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氏 名所 属
神足 博美 大分合同新聞社 報道本部長

■ご意見の内容

<道路政策に関して重要な点>
九州の道路ネットワークには大きな地域格差がある。高速道整備が偏在しており、高速バスでは福岡−鹿児島間が4時間弱であるのに対し、距離的には鹿児島に近い大分からの所要時間は6時間近く。鉄道も新幹線の有無により、同じような状態だ。ネットで「大分−鹿児島を最短時間で移動」を検索すると、「大分から特急で福岡。そこから飛行機」と出てくる。東九州道の早期整備を含め、道路ネットワークの地域格差解消が必要だ。

大分は海を志向して開発が進められてきた。関西地域や山陽地域との交流を内航海運で行い、それに根ざした工業化が進められてきた。しかし、その一方で、内陸の交通はなおざりにされてきた。今後は、九州を見渡した全体戦略が必要になる。例えば、道路ネットワークの現状から、九州内の各新聞社が会議を開く際、時間的には飛行機で東京に集まる方が便利だというのが現状だ。九州全体のネットワーク戦略が重要となる。

1980年代、台風が九州地域を襲った際、大分市犬飼町の国道10号でトンネルが崩落。約3カ月間、通行止めになり、県道を迂回する事態が生じた。10号は鹿児島から福岡へと東九州をつなぐ幹線道路。九州の物流に影響を及ぼし、ひいては九州経済にも混乱が生じるのではないかと思ったが、取材の結果、物流は西九州の道路の存在によりほぼ支障がなかったことが分かった。大分の国道10号が“九州の幹線”ではないことを意味するもので、当時の物流関係者から「物流の中心は海から陸へと移っている。国道10号の通行止めが示したように、大分は九州の物流の軸からずれている」と聞いたことがある。これも道路ネットワークの格差によるもので、いまだに、高速道が未整備の県南部地区への企業誘致と工場進出が困難なことにも結び付いている。地域の経済発展には道路の整備が不可欠だ。地域づくりは道路づくりの実情は今も変わらない。地域の発展に必要な道路整備は計画的に進めるべきである。

災害時を想定した道路整備が重要だ。新潟県中越地震が示したように、中山間地の集落は道路の損壊による交通途絶でライフラインが維持できなかった。集落は孤立して生活が立ちゆかなくなり、結局は地域の崩壊にたどり着く。昨年は、台風の襲来時、大分県の津久見市の半島地域で道路が損壊し、船で新聞を配達したことがある。地域の崩壊を防ぐためにも、災害時のライフラインを確保する「災害道路」の整備が必要だ。

やまなみハイウェイについては、県に移管されてから管理が行き届かない状況になっているように感じられる。景観面でも重要な道路であり、何らかの方策を考える必要があると思う。

<これまでの道路政策の改善点>
すべての道路をまんべんなく、同時並行的に整備するのはやめてほしい。県道や市町村道を含めた道路ネットワークの将来構想をきちんと考えた上で、その地域住民・企業の必要度に応じて整備を進めるべきである。例えば蒲江までの高速道路を早く整備しなければならないという事情の中では、並行する道路整備計画の進行を遅らせ、高速道に重点を絞るといった考え方が望まれる。これからの社会は選択と集中が重要であり、県道や市町村道を含めて整合の取れた道路整備を進めてほしい。

国レベルの財源配分については、道路種別によらず道路全体でプールした金額を県毎に配分するのがよいのではないかと思う。地域での道路ネットワークを考えたとき、国道・県道・市町村道でばらばらに予算が配分されるというのではよくないと思う。道州制の話が出てきている中、今後はそのような方向になるのではないか。道路種別によらず地域で必要な道路を全体で検討し、その必要性に応じて道路種別毎の予算配分を行い、その予算を各事業主体が執行するという方向にすべきと思う。

<道路政策の効率化について重視すべき点>
国東半島には、昭和30〜40年代のミカン園の開拓パイロット事業に合わせて、半島を縦断する道路が建設され、「オレンジロード」と呼ばれている。最終的に開パイ事業が放棄されたという事情はあるが、道路の規模に比して通行車両はごく少ない。ほかにも、林道を中心に「こんなに立派な道路が必要か」と思われるケースがある。農道、林道も含めて、一つひとつの路線について必要性を考えて道路整備を行うべきである。

<道路特定財源について>
道路特定財源は、道路の利用者が道路の建設・維持費用を負担するという受益者負担の原則に基づくものであり、その目的に沿って使うべきである。消費税も同じような性格を持つと思われ、福祉税として使途を明確にすればいい。納税者の立場からすれば、税は目的、使途を合理的に説明する必要がある。