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氏 名所 属
菅原 時康 北海道新聞社 論説委員

■ご意見の内容

 都市と地方の格差是正が大きな課題となっている。税収や所得、福祉・医療などの面はもちろん、道路など社会資本整備の面でもこれ以上、格差を広げないことが重要だ。国と地方の厳しい財政状況を考えれば公共事業費の削減は避けられないが、その痛みを地方にだけ押しつけるようなことがあってはならない。

 地下鉄や私鉄など公共交通機関が発達している首都圏などに比べ、道内では鉄道、バス、航空路線の廃止・縮小で、自動車への依存度が高まっている。一家で2台、3台と車を持っているのは珍しくないし、そうしなければ生活が成り立たない地域も多い。都会の人にはなかなか理解してもらえないかもしれないが、地方の実態を粘り強く訴えていくしかないだろう。

 道路政策を進めるうえで忘れてならないのは、採算性だけでは判断できないということだ。広大な土地に市町村が点在する道内の場合、道路は人や物の移動だけでなく、地域住民の生命を守る救急医療のネットワークでもある。地震や豪雨などの災害発生時には避難路としての役割も担う。海沿いなど幹線道路が一本しかなく避難路の確保が難しい地域では、代替路の整備も課題だ。

 北海道特有の気象条件も考慮しなければならない。雪が降ったからといって、すぐに通行止めになったり、道幅が狭くなってバスやトラックがすれ違うのに苦労したりするような道路では困る。冬道の安全性・確実性の確保は常に考えておくべき問題であり、除雪体制の充実や地吹雪対策としての防雪林などの整備も欠かせない。

 政府は低迷している食料自給率を10年間で現在の40%から45%へ引き上げる国家的な目標を掲げている。「日本の食料基地」としての北海道の役割はますます重要になってくるだろう。道内の新鮮な農水産物をいかに早く全国の消費地に届けるかは大きな課題であり、港湾や空港と結ぶ道路網の整備が急がれる。

 ただ、これまでのように道路予算の大盤振る舞いが許されるような時代ではない。限られた予算の中で道路整備を効率的に進めるには、過去に作られた計画の大胆な見直しとともに、建設コストの削減や談合の根絶が不可欠だ。予算要求の際にも、本当に必要な道路に絞り、地域自らが無駄な道路は造らないという姿勢をはっきりと示すべきだ。