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氏 名所 属
中里 透 上智大学 経済学部 准教授

■ご意見の内容

○ 現在の道路行政では、事業執行にあたり事業分析・評価をしっかりやって道路局のホームページ(道路IRサイト)等で一般に公開しており、情報公開は相当進んでいるにもかかわらず、十分に知られていない。もっと積極的にPRをすべき。

○ 道路整備の優先度は単純にB/Cのみでは決まらないと思う。計画交通量やB/C等の定量的分析と併せて、緊急交通の問題などの定性的な分析も含めて決めるべき。限られた予算の枠の中でどの事業を優先させるかは実際に現場を知っている担当部局(道路局)に委ねた方が良い。

○ 道路公団の民営化に際して新直轄の採択を決めるために設けられた基準は、順序付けの基準などが明示されており、参考になると思う。

○ 道路整備については「無駄かどうか」というより「必要性・緊急性がどの程度あるか」という議論をすべきだと思う。

○ 財政が厳しい中で道路歳出のみが突出することには批判が予想される。財政全体のバランスをみて適切な水準の道路投資が必要。計画を後ろ倒しするなどの工夫によって財政上の制約に対応すべき。

○ 計画は一度決まってしまうと変更しにくい。ある程度将来が見通せる期間、具体的には5年程度であることが必要(10年では長過ぎる)。また、計画には事業量を明示して、コミットメントの明確化を図るべき。

○ 道路特定財源については、暫定税率を設定した際に、道路整備の必要性に加えて環境への負荷やエネルギー消費の抑制などの観点からの議論がなされた経緯もあり、自動車ユーザー以外の意見を聞くことも必要。一般財源化には必ずしもこだわらなくてよいが、より柔軟な使途を考えることもできるのではないか。

○ ユーザーの視点からすると、例えば特定財源を福祉分野に充当するのは「納税者の理解」を得られないということになるかと思う。福祉分野にまで使途を拡大するためには、ガソリン税の一部を環境税のような別の枠組みに振り替えないと難しいだろう。

○ 更新と新規投資のバランスをもう少し考えないといけない。将来の維持・更新を考えると現時点で新規投資をある程度抑えて、将来の更新に備えるという発想もあり得る。たとえば、自治体における財政調整基金のようなスキームを考えることも一案ではないか。

○ 旧本四公団の債務処理に道路特定財源が充てられていた経緯を踏まえると、道路特定財源の一定割合を国の債務返済、たとえば旧国鉄債務の返済に充当することは、財政的にも、総合交通体系の整備という視点からも理解を得られるのではないか。

○ 財政全体のバランスをみてうまくやりくりすることが必要。これは道路に限らず一般的な議論であるが、これまでの財源の枠をそのまま維持しようという姿勢が散見されるために、「公共事業は無駄」という批判が過剰になされている面があるのではないか。

○ 多少、スペックを落としてコストダウンをする工夫をすれば、限られた財源の中でより充実した道路整備ができるのではないか。