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氏 名所 属
斎藤 峻彦 近畿大学 経営学部商学科 教授

■ご意見の内容

■今後の道路政策における効率化・重点化について
・重点化、効率化の言葉の意味について議論する必要がある。
・アンケート等の絶対数で判断すれば、重点化・効率化の中身は人口や需要が集積している都市部・交通幹線沿いの意見に偏り、地方部の少数意見は犠牲になる恐れがある。
・道路は基本的に公共財であり、社会が支えるべきもの。むしろ、重点化、効率化の議論から外れた道路をどうするかを考えることが重要。地方部では国道でも整備の遅れた道路が多く残されており、過去の政治力の影響か? 地域格差が依然として大きい。
・奈良県の例では、県南部の幹線道路が災害に見舞われ、人の命が奪われ80日間も通行止めとなったにもかかわらず、全国的には認知が低い状況。
・また、過疎が進んでいる地域は、道路が十分でないために経済活動の移転や流出が起こっている。公共財の使命として、これらを防ぐにはどの程度の道路が必要か専門的な議論が必要。
 
■道路政策に関する意見
○特定財源の一般財源化による資源浪費のリスクは大きい
  ・道路整備の議論だけにとどまらず、自動車関係税の納税者の立場からコンセンサスが得られやすい交通政策に枠を広げ、幅広い検討が必要。
○地球温暖化等の地球環境問題の切迫化
  ・車社会の将来が不安。運輸部門の温室効果ガス抑制目標の達成は困難が予想され、新たな展望に基づく交通政策への取り組みが不可避。
 ○地域公共交通への公的負担について先進国のやり方を参考にする必要
  ・行政の枠を超えた強力な組織の設置が必要。アメリカのMPO(都市圏計画機構)、イギリスのPTA(旅客運輸委員会)、フランスやスペインの地域運輸組合、ドイツの運輸連合など。

■道路特定財源の再配分政策の優先順位について
@高速道路整備の財源
  ・プール採算性の限界を超えた道路整備に対する財源措置
  地方部ではまだつながっていない高速道路も多く、ネットワークとして必要な道路を整備する必要がある。
  ・高速道路の後進県に、地域経済発展上のペナルティを負わせてはならない。
A高速道路料金政策支援の財源
  ・高速道路料金水準及び高速道路料金制度の魅力改善に対する財源措置
  ・ETC施設拡大の財源措置
B地域公共交通の整備財源
  1)自動車利用者が間接的に便益を受ける対象(地域の公共システムの充実)
   ・LRTのインフラを含む道路、街路整備(トランジットモール、歩行者空間の整備など)
  2)自動車利用者の将来需要に配慮した公共交通の存続のための財源
   ・モータリゼーションと関係の深い過疎バス路線の存続など