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氏 名所 属
面出 薫 (株)ライティング プランナーズ アソシエーツ 代表取締役
武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 教授

■ご意見の内容

◎道 路 政 策 の 現 状

【改善点】
・改善点
 道路照明の視点で反省すると、これまでの道路の作り方はドライバーの視点に立つことがほとんどであったために、歩行者の視点での快適性が蔑ろにされてきたように思います。路面を高照度で均一に照明するという理屈だけで道路照明を作ることは時に歩行者の快適性に反することもあります。ドライバーには許容されても歩行者にはまぶしすぎる照明設備もあります。走る速度に必要な照明と歩く速度に快適な照明も異なります。これからの道路照明には道路の性格や種別に従ったきめの細かい計画策定が必要です。ただ明るく隈なく照明するだけでは十分ではないのです。
【今後、道路政策において、効率化を徹底する必要があるか。】
 道路照明における効率化というテーマにはたくさんの施策が考えられますが、先ずはエネルギーの有効利用が最も大切であろうと思われます。道路照明の照度基準を見直すことも省エネルギーにつながります。20%ほど低い照度基準であっても現代の交通の安全性は担保されると考えられるからです。またわが国では依然として水銀ランプを使用している市町村も少なくありませんが、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプ、更にはLEDランプなどの高効率ランプへの変更を促進すべきです。コンビニエンスストアの照明を見てエネルギーの浪費を感じますが、道路照明における不要なエネルギーもまだまだたくさん放置されています。

◎今 後 の 道 路 政 策

【無駄と感じること】
 20世紀に目指してきた夜間照明はあかりの増量や闇の排除といったエネルギーを無尽蔵に消費することによって得られるものでした。その考えは20世紀の大いなる無駄として反省されなければなりません。これからの夜間照明は、いかにエネルギーを浪費せずに安全かつ快適な夜間環境を作るか、という問題に立ち向かうべきです。そのためには、光を発する道路照明装置にばかり気を配るのではなく、道路照明の配光特性や配灯技術の活用、メタルハライドランプやLEDなどの新光源の採用、更には適正な光源の高さ、色温度、演色性などという光の光学性能にまで配慮しなければなりません。現代人がどのように光を感じ取っているか、という研究領域も新しい道路照明を考える上で大変参考になるものと思われます。
【優先度の低い道路施策】
 道路照明における一層の重点化という意味では、道路照明計画におけるガイドラインを刷新すべきだと思われます。夜間の照明環境としてあるべき姿を、各道路種別に従って現代的課題を議論し再整備していく必要があります。どうしても道路照明を刷新しようとすると道路灯のデザインコンペのようなものになってしまいがちですが、大切なことはそれぞれ固有の環境に適した光の品質を策定することなのです。そのような明確なガイドラインの基に個性的かつ快適で、更に環境に優しい道路照明が希求されます。

◎国民から幅広く意見を聞く時の留意点

 専門技術者としてでなく一国民としてという意味では、やはり散歩したくなるような気持ちの良い都市道路が多くなるといいなと思います。昼夜共に機能的で安全な道路というだけでなく、緑や建築の姿と一緒になって景観としても気持ちの良い歩行者空間を作っていただきたいと思っています。安全で機能的というだけでは諸外国からも評価されません。

◎道路政策全般に対するご意見、ご要望

 道路というのは国民の生活基盤としての大切なインフラストラクチャーでありますが、高度に発展した世界都市では文化文明の証としても評価されています。日本の各地に文化的にもすばらしい日本の道路が出現することを期待しています。