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氏 名所 属
奥野 信宏 中京大学 総合政策学部 学部長

■ご意見の内容

・高速道路は、昭和38年の名神高速道路の開通が最初だが、欧米に比べ遅く始まり、主に民間資金で整備してきた。道路特定財源は日本の道路整備に重要な貢献をしてきたし、今後も、新たな道路投資に加えて、維持整備に資金が必要である。一般財源化は慎重に進めるべきである。

・我が国では公共事業予算のマイナスシーリングの結果、予算状況は極めて厳しい。この状況が続けば、「荒廃するアメリカ」のようなインフラの老朽化問題が我が国でも不可避となる。

・アメリカでは、80年代の生産性の低下は社会資本の荒廃に起因するといった報告もある。この荒廃の原因についてアメリカで調査したことがあるが、インフラの荒廃は徐々に進展し、すぐには目に見える課題とならないため、政治的にも喫緊の課題となりにくい側面がある。いずれにしても、経済活力の低下にじわじわ効いてくるのは事実である。

・社会資本整備で考えるべき視点は、@既存インフラの有効な利活用、APFIなどの効率的な整備手法の活用、B作ったものを長く使う、の3点。

・ものづくり中部の視点で言えば、生産の広域化にともない、半製品が港や空港を行ったり来たりしている。この点で、これら施設を連絡する道路整備は極めて重要である。

・コンテナターミナルは規模の経済が働く。我が国では陸上物流コストが高いこともあってか複数港湾が乱立しているのが現状。しかしながら、経済的には、複数港湾に分散投資するよりは、特定の港湾に集中投資する方が得策。また、その有効活用という点で、港湾アクセスのための高規格道路整備は重要。

・地方部では、病院や市民会館といった施設を複数の自治体などによって有効活用すべきであり、そのためのアクセス道路の整備が重要。

・中山間地は人が入らないと荒廃してしまう。中部には限界集落が多いが、ここに住む者の生活支援は行政の役割。安心して生活できるよう、一定水準の道路と情報基盤の整備は必要。

・紀伊半島の道路事情は悪い。大雨時に規制によって足止めとなる可能性があるため、観光資源は豊富であるものの、旅行会社も団体旅行を組めないような状況である。