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氏 名所 属
佐藤 馨一 北海道大学大学院 工学研究科 教授

■ご意見の内容

○これまでの道路政策に関して、特にどのような改善点があるとお考えですか。
(1) 道路の整備効果を計測するに当たり、数値化しやすい時間短縮効果を使いすぎている面がある。この指標に頼りすぎると、高齢化をむかえた20年後は時間の余る人が多くなり、道路整備の効果は激減する。
(2) 暫定2車線の高規格道路建設は直ちに改善し、本格2車線の高規格道路を建設するべきである。このとき、トンネルや橋梁区間を4車線として整備することが、安心できるわが国の社会資本整備を考えるとき重要である。

○今後、道路政策においては、無駄を排するなど効率化を徹底する必要があると思いますが、特にどのような点を重視すべきとお考えですか。
(1) 無駄の定義は評価主体によって異なるものであり、ある価値観からみた無駄は別な価値観からすると有益になる。効率化を追求したトヨタのカンバン方式が中越沖地震によって破綻したことはその良い事例である。トヨタはそのリスクを織り込みながら効率化を図っているとするなら、部外者はその是非を批判することはできない。しかし道路政策は企業活動とは異なり公共事業であり、効率化を掲げたならば、それに伴うリスクがどれだけ国民に及ぶのか、誰がそのリスクを負担するのかを明示する必要がある。リスク提示のない効率化政策は国を滅亡させる。

○道路に関して無駄と感じることはありますか。具体的にお教えください。
(1) 最も無駄だと感じることは、将来の4車線化を見すえて高規格道路を暫定2車線で建設し、供用していることである。わが国の人口が減少する21世紀において、暫定2車線が4車線を必要とするほど交通量は伸びるとは考えられず、早急に本格2車線の高規格道路に作り替えなければ中途半端な、無駄の極みの道路として後世に酷評されるであろう。

○今後、取り組む道路政策の一層の重点化を図ることが必要であると思いますが、優先度が高い又は低い課題への対応は何であるとお考えですか。
(1) 優先度の高い道路政策
 高速道路の料金見直し。東京湾横断道路の料金は建設コストの償還ではなく、利用してもらえる料金設定をした。このために多額の道路財源が使用されたが、この論理を北海道に当てはめると、夕張〜清水間の高速道路料金を割り引いてもおかしくない。このような道路は日本全国にあり、せっかく建設した高規格道路の利用促進を図る政策が必要である。
(2) 優先度の低い道路政策
 思いつくことはありません。