閉じる
氏 名所 属
黒田 勝彦 神戸市立工業専門高等学校 校長

■ご意見の内容

○今後の道路整備を進める上で重要な点
・ 道路整備の必要性は渋滞解消等の時間短縮効果で説明されるため、事業は交通量の多い街中の道路整備に集中してきた。
・ しかし、時間短縮効果を高めるには、渋滞の解消による移動時間の短縮だけではなく、「時間価値」そのものを高める方法もある。
・ そもそも「時間価値」は個人所得からきており、個人所得はGDPの成長によって高められるものである。日本の場合、GDPの成長率の2割程度は外国貿易に依存するものであり、日本の貿易は物流無しでは語れない。阪神淡路大震災の折も、港の機能が停止し、コンビニの品物の9割が無くなった。さらにトヨタの工場に部品が入ってこない、という事態が起きた。まさに、ボウダーレス社会の現代は、国際物流無くして企業の存続も我々の生活も有り得ない。
・ つまり、物流とりわけ国際物流に資する道路整備の推進は、その整備とは直接関係が無い人々の生活の質(=時間価値)の向上にも資する。
・ また、京都、滋賀、奈良といった近年道路整備の進んだ地域については、企業立地が進み、県民所得が伸びていることからも、道路整備が生活の質の向上に貢献していることは自明。道路整備の開発効果は「需要量」の中に含まれているので、需要を生み出す効果をもっと説明するべき。
・ 「無駄な道路整備をやめるべき」と言うよりは、「このような視点が抜けていた」、と言った方が良い。つまり、時間価値を生み出すには道路がネットワークとして密に繋がっている必要があること、需要誘発効果があること、などをもっと説明すべき。
・ 事業を実施する際の合意形成手法においても、このような視点を持って必要性を説明するべきである。

○合意形成で重要な点、もしくは、やり方が悪かったところ
・ 道路整備に反対する人達の多くは目先の自分の生活が良くなれば良いとの発想で、地域の将来や子孫に何を残すかを考えた主張は少ない。
・ 「どうやって子供たちに『飯』を食べさせるか」、「日本は貿易で『飯』を食っており、道路が無くなったら『飯』を食べられなくなる。」という説明が十分にできていない。
・ また、環境配慮の技術の進展も著しいが、それも地域の方にわかりやすく説明できていない。
・ 現場の職員が自分の言葉で話せる能力を養うべき。自分の言葉は信頼に繋がる。コミュニケーション能力が重要。