閉じる
氏 名所 属
間野 博 県立広島大学 教授

■ご意見の内容

Q.これまでの道路政策について特に改善すべき点
・ 都市計画道路のうち長期間未着手の事業については必要性を見直し、随時、事業を廃止することも大切なことだと思う。しかし、「費用が無くて出来ないから止める」という理由はあってはならない。建物の寿命は約40年にも及び、容易に建て替えも出来ないので、道路計画は長期的な計画であるべき。経済性など一時的要因を偏重して短絡的に結論を出すことは都市計画の意義を見失っている。計画策定や見直しに際しては徹底的に議論を尽くし、最終的な判断は大所高所から下すよう肝に銘じるべきだと考える。
・ バスや鉄道などの公共交通機関の活用を含めた総合的な「交通計画」の中で、道路政策も議論すべき。規制緩和後、赤字のバス路線が廃止され続けており、この結果として自動車の交通量が増えたからといって道路整備が必要だとは思わない。このような場合は、少子高齢化を迎え、安心安全な移動手段を確保するためにも、税金を投入してでも公共交通機関の存続を図るべきである。中山間地の公共交通にも独立採算制を強いるのは無理があり、移動機会の確保は福祉政策と同様に考えるべきである。
・ コンパクトシティ化に当たっては、道路は駐車場と一体的に整備を進める必要がある。


Q.道路政策の重点化を図る上で、優先度が高い又は低い課題への対応
・ 道路、特に生活道路はまだまだ不足している。国土が広い米国とは比較できないが、欧州各国と比べても日本の生活道路の整備水準は低く、生活道路の整備を進めるべき。
・ ウサギ小屋と揶揄された日本の住宅事情も、持ち家を中心として改善され、欧州の水準に近づきつつある。しかし、生活道路の幅員等は一向に改善されておらず、格差を感じる。
・ 市街地の狭隘な生活道路は、平常時、災害時ともに問題を抱えており、一定水準以上の幅員とネットワークを確保するよう整備を進める必要がある。平常時の不都合としては、車利用がスムースにいかないこと、ゴミ収集車や各種配達車サービスが困難なこと、災害時の不都合としては、緊急車両(救急車、消防車)の活動が困難なこと、大地震時には倒壊物によって道が塞がり、避難することも救助や消火活動等を待つことも困難な状況に陥りかねないこと等が考えられる。
・ 国が直轄管理する主要国道でさえ片側1車線しかない区間が多々あり、交通安全上も片側2車線以上に改良する必要がある。


Q.国民の皆様に幅広くご意見を頂く上で特に留意すべき点
・ 良い事業を沢山行っていても、少数の悪い事業によって、全ての事業が疑いの目を持って見られてしまう。「熊しか通らない道」と揶揄される道路も、計画上どのような意義をもって整備されたのか、キチンと説明ができる計画があれば、誤解を正すことができる。