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氏 名所 属
及川 純 北海道文化放送(株) 報道政策局 報道部長

■ご意見の内容

 道路中期計画のポイントとして、「効率化」という点が取り上げられているが、この「効率化」がどういう意味を持っているのかが重要である。例えば効率化が、利用者数が多いところだけを取り組むという意味だとすると、社会インフラという視点からは違和感を感じる。

 北海道では多くの鉄道路線が廃止され、幹線しか残っていない状況であり、地方での移動手段は道路しか残っていない。その中で利用者数という視点で効率性を徹底することが本当に良いことだろうか。極端に言えば10名しか利用しないインフラは作らない、という進め方は行政として正しいのだろうか。経済性に合致する事業であれば民間事業者がやればよい。経済合理性に合わない事業だからこそ、最低限のインフラとして行政が実施するべき事業ではないか。

 一方で、何故あんなに高速道路建設に費用がかかるのか、大きな疑問がある。全国一律の道路規格というのが無駄を生むのではないか。規制速度も同様である。北海道ならば自動車専用道路でなくても80km/hで走行できる道路が出来るのではないか。効率性とは、このような道路の作り方ではないか。

 首都圏は経済活動が集中しているが、これは現在の問題ではなく歴史的な投資により大企業が集まった結果である。雪が降る地域に好きで住んでいるのだから除雪は必要ないという議論も聞くが、それでは積雪地域では生きていけない。どんな国でも不均衡は存在し、それを是正するのが政治だが、この構造が利権と繋がったと思う。しかし、本来進めるべき目標である、不均衡の是正、と、利権を生んだ進め方の問題を混同してしまえば、利権と関連したもの全てを否定し、地方はその土地に合った暮らしをすればいいという議論になってしまう。

 テレビ放送は道路と同じように人々にとって空気のような当たり前の存在である。これが地上波デジタルへの移行で見れなくなったらどうなるか。報道機関は、災害発生の際など広く一般に正確な情報を伝えるという役割を担っている。このような観点から、放送のための放送局・中継局は、単に民間企業の所有する施設ではなく、社会インフラの一部と言える。北海道は人口密度は低いが面積が広く、利用者は少なくても、中継局などの多くの投資を必要とする。しかし、デジタル化で地方に放送を届けられなくなっては意味がない。

「重点化」「効率化」の持つ意味をもう一度よく考えていただきたい。

 光ファイバーは現代では基本的なインフラであり、光ファイバーが無ければ工業団地を作っても企業誘致は見込めない。人口密度の低い北海道では民間企業で光ケーブル網を整備するのは難しく、多くの国道に敷設されている光ケーブル網は北海道の宝である。国道は、人、物、情報の流れの中心として、国道に出れば情報も得られる地域を作れれば、北海道はIT先進地になれる。道路の光ケーブル網の容量の余裕を、民間に貸しだすなど、情報面でも地域に貢献して欲しい。