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氏 名所 属
松浦 生朗 北陸中日新聞 編集局次長

■ご意見の内容

・道路特定財源の一般財源化は基本的に好ましくない立場。

・税金取るときは上乗せしており、道路の整備に使う目的でありながら、そのまま一般財源化することは国民に対して約束がちがう。

・財源・枠があるのに、未充当の予算があるということが、一般財源化する根拠と思われるが、道路は本当に充分なのか?石川県や富山県の実状を見ると道路はまだまだ必要と感じている。

・日本全体で少子高齢化が進んでいるが、地方から都市への社会的移動(人口流出)がいっそう地方の過疎・人口減を招いている。

・そうした中、雇用の場がある都市で定住している人が、週末に田舎の地方へもどる場合もある。こうした時に、必要とされる道路が十分ではないと感じている。

・道路の優位性は、人とモノを運べること。北陸では新幹線への期待が大きいが、新幹線では人しか運べない。

・ローマ帝国が千年栄えたのは、道路など社会インフラをしっかり整備したことが大きいと思っている。道路整備は緊急時に軍隊を通すことに重きがあったが、実際には人、モノが行き来し、繁栄の基となった。

・予算財源のばらまきはだめ。必要ない箇所に投資してしまうことになる。投資するインフラがもつ「意義」を測って集中的に投資することが必要。少子高齢化で人が減る中、少ない人が整備された道路を使って、広範囲を行き来することで均衡ある国土の発展も図れる。こうした考えが必要。逆に言うと人が少ないから道路は要らないではない。道路を造ることによって交流人口が増える所に投資するという発想が要る。

・シーリングは、財政赤字がこれだけ大きくなっているので、まず全体一律にカットするという意味では、ある程度必要だろう。

・定住するにはそこに職場があり、日常生活がある程度営めることが必要だ。そうした職場が、能登の市町には要る。

・中部地方の山岳地帯は日本の背骨のようなものであり、急峻なので、ここを貫くことは難しかった。

・だから、岐阜県、愛知県の人は北の方向は飛騨地方で道路が行き止まりと思っているが、飛騨TNが完成したことで最近その意識が薄れてきた。道路が、人の意識に大きな意識変化を及ぼす好例ではないだろうか。

・中部は山岳地帯が多く、まっすぐ抜けられない箇所が多い。高山地域では川の分水的に日本海側になる。中部(東海地方)の人は、川の水が日本海側に流れていることに驚く。そこが(日本海側地域との)境界線。それらを結ぶ道路網に意義がある。

・石川県117万人に対して金沢市は45万人と都市に人口が集中している。しかし、愛知県は725万人に対して名古屋市は200万人。ちょっと大げさかもしれないが、豊田市にトヨタ本社があり、公共交通機関をあまり作らず、代わりに車移動できる道路整備が進み、車の普及と相まって名古屋とその他の地域との行き来が短時間でできるようになり、人口が分散したと推測もできる。

・今後はいかに各自治体が社会基盤を活かして地域を発展させていくかが重要。

・社内では紙面の記事の扱いの大きさを決めるにはニュースの絶対的価値×発生地の心理距離で決めろ、と言っている。例えば道路1本が通って、時間が短縮され、交流が進めば、同じ場所で同じ程度の事件事故やニュースが発生しても、これまでは2段で掲載していたのが、3段にと記事を大きく扱うことになる。

・北陸や金沢の現状を見ていると、都市内は公共交通、地域間移動は道路、都市間移動は電車というすみ分けが必要なような気がしている。

・今も道路工事が年末、年度末に掘返し工事が集中しているのではないかと気になる。こういう場合は事業をフラット化すればよい。

・道路整備への逆風が強まっている中、整備効果を万人に見える形で示す、新しい斬新な指標が必要。

・田舎の新設道路は環境負荷がかかる。しかし、それにより時間短縮効果などがあり、都市部に住む息子夫婦がより多く実家に帰ってくるような場合がある。そういう喜ばしい効果、道路の効能を示す「指標」が提言されてしかるべきだ。

・ また、老父母の介護が必要な場合、子世帯が2、3人いても雇用を求め大都市へ定住している。その子どもたちが、週末に実家へ帰れるよう大都市と地方をつなぐ道路が整備されれば、介護保険など社会が負担する介護費用は軽減される。これを示す指標はないものか?

・ つまり、従来型の指標ではなく、新しい道路整備の必要さを示す指標が必要だ。都市部か、地方か、過疎地か過疎地でないか、で道路の必要度は変わる。多様な指標を用意することだ。

・首長ヒアリングについては、相当合併が進んだので、合併後の首長に聞くだけでその市町の意見とするのはどうか。輪島でも、今度の地震で一番被害があった旧門前町と、旧輪島市では、また違った意見があるのではないか。合併後の一市一意見では本当の意見ではないと思う。

・輪島市は高齢化率47%だが、現実の高齢化率はもっと高いだろう。珠洲市では人口のほとんどが有権者で、未成年は極端に少ない。地域がもっと少子高齢化について考えないといけない。そして、都会も30、40年経過すればそうなる。街中に高齢者が回帰しているのは、買い物などに便利だからだが、そうした時代に道路の持つ意義は何か。歩く道、車で移動する道、モノを運ぶ道…など多様な道路整備も必要だ