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氏 名所 属
柴田 隆 元 山形新聞社 論説委員長
山形新聞社 庄内総支社長

■ご意見の内容

◇特に優先度の高い道路政策
 国の幹線道路整備の長い歴史を見ると、国土の均衡ある発展という政治の基本的な目標が共通している。とりわけ、早い段階で構想が示されたルートは、日本の産業、主要貿易相手国の展望などを想定した上で、欠かせないものとして位置付けられてきた。既に、中国などアジアの貿易額がアメリカを上回り、日本海を中心に据えて見た場合、その港湾機能との連携をしっかりするには、縦貫する日本海沿岸東北自動車道の早期連結と、「横軸」の整備は、日本の物流ルートの効率化とともに、地球温暖化物質の排出抑制の観点からも早急に行うべきだ。

 従来、幹線道路の整備にはかなりの時間がかかってきた。日本海沿岸東北自動車道について見れば、40年前に当時の安孫子藤吉山形県知事が沿線各県に呼び掛け、縦貫道実現に向けた研究会を発足させたことに始まっている。政府も、その必要性を事あるごとに認めてきたにもかかわらず、いまだ全線完成に至っていない。従って、今後の道路政策を展開するに当たっては、『まず事業の効率化を図りながらいかにスピードアップするかが最大の課題であり、現在工事中、あるいは計画がある高速道路、あるいは高規格道路、地域高規格道路のネットワークを集中的に結び付ける』ことを最優先にしていきたい。

 具体的には、日本海沿岸東北自動車道については、かなり進ちょくしているが、新潟・山形・秋田の県境部分が欠落しており、せっかくの開通部分の効果が生かし切れない状態にある。日本海沿岸部の重要港湾(空港も含む)と道路の連結の重要性は今後ますます大切になることは確実であり、早急にネットワーク化しなければ、国家的な損失であると言える。できるだけ集中的に整備を進め、一本の大動脈として機能させ、物流のみならず観光資源の有効活用、交流人口の拡大、地域産業の振興など多面的な効果に結び付けていくためにも、時間管理を徹底し、目標を明確に掲げ、整備のスピードアップを図るべきだ。

 効率化との関連もあるが、ネットワークを一刻も早く実現するためなら、必ずしも全線4車線とは言わない。暫定2車線でもいい。工法も簡略なものでいい。

 大都市圏を中心に、道路整備はむだとの指摘があるが、地方の道路はもはや高規格道路などの幹線道路を残すのみで、既存道に関しては既に一部改良やメンテナンスが中心になっている。地方が声高に整備を求めているのは、残る高規格幹線道路である。よく、選択と集中と言われるが、未整備のエリアはほぼ限定されているのが現状で、選択肢はそう多くはない。あとは、道路特定財源の有効活用のためにも、集中すればよいのであって、大都市部からの批判はおかしいと言わざるをえない。

 もう1点は、自動車専用道路として「無料化」も本気で検討すべき時期だ。港湾を中心にした物流を見ると、なかなかトラックが高速道路活用に向かわない。荷主のコスト削減指示もあるのだろうが、通行料金が高いことに伴って利用しにくい状況があるためだ。これでは「物流コストの高い日本」となって、将来のアジア、ロシアなどとの貿易拡大に向けて、経済的にも大きなマイナス要因になりかねない。トラックの都市部通過による渋滞の緩和や交通安全、二酸化炭素の排出量削減も可能になる。重要港湾、空港、高規格道路、JR貨物などと連携させ、思い切った対アジアなどとの貿易振興、国内の経済力の維持、発展に向けた政策誘導も可能になる。従って、道路単体の論議もいいが、総合的な国策をどう進めるかという観点からも、無料化を検討したい。そのためなら、道路特定財源の負担にも大いに協力するというのが、国民の普通の考え方ではないかと思う。


◇効率化を徹底的に進める上での重要事項
 平成19年度の道路政策のポイントで、最初にうたっているのが、集中的にスピード感を持った道路行政への転換で、大いに賛成だ。沿線住民の声で、最も多いのが「われわれが生きているうちの開通はできるのか」という点に集約される。

 用地問題もかつてのように困難を極める時代ではない。特に農地の下落は進んでいるし、耕作放棄地も拡大の一途で、用地買収はかなりのスピードアップが可能だ。

 先ほども触れたが、県境部分は暫定2車線でもいい。とにかく環境アセスなどは先手、先手と進めるべきだ。住民の意見を反映させるための協議なども先行して進め、住民に早く道筋を明示できるようにしてほしい。用地問題も含めて住民の理解を得る一番の早道になる。