ。そのためには地域の今後のあり方、展望を含めて現状問題点を調査し、認識する必要があり、それに対する地域の活かし方を探っていく必要がある。つまり幅広い視野で地域づくりを考える、市町村及び県境を越えた地域連携軸を踏まえたものになるのは無論のこと、例えば中国地方と大連をどう結ぶかといった国境を越えた政策視点もそれに当たる。

 公共事業のあり方そのものについてのいわゆるソフト政策(地域社会構造の変動、景観との調和等)が重要になってくる。

 地域によって大幅な人口減少が不可避であり、そこでは地域のコミュニティ機能を維持・再生産し、内発的発展の力を高めることが求められている。

 地域において、働き、生活する者の視点に立ってこれからの国土計画を立てるべきである。限定されてゆく財源の中期的展望を踏まえると、全国的な視野で言えば、道路交通網を更新しつつ維持するだけでなく、例外的には基幹的な道路の建設も必要になる地域もありうる。他方で地域における人口分布の急速な変化を踏まえ、限界集落等の困難な地域においては生活の再生産を可能にする能動的縮合政策の視点も持つべきである。

 浜田河川国道事務所の事業概要の表紙には、「まちづくり」という言葉が含まれているが、道路政策を考える上でも「地域の活性化」という基本概念に立って進めていくことが重要であろう。国、県、市町村がより統一的な視点に立ち、連携して事業を進めていくべきである。