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氏 名所 属
柴田 昌三 京都大学 フィールド科学教育研究センター 里山資源保全学分野 教授(大学院地球環境学堂 併任教授)

■ご意見の内容

・海外へ頻繁に行くため一層感じることだが、全般的に日本の道路は走りやすく管理が行き届いていると思う。
・道路改修など路上工事においては、工事期間中、工事箇所に工事案内看板が掲示されているが、現状では道路ユーザーに対する事前の告知が不十分であり、工夫が必要である。また、工事案内看板に記載されている情報は、工事期間や目的、施工者等を記載しているのみで、当該工事の結果どのように変わるのかが伝わってこない。特に修景にかかる工事の場合は、スケッチやポンチ絵を掲示し、改善効果を周知すれば、路上工事への理解を得るための一つの方策になるのではないか。
・道路計画の立案にあたっては、都市計画や農村計画全体の中での位置づけを整理する必要がある。
・最近、歩道などでインターロッキングブロックが用いられているものを見かけるが、景観的に良いと感じている。ウッドブロックなどを用いれば、景観の良さに加えて、生物資源を有効活用した道路整備と謳えるのではないか。周囲を自然に囲まれた林道などでは、間伐材によるガードレールの使用を積極的に進めていくべきではないか。
・無電柱化は是非進めてほしいが、様々な課題があることから、なかなか進んでいないというのが現状ではないだろうか。中国では、電線の高さを下げて街路樹の枝間を通すようにしている。景観改善という観点では、無電柱化にこだわらず軒裏配線や、中国のいわゆる低電柱化など、工夫する余地は多い。また、狭い路地では電柱が景観に溶け込んでいるような地区もあり、その場所に即した対応を検討すべき。
・幹線道路ネットワークについては、地域により状況は異なるため、必要性や整備の優先順位を検討するための手法はマニュアル化できるものではない。
・京都府内のある地区には、集落内を通行する自動車交通を排除するためにバイパスとして整備されたトンネルがあるが、有料であるためトンネルを必要としている地域住民に利用されず、所期の目的を達していないという事例がある。有料道路事業を採用していることの失敗例と言える。
・街路樹のある景観が、一般に写真や絵に映えないのは、緑の量感の問題なのではないかと感じている。道路緑化では、地域性種苗の確保など生態系保全の必要性が注目を集めているが、いわゆる「質」の確保だけでなく、「緑量」の確保とその維持管理について、今後考えていく必要がある。
・緑量を確保しようとすれば、落ち葉処理の問題が生じるが、帯状整備とするなど、落ち葉をストックできる掃き込み空間を確保する工夫をしてはどうか。街路樹が創出した有機物(落ち葉)を、搬出することなく有効活用することにもつながる。道路作業で生じる刈草や伐採木から堆肥や炭を作り、マルチング材等として道路に使っていくことも、緑化資源の有効活用となるのではないか。
・生態系保全のために、外来種を使わないことはもちろんだが、当該地域に生息する種類を緑化に使うだけでは不十分。当該地区で育った樹木から得られた苗木を緑化に使うことが必要。
・道路の緑化工事は供用間近に行われることが多いが、工事の実施年度に苗木を購入しているのが現状と思われる。土工工事の着手から供用まで通常10年程度かかることから、緑化に向けて、当該地区で育った樹木から得られた苗木を準備する期間は十分あると言える。数年後に苗木を購入するとの前提で造園工事発注ができるようになれば、地域性確保に効果を発揮するのではないか。
・道路行政を進めるにあたって、地域住民の自由意見に応えていくのは難しいのではないか。いくつかメニューを用意し、選択してもらうというのが現実的な方法ではないか。