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氏 名所 属
飯塚 守 大分キヤノン(株) 社長

■ご意見の内容

大分キヤノンが道路整備に関して会社として困ることがあるかと言う点については、県との必要な連携や通勤時間ずらしなどを行っており、現状では特にない。しかしながら、社会としてこうあってほしいということについての意見をお話ししたい。

<道路政策の優先度について>
道路整備を語る以前の問題として、二つの基本的な認識を持つ必要がある。まず一つは、70%が森林であるというこの国土で、どのようにして人やモノを運ぶかということである。その際には、道路だけではなく、飛行機や鉄道などの移動手段も十分考える必要がある。もう一つは、人の偏在である。格差問題という言葉でも語られるが、交通だけでこの問題を語ってはいけないということである。
上記のような認識に立つと、交通インフラをどのように整備するかと言うことは、国土交通省だけではなく、経済産業省、農林水産省などとも一緒になって検討する必要がある。

キヤノンでは、宮崎の高鍋にも工場があり、連携して事業を進めているが、その行き来には4時間もかかってしまう。日豊本線もあるが、随分前からサービスレベルは向上していない。このような中、道路整備を考えるということで言えば、「どの道路が必要か」という議論ではなく、「とにかく整備すべき」ということに尽きる。

大分県と宮崎県の合わせて人口240〜250万人の圏域で、人やモノの移動をどうするかということで言えば、「人が通るから整備する」「通る人がいないから整備しない」ということではなく、「基本的なインフラは整備すべき」である。これは、渋滞以前の問題である。九州で言えば、東九州の南北の幹線と東西の幹線2〜3本は、基本的なインフラとして整備すべきと考える。

道州制のような話がある中で、各地域の人口の偏在を考えれば、道路の様な基本的なインフラは整えておくべきであり、それがあって初めて各地域が特徴を持った経済活動や暮らしが可能となる。アジアゲートウェイ構想もあると聞いているが、他国の空港が日本への物流・人流のハブになるようでは大変である。海外からの観光客や投資という観点でも、日本に入って来やすい環境を整備する必要がある。
東京にある開発部門とは専用回線をつないでおり、リアルタイムで情報をやりとりできる。また、物流という点でも、当事業所の製品は小さいため、必要材料は宅配便を使って(場合によってはバイク便なども使用可能)、大きな問題は生じない。このように考えると、ものづくりは日本全国どこでも可能である。しかしながら問題は、人材も重要な社会インフラという面である。優秀な人材は各地にたくさん育っており、そのような人材を東京や京阪神に行かせずに地元で育てることが各地の活力のためには重要であり、そのためにも人と物の流れを整流化し、各地域の活性化を図る視点での戦略が必要である。これにより特徴のある企業が進出しやすくなると考える。

<効率化すべき点について>
大分市街地の渋滞の問題については、運用でいろんな方法ができるのではないかと思う。通勤時間帯だけ一方通行にするとか、既に導入されている大野川有料道路の料金割引など、運用でできることを工夫すべきだと思う。路面電車やバスなどの公共交通も渋滞緩和に意義のある手法であり、そのようなことも考えて総合的にベストな対策を検討すべきである。

<その他の意見>
一般財源化の問題については、全くレベルの違う問題である。財源を誰からどのように集めて、どの政策にどのように使うかは、国がきちんと説明すべきことである。そのような財源問題は、例えば道路の様な基本的なインフラについては目標をきちんと立てて丁寧に説明、計画、実行していけば、自ずと方向性が決まると考えている。

このような意見聴取では、誰に意見を聞いても、まずはコミュニティの利害からの意見が最初に出てくると思う。焼却場を整備することになって困るのも全く同じで、「必要だけれども自分の家の近くには造ってほしくない」というような地域エゴがあるからである。そのようなエゴでなく、大きな議論として道路政策の優先度をまとめるべきである。