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氏 名所 属
津久井 寛 帯広大谷短期大学 生活科学科 教授

■ご意見の内容

【■今後の道路政策で優先すべきもの】
人口減少と少子高齢化が進展するなかで、北海道が自立していくためには産業基盤である農業の振興と産業・生活の基盤である道路及び通信ネットワークの整備が不可欠である。
人口減少社会にあって北海道の大多数の市町村はさらなる過疎化が見込まれる。農村地帯では、農業分野での国際競争という要因も加わり、更に経営規模は拡大し、過疎化の進展は著しいだろう。加えて財政難であることを考えると、全市町村に時代とともに要求水準が高まる生活インフラ(医療、買い物、教育、文化など)のすべてを整備することは道路整備以上に難しい課題である。
今後の北海道の描きうる一つの将来像は、中央並みの生活インフラを備えた地域の中核都市の整備とその周辺町村から1時間以内でアクセスできる交通ネットワークの整備である。都府県に比較し、広大な土地に市町村(居住地)が点在する北海道にあって、道路整備は地域生活を守る生命線である。
中核都市の中心市街地の整備のあり方としては、自動車と自転車と歩行者の区分整理をしたユニバーサルデザインの道路整備が環境、エネルギー資源、健康対策の面からも望まれる。

【■道路政策における効率化について】
北海道における道路整備の是非をめぐる論点は道路利用率という狭義の効率性基準ではなく、地域を支える基幹産業、そして国民の食を支える農業をいかに維持するか、また、地域間の公正(格差是正)の視点から行うべきであり、道路整備は今の市町村単位での生活インフラの整備よりはるかに効率的なまちづくり(地域経営)の基盤を与えると考えられる。

【■全般】
北海道の基幹産業として農業を位置づけるためには、食料自給率の向上を国として明確に目標設定し、国民の合意を得ることが必要である。桁違いの土地生産性を持つ米国や豪州農業との自由競争を迫る昨今の論議は荒唐無稽と言わざるを得ず、日豪、そして日欧米間での例外なきEPA提携となれば、日本農業、北海道農業は壊滅的打撃を受け、北海道はその存在意義を失うだろう。
化石燃料の枯渇がいよいよ現実味を帯びてきた中で、エネルギー資源と食料を全面的に貿易に依存した国家運営などありえない。日本は、食糧の自給率目標設定はWTO体制の枠外におくことを国際合意とすべく提唱していくべきである。
上述した中核都市と周辺町村で機能分担をしたまちづくりと交通・通信インフラの整備は、地域住民にとってもさまざまな痛みを伴う。しかし、豊かな自然と農業(食糧生産とエネルギー生産)、そして未来型の環境都市を、広大で歴史の浅い北海道にこそ築いていくべきである。