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氏 名所 属
三輪 康一 神戸大学大学院 工学研究科建築学専攻 准教授

■ご意見の内容

○はじめに(自由意見)
 ・人口減少社会を迎えて,これまでつくり続けてきたまちをどうするかが,長期的には大きな課題。そのなかで,道路は質的にも量的にも極めて貴重な公共的なストック。今後これらのストックをどう活用、転用していくかが重要。これからは,20〜50年先を見て、減らしていくことも念頭に入れてつくっていくことも必要。例えば、将来の交通量の変化によって余裕のできた車線をどう使うか。緑地にするのか、広い歩行者空間にするのかなど。建築の場合、コンバージョンといって、オフィスを住宅にするなど用途を変えたりしているが,そのとき同時に既存のもののバリアフリー化や耐震性の向上を図っている。同じように考えた場合、道路はどういう方向に持って行くべきか先を考えてやっていってほしい。

 ・都市の道路の機能のなかでは,都市と都市あるいは都市のなかの部分を「つなぐ」機能に特色がある。この「つなぐ」機能を活かした多機能型の方向も考えられる。たとえば,ビオトープは個別につくられるだけでは十分に機能を発揮することができないが,それをネットワークして,生物生息空間としてはじめて効果的であるという。では,道路をビオトープとして,ネットワークすることができないか。これは夢のような話かもしれないが、そう考えると,福祉やエネルギーの有効化,環境問題など,道路のネットワークという潜在的な価値を活用して,いろいろと可能性(環境資源としての使い方)があると思う。

 ・道路を空間としての価値で考えた場合、銀座や御堂筋、名古屋の100m道路など,かつてつくられた道路には人々をひきつける魅力がある。どうして今はそれがつくれないのか。もっと道路としての魅力を検討すべき。魅力的な道路をつくれば説得力があると思う。立地条件、沿道の土地利用などに応じた道路本体の魅力で、後世に残るものをつくれないかと思う。
そういう意味で、シンボルロード事業はいい政策だったと思うが,その成果や反省などの評価をきっちりして,次代につなげていってほしい。
 また、道路網計画でも,現在は機能主義的に格子状のパターンが主流であるが,かつてみられた駅や公共施設などをランドマークやアイストップにするような街路景観をつくる道路は極めてシンボリックであり,個人的には是非つくってほしい。

 ・道路局の中だけでは、道路としての利用だけの話になりがち。交通機能や供給処理機能だけで計画すると,社会の大きな変化に対応できない。需要が変わればすぐに陳腐化してしまう。多機能空間として考えることで,持続的な意味をもつことができる。道路を空間として考えるには,都市局、住宅局とも連携した議論が必要。また,官と民の連携も大切で,たとえば沿道の土地利用についても,使い方や形態を誘導する助成制度などを道路側の財源で行う仕組みなども考えては。

○これまでの道路政策に関して
改善すべき点:
 @1区間だけコミュニティ道路になっているところを見かける。
 A道路は道路構造令などの制約が多いから個別に魅力があるものをつくりにくいのかもしれない。

その理由:
 @コミュニティ道路はネットワーク、つまり面で整備すべき。
 A地域の特色を踏まえたデザインの道路ができればと思う。公園などと一体でデザインできるようになればいいのではと思う。

○道路政策全般に対するご意見、ご要望
 ・夙川公園は戦前の都市計画において、沿道の人たちがお金を出し合って、つまり受益者負担でつくったものであり、今でも親しまれている。自立の精神がそこに生きていると思われる。道路への愛着や親しみを育てるために,市民の企画・計画への参加,管理への参加など,エリアマネジメントの一環として道路を扱う仕組みをつくっていく必要がある。自分たちでお金を出してつくるのもいいかも。

 ・自動車が通れるだけの道路ではなく、魅力的な道路が必要。