閉じる
氏 名所 属
下村 泰史 京都造形芸術大学 芸術学部 環境デザイン学科 准教授

■ご意見の内容

・高速道路から国道、市町村道、私道までを含めると、国土軸を形成するものからコミュニティレベルまで道路はさまざまあり、こうした中期計画のアンケートにおいても、道路一般について問うのは、本当は難しいのではないか。

・地域特性や生物多様性の保全への配慮、小さく植え大きく育てること、地域の景観形成へ住民の合意形成を図ることを目的としたグリーンマネジメントが実効を生ずるよう努めてほしい。剪定を含めた管理の仕方、育て方が重要であり、設計段階の考え方を管理段階にどのように引き継いでいくかが課題である。

・木が成長すると、その根が舗装面を荒らす場合があるが、景観と機能の両立の観点から、その許容レベルについて今後検討してはどうか。根によって割られても美しい舗装というのもあるかもしれない。

・無電柱化は是非進めてほしい。特に、国道は地域を代表する空間として、無電柱化の効果は大きい。

・道路は交通のためだけの空間ではない。一般の方々が経験する「都市の体験」は、たとえその対象が街並みであっても「道路からの視点」のものがほとんどである。道路空間が美しくなければ、都市景観は良くならない。道路のオープンスペースとしての機能は重要であり、地域デザインの本質は道路網にあると言える。例えば道路を構成する舗装だけが良くてもそれだけでは「歩きたくなる」道空間にはならない。沿道や外部土地利用を含めて道路空間を考える必要がある。

・地域本来のランドスケープの魅力をうまく引き出すには、道路のディテールの設計が大事。地域風土になじみ、引き立てる、本質的な良いデザインを心がけること大切。一般に、歩道の欄干などに装飾した結果、周囲の雰囲気から浮き上がってしまった失敗例が挙げられる反面、コストを下げればデザイン的品質が落ちるとも一概に言えない。デザインの本質は、装飾ではなく、多様な条件下での課題に調和のとれた解決を与えることである。

・なお、地域風土になじみ、引き立てる自己主張しないデザインとは、デザインしないことではない。デザインしないと、画一的な標準設計に偏る傾向があるため、注意が必要。

・小規模で安価な工事ほどデザインが軽視される傾向があるため、こうした小規模工事にもデザイナーが関わるシステムづくりが必要。また、発注者がデザインマインドを持つことも重要。

・アカウンタビリティの充実は必要だが、客観的な説明に努める結果、難解な説明になる傾向が見受けられる。説明者の説明可能性と、一般の方々の理解可能性には、現在大きな乖離があるため、後者に軸足を移していくことが必要。また、客観的な説明に努める結果、画一的な標準設計に偏る傾向もあるため、注意が必要。

・車道を安心して自転車が走れるようにしていくことが必要。自転車は、「坂」を敏感に感じられるなど、歩きとは異なる楽しさがあるツールである。京都では高級マウンテンバイクが貸し自転車に使用されるなどして人気を集めており、観光地の魅力向上にもつながっているのではないか。

・オープンスペースやコミュニティの場、遊びの場としての道路の機能は、生活レベルにおいて不可欠。また、水路と道路と住空間の一体性も不可欠と考えられるため、今後、道路と河川や水路の一体的な環境整備が進められることを期待する。

・道路の防災性向上は重要である。しかし、災害復旧対応にはとにかくコンクリートで固めてしまうなどといった例が少なからず見受けられるが、災害復旧においても、環境・デザイン的配慮は必要だと考えられる。