閉じる
氏 名所 属
坂本 正 熊本学園大学 学長

■ご意見の内容


○都市部と地方部、高速道路、幹線道路と生活道路では、道路の意味付けは違ってくる。現在は、個々の道路の意味付けが不明確なため、国民に理解されていない部分があると思う。例えば、観光面で必要な道路であっても生活面では無駄と思える道路がある。この意味付けを明確にすることにより道路整備の必要な箇所がおのずと決ってくる。これが選択と集中につながる。

○熊本県の道路整備は、まだまだ進捗が悪い。
 多くの事業箇所に満遍なく予算を貼り付けるのでなく、優先度のより高い箇所に、より重点的に予算を貼り付けるべき。現在の道路整備は少しずつしか進捗しないため効果が見えにくい。結果として、部分的に時間短縮は図れても、路線全体ではボトルネックが残っていたりして、使う側としての満足度が向上しない。
 道路整備はそれなりに進められているが、10年で市民生活もレベルアップしているので、10年たった時それが実感としてわいてこないし、変化していないように見える。市民に実感してもらえるようにするためには、地域全体に対する道路整備の考え方、方針、必要性が明確な全体計画と整備自体のスピード感が不可欠。

○個別の議論ではなく、全体を見据えたところで必要性を訴え、全体計画の中で優先順位をつけることが大切である。このため、一部に犠牲もでてくるが、何のために道路を整備するのかを明確にして国民のコンセンサスをとることが大切である。

○都市部では、道路が面的にネットワーク化されているため、国道、県道、市道の相互連関の度合いが高いが、それぞれ主体が異なるため、財源面や優先度の考え方の相違等によって都市部全体として整合性のある道路整備になっていないように思う。
 熊本で言えば、熊本都市圏の道路整備をどのような考え方で、どのような優先順位で、いつまでに行なうのか、といった実効性のある計画づくりが必要。都市計画等に任せるのではなく、地域の将来像、地域の実情と整合の取れた5年、10年、15年後といった短中期的な目標年次ごとの道路計画を福祉部門その他関係者や市民の意見も良く踏まえて、国・県・市が共同で作成すべき。

○また、特に市道、県道といった道路は、地域全体の取り組みとの整合性の確保が重要である。
 例えば、医療機関へのアクセス道路が狭い箇所があるが、乗り合いバスのような公共交通で対応するのか、マイカーで対応せざるを得ないのかといったことを検討し、マイカーにせざるを得ない場合は高齢者でも安心して通行できるよう部分的に拡幅するなど、国民生活からの目線に立ったきめ細かい対応が必要。そのためには、重要な行政政策との連携が必要であるが、現在は企画部門が弱いため、道路は道路、福祉は福祉となっており、地域全体の取り組みとの整合性の点で市民の期待に応える道路整備となっていないように思う。

○道路はハード対策も大切だがキリのないところもあり、ハードと合わせてソフト対策での対応も検討する必要があるのではないか。例えば、中心部は大型を通さずバイパスなどに迂回してもらう、中心部は鉄軌道、バスなどの公共交通中心にする、空港へのアクセスは中心部を避ける等。

○財源の少ない時には知恵を出すこと、今あるものを活用できるところは活用することも大切である。
 例えば、生活道路の維持管理やちょっとした補修などは地域住民の力で行なっていくことも考えられるのではないか。現在は、こういったことを行なおうにもどこに相談にいっていいのかも判らないし、判ったとしても道路管理者、警察その他の了解を得る手続きだけでも大変である。行政の窓口を一本化する、表彰制度を充実する等、ボランティア支援を制度化し、行政の側から地域に積極的にアプローチすれば、地域の方々で一肌脱ごうという人は結構いるのではないか。また、結果的にこういう取り組みが、道路への理解、公共への理解の増進や防犯の面でも役立つと思う。
 ボランティアサポートを歩道の管理といったところから生活道路の維持修繕の分野まで拡張すべき時代だと思う。

○南九州(鹿児島、宮崎)と連携した観光振興のための道路、八代港と熊本空港を結節強化する道路などは必要だろう。