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氏 名所 属
川崎 裕一 大分経済同友会 事業部会長

■ご意見の内容

社会資本整備の中でも道路整備の優先度は高い。地方には移動の選択肢が少なく、災害が一度起こると迂回路もないような命の道というようなものまである。出産の際の緊急輸送などを考えても、移動手段の確保は非常に重要である。

移動サービスの差は、あらゆる格差の原因の元になっている。医療にしても、教育にしても、移動がネックになって生じている格差は少なくない。エネルギーと交通は地域の基盤として不可欠のものである。

日本の将来像を考えた場合に、道州制の議論は避けられない。政府でも道州制の議論が進められているが、道州制を行う場合には、ブロック内を高速で移動できるような道路ネットワークが非常に重要である。道州制により地方分権をしたとしても、移動の利便性に格差があるままでは、疲弊する地域がどうしても生じてしまう。地域が自立するためには、各地で経済活動がきちんと行われる必要があるが、移動の利便性がなければどんな産業も成り立たない。

道州制を研究する中で、ポルトガルとイタリアの例が非常に参考になる。両国とも、道州制を行おうとしたが、国民投票で道州制が否決された。地域間格差が存在することがその理由のようである。日本でもこれらの国と同様ブロック間格差やブロック内の地域格差が存在しており、このような状況では道州制を導入するのは困難である。
一例で言えば、宮崎に本社がある会社は、大分県にほとんど支店を持っていない。同様に、大分に本店がある会社で鹿児島に支店を持っている会社は数社しかない。このようにブロック内の各地が分断された状況では、経済発展は不可能である。
さらに、これら幹線のネットワークにつながる生活道路も重要である。緊急病院への搬送などにも道路整備は欠かせない。

蒲江では、海岸沿いの狭い曲がりくねった道を小中学生が歩いて通学している。見通しがきかないため自動車との交通事故の危険が非常に大きい。交通安全の観点でこのような道路の改良は不可欠である。

観光面でも、道路整備は重要である。宮崎の綾町に吊橋があるが、そこまで行けるような道路整備が行われていないため、観光客は多くない。一方、九重町の大吊橋には連休中もたくさんの人が訪れて別府の宿泊客の増加にもつながっているようだ。

道州制や地方分権の議論を進めるのであれば、高速道路の重要性は今まで以上に大きい。移動の利便性は、各地方ブロックが自立するための第一条件だからである。これを考えれば、道路整備は国策として今まで以上に急いで行う必要があり、道路特定財源のような特別な財源が必要不可欠である。