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氏 名所 属
角野 幸博 関西学院大学 総合政策学部 教授

■ご意見の内容

【今後の道路整備のすすめ方について】
・ これまで道路行政は当然のことながら道路だけを対象にしてきたが、今後は、公共交通政策における道路の位置づけを整理した上で道路政策を進めてほしい。つまり、従来は自動車交通を安全且つ円滑に流すことだけを目的として、見込まれる交通量に見合う規格の道路を建設してきたが、今後は、鉄道、バス、LRTといった公共交通ネットワークに自動車交通を加味した全体で、域内交通をどのように配分させるのかを整理した上で、どの道路を優先的に整備するのか、維持管理のプライオリティをつけるのか、見直していく必要がある。場合によっては、自家用車の流入規制やトランジットモールの充実等までを含めて検討することが必要。
・ また、道路が整備されると沿道の土地利用形態に大きな影響を与えることから、今後は、沿道の土地利用や都市の再生をどのように誘導するのかという視点で、道路政策を進めてほしい。
・ 従来、道路の整備効果は環境改善面、物流面、救急医療面等の指標で評価されてきたが、所要時間の短縮に基づくものが多いと感じている。道路が整備された結果として、土地の利用形態の変化や都市の再生など、街がどう変わったのかを評価する指標構築が必要とされている時期に来ているのではないか。
・ 今後、道路の維持管理費は増大していく時代となる。維持管理においても、今後の需要に即した対応だけでなく、周辺の土地利用をどのように誘導するのかという視点からの対応が、優先順位を検討する上で重要となる。
・ 地方部においては、鉄道の複線化に加えて高速道路の建設も、といった過剰とも取れる要求が見受けられる。地域振興を図るために本当に必要なものは何か、エリア毎にきめ細かく優先順位をつけていく必要がある。
・ 地方部において、人が通行しないにもかかわらず立派に整備されている歩道が見受けられるが、一体どんな需要を見込んでいるのか。歩道を含めた道路の規格は、きめ細かく見直すべき。反面、都市部においては、更なる歩行者重視の交通政策を重点化すべき。

【大阪駅北ヤードの再整備について】
・ 大阪駅北ヤードの再整備にあたっては、都市再生緊急特区に指定され、大阪市において検討が進められているが、もともと国道176号のほか自動車交通が錯綜する地区であるため、交通体系を抜本的に再構築する必要があると考えている。単なる地域の課題にとどまらず、国家事業として実施すべきレベルの問題と考えており、直轄の果たす役割は大きい。

【道路特別会計について】
・ 道路特別会計をもっと「まちづくり」にまわすべき。道路整備によって生じる様々な社会的費用を、道路の予算で補償するのは、説明可能な範疇ではないか。また、鉄道の高架化事業に道路の予算が使われている事例などは、積極的にPRすべき。

【道の駅について】
・ 道の駅は、評価できる施策と考えている。地元のアイデアや活動など色々なパターンのものを取り入れ、更なる多機能化、高機能化を検討してほしい。都市郊外では、一般の商店との競合など課題があることから道の駅の整備が進んでいないようだが、今後、地元の商店も潤うよう誘導する仕掛けづくりとあわせて検討すべきではないか。
・ 地方の鉄道の駅は、昔から人の行動の拠点であったことから地域の中心とも言える場所にありながら、現在は荒廃が進んでいる。再活性化の方策として、道の駅との一体整備ができないだろうか。鉄道と道路の一体的な交通計画に発展させることができればなおよい。
・ 現在、中山間地域の限界集落の再編が進められているが、どこに集約するのか、そこに暮らす人々の暮らしがどうなるか、など課題は多い。とりあえず住居の移転はしても、耕作地は従来と変わらず、といったことから自動車による移動が増えている事例も見受けられる。道路ネットワークの結節点に福祉機能を有する道の駅を配置すれば、限界集落再編の目玉になるのではないか。

【道路緑化・無電柱化について】
・ 道路緑化、無電柱化は是非進めてほしい。無電柱化は、国道レベルではなく、市町村道レベルにおいて、景観改善の効果を大きく発揮すると考えている。道路緑化においては、街路樹に地域性等、バリエーションをもたせるべきであり、また、維持管理はNPOやボランティアとの協働にとどまらず、地元住民に発注できるといった仕組みを検討してはどうか。

【生活の場としての機能について】
・ 道路が有する「生活の場」としての可能性については期待している。道路は元来、イベント、遊び、立ち話等々ができる場であって、単に自動車交通を流すためだけの場ではない。今後、道路と民地の公開空地を一体的に有効活用していく仕組みづくりも必要ではないか。また、シーニックバイウェイの取り組みを是非頑張ってほしいが、道路区域外である沿道に道路の予算が使えるよう検討してもらいたい。

【防災機能について】
・ 現在、非常用の水や防災用道具を備えた防災倉庫は、公園や学校に整備されている場合が多いが、避難する際には人は必ず道路を通ることから、沿道または道路敷地内にこうした防災倉庫機能があってよいのではないか。