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氏 名所 属
中村 慎吾 庄原市立比和自然科学博物館長 農学博士

■ご意見の内容

・一般論として「無駄な公共投資は止めるべき」は分かる。

・無駄な投資と言うが「無駄」とは?「無駄」の定義が曖昧。そのような曖昧な解釈の中で、やみくもに「止めるべき」との論調。問題は、何が「無駄」か吟味し明確にすることが重要。

・過去、全国一律に「都市的な居住空間を」とのスローガンの下、比和町でも運動公園をつくる方針となった。町に運動公園がなかったため、町長をはじめ町を上げて運動公園造成を進めたが、これは無駄ではなかったか。(都市的な居住空間を形成する上で、どの町にも運動公園を造るのではなく)その地域の特性を活かし町村間で役割分担し整備していくべきと思料。

・公共投資の無駄について道路整備に当てはめて見ると、例えば、都市部の渋滞対策のための道路整備。これは無駄ではない。

・庄原市も限界集落が多く、都市とのつながりのため道路整備は人間的な生活を送る上で必要不可欠だが、経済効率だけでいえば「無駄」に映る。しかし、それは「無駄」なことだろうか。

・都市部と田舎のアクセス道路整備は、田舎の年老いた両親に何かあった際には、都市部に住む子供が直ぐ帰れるなど福祉的効果もある。決して「無駄」ではない。

・S38豪雪時に高野町に勤務していたが、あまりの豪雪で除雪が完全にできず、交通が遮断され町が孤立した。その間、救援物資が2度程補給された。妊婦が産気づいたため、雪を踏み固め緊急的にヘリポートを作成し、三次へ搬送した。除雪はルート確保の面からも重要。道路はつくるだけでなく管理にも目を向けるべき。

・道路機能を確保する意味においても公共投資は「無駄」ではない。特に限界集落の多い中山間地域は極めて重要。

・公団民営化論議の際も経済効率を重視した論調。確かに間違いではないが経済至上主義が進みすぎると、地方は切り捨てられ、格差が拡大する。

・公共事業は、公共の利益のため公共資産を充実させることにより住民が豊かに安心・安全に暮らせることが、公共事業の本質。

・地方(中山間地域)の道路は生活道、生命道として必要不可欠。経済性や効率性だけではない。

・R183鍵掛峠道路にしても現道は冬季の難所、線形悪く交通安全上も問題。早期に完成してもらいたい。

・作木大和道路も交通量が少なく、東京では「無駄」に見えるだろうが、雨期には通行止めとなり孤立する集落が存在していたが、作木大和道路のおかげで解消された。

・可部バイパスが先般部分供用したが、心臓発作で搬入された患者が医師からあと10分遅れたら死んでいた。可部BPが供用していたため間に合い命をとりとめた。都市部だろうが田舎だろうが住む場所で同じ命に差がつくのはおかしい。

・庄原市も合併で広島県一広くなった。このような中、病院へのアクセスや行政サービス面など、都市部住民と格差の無いよう公平性を確保してほしい。

・地方の移動手段は、車しかないため、1世帯あたり3〜4台自家用車を持っている。都市は公共交通があるため、都市と地方のガソリン税を比較すると地域によっては相当の格差がある。

・このガソリン税を一般財源化や福祉へ回すという議論は地方切り捨て以外何ものでもない。ガソリン税が道路整備に使えてこそユーザーへのサービスである。

・前回の「真に必要な道路」のアンケートで、ガソリン販売店や建設業者、物流業者、商店経営者、観光好きな一般住民等に広く集約した。その際に「自分の払っているガソリン税が福祉等別の目的に使われてたまるか!」といった意見が殆どであった。

・地方の移動手段は鉄道から道路へ変わった。昨年の集中豪雨で三江線、芸備線ともに被災がありストップ。長い間、バスでの代替えが続いた。鉄道は急峻な地形を通っていたこともあり、復旧に費用と時間がかかった。道路の役割は大きい。