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氏 名所 属
高山 純一 金沢大学大学院 自然科学研究科 教授

■ご意見の内容

○これまでの道路政策の改善点について
・業績計画書・達成度報告書について、取組はよいが道路事業の期間を考慮すると毎年の評価ではなく、少なくとも3〜5年毎の評価のほうがより効果が顕著に現れるため有効ではないか。
・道路政策は渋滞対策などの都市部の政策が中心になりがちであるが、地方部では代替路の確保が必要である。新潟中越地震や今回の能登半島地震では道路の途絶により孤立する地域が発生したが、このようなことが起こらないような道路政策が必要であり、道路行政の業績計画書・達成度報告書においても道路ネットワークの信頼性評価指標の導入が必要ではないか(道路政策に問題あり)。
・社会実験において国が費用面で地方を支援する仕組みはよいが、実験後の本格導入に向けた取組の際にフォローアップの手だてがない。(本格導入に対する助走支援策が必要ではないか。)

○今後の道路政策について
・ハード面での道路行政には限界があり、運輸を含めた交通行政として一体的に考えるべき。地方部では都市部に比べ公共交通の料金が高く、利便性が低い。バスや乗合タクシーなどへ税金を投入すれば低額で利用が可能となる。道路特定財源の「一般財源化」ではなく、運輸を含めた交通全般への拡大使用が先決ではないか。
・道路利用において安全面を考えるとき、道路管理と交通管理を一体的に考える必要がある。そのために、国交省は交通管理にも踏み込むべきではないか。人間にはミスがある。事前の注意喚起や運転においてミスがあっても、これをカバーできる機器の開発に予算を投入し、ITS技術を活用すれば事故件数を減らすことが可能となる。総合的な交通安全対策により、死亡事故件数は減少傾向にあり、良いことであるが、交通事故件数そのものは、あまり変わっていない。交通事故件数そのものを減らす努力をすべきである。また、自転車について、自転車専用道の設置などハード面の対策は難しくても、地域に応じて、自動車・歩行者と共存する仕組み作りは可能と考える。さらに、街中への大型車規制なども有効ではないか。
・河川行政が治水・利水に加えて、環境保全(生態系)に対する意識が高くなってきているように、道路行政も安全・ゆとり・景観・地域の活性化等へ意識を変化させていくべきではないか。例えば、バイパス事業の供用により交通の円滑化が図れる一方で、旧道はさびれている現状がある。新たに生まれたゆとり空間の活用方策についても併せて考えていく必要がある。

○国民から幅広く意見を聞くときの留意点
・アンケートは、どの様な立場で答えるのか、どこの道路について回答するのかを明確にしないと得られた結果を有効に活用できない。特に、一般者に対するアンケートでは、専門用語を避けるとともに、世界と日本、地方部と都市部、過去と現在など回答するための尺度や情報を補足すべきである。

○道路政策全般に対するご意見、ご要望
・ドイツやフランスでは高速道路が山地部でも多車線で整備されているのに対し、日本は整備が遅れている。地方部の高速道路は不要との議論もあるが、地方部は代替手段が少ないためまだまだ道路整備は終わっていない。地方部は公共交通が少ないため、都市部より1人当たりでガソリン税をたくさん支払っているともいえる。国交省は、日本の道路の整備水準の評価をしっかり行い、必要性についてもっと説明する責任がある。批判されると受け身になってしまう傾向にあるが、もっと自信を持って表に出て行くべき。テレビ・新聞などマスコミに対応する専門チーム(政策広報担当官)の体制が必要ではないか。
・効率化を追求すればゆとりがなくなる。構造物の設計に例えるなら、想定を越える外力が作用すると構造は持たなくなる。地震では新しい構造物が被害を受け古い構造物が大丈夫ということもある。最適化が全てを網羅するかは疑問である。
・能登半島地震時に緊急輸送路が渋滞により有効に活用できなかったことを踏まえ、災害時の情報収集と情報提供についての検討を進めるべき。特に、アクセスコントロールされていない一般道路の交通規制や誘導方策等を考えておくことも必要である。
・構造物だけでなく、比較的復旧の早い土工(盛土構造物)についても耐震基準がある程度あった方がよいのではないか。