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氏 名所 属
辻子 裕二 福井工業高等専門学校 環境都市工学科 准教授

■ご意見の内容

○これまでの道路政策に関して、特にどのような改善点があるとお考えですか。
・ 道路施策の評価が達成度評価となっている。目標の設定が難しい面があるが、結果的にはほとんど達成されていない状況がある。数値(目標値)を最初に出してしまわなければならないのは理解できるが、計画自体の妥当性が問われないと、この達成度を評価する事自体が難しいのではないかと感じている。

○今後、道路政策に置いては、無駄を排するなど効率化を徹底する必要があると思いますが、特にどのような点を重視すべきとお考えですか。
・ 道路政策の考え方を読み解いていくと、基本的には利用者の満足度を指標としてとらえ、それに対して満足度を満たす(上げる)ために色んな目標を掲げ、その達成度を評価していると考えられる。すると、その統計は多数派となる自動車の利用者で占められるかたちで計算され、歩道の利用者・自転車の利用者がどうしてもネグレクト(無視・軽視)されてしまうと危惧される。満足度の評価項目も、どちらかと言えば自動車利用者本意のアンケート項目となってしまう傾向がある。政策に対する満足度を多数決で評価する場合、本来の目的と乖離してしまう可能性が指摘できる。数字に振り回されない評価システムの構築が望まれる。
・ 満足度の評価・達成度評価をする事は良い。一方で、従前の事前の厳しいチェックから事後評価の方が厳しくなってきているという趨勢の中で、事後評価の管理(目標管理)の難しさも多くの面で指摘されているところである。従前の厳しい事前評価体制の名残が現在も国民の意識の中にあり、事後評価は比較的いい加減であっても良いという甘えが払拭されていない点も気になっている。
・ 道路政策と一括りにいっても、雪国と雪の降らない地域では大きな違いがある。大きな道路政策の中で、一部として雪国対策が取り出されて議論されていると思う。そもそも雪国とそうでない地域では道路に対する意識が根本的に違うと思っている。例えば車道上の雪を歩道に負担させている状況がどうしてもあると思う。小学校や中学校の通学路の歩道は除雪されて確保されていると思うが、通学路ではない地域の歩道はどうしても除雪対応は遅れるのではないか。そこで除雪されていない歩道を利用する人はどうなるのかと言えば、雪が降らない時期でもその歩道を通らなくなってしまうと言う事が現実的にある。つまり、雪国の人の道路の使い方は冬に合わせているところがあるとの見方ができる。結果として、雪国における自動車所有率は高齢化の時代でも高い値を維持し、人口の割りに渋滞が緩和されない、自動車でのアクセスに依存したまちづくり(出店)がなされる、環境への悪影響の増大する、等の影響が出てはいないか。したがって、冬期の行動準備を想定した考え方に基づいて、歩道づくり・バリヤフリーなどの道路政策を考えるべきではないか。この点は、基本政策部会が謳っている「車中心の施策から自動車利用の抑制、生活道路の復権、沿道環境・地球環境の改善も考慮した歩行者・自転車など生活者重視への施策へ」と一致する。
・ 基本政策部会では、インターモーダル(異なる交通機関(鉄道や港湾等の結節)のスムーズな連携)な総合面的交通についても謳っている。この点でも本来雪を意識せざるを得ないと言える。
・ 極端な話をすれば、私はもっと道路が不便でも良いと思っている。便利・快適を目標に政策の議論がなされていると思うが、便利であるという前提をつくるのはどうか。便利であることが当たり前の状態となれば、利用者のニーズは時間と共に高まり、結果として質の向上より量的確保に向かってしまうことが心配される。この結果、メンテナンス周期が延びるという弊害も出る。不便な道路というと語弊があるが、道路は止まってしまう事もあると言う事を訴えていく場面も必要である。例えば、ドイツにおける駅前の進入禁止のように、最初は意味を持たせて不便さを積極的に体験させることも良い。そういう意味で、東京マラソンの様に交通を止めてしまう機会が積極的にあって良いと思う。
・ 高規格道路を作るという事に対しても同様のことが言えないか。高規格道路については法的なリクワイアメントが非常に高いと思うが、もう少しレベルを下げることも懸命な判断では。

○道路に関して無駄と感じることはありますか。具体的にお教えください。
・ 法律的な道路に関するリクワイアメントが高過ぎる。例えば、南条のSICなどはそんなに利用がないと思うが、人間がいつも常駐して管理する必要があるのか?

○今後取り組む道路政策の一層の重点化を図ることが必要であると思いますが、優先度が高い又は低い課題への対応は何であるとお考えですか?
・ 優先度の付け方で、統計量(計画交通量等)だけでは数の論理になってしまうので、あまり多軸でやるのではなく、大きな政策のレベルとローカルのお話しを分けて考えてはどうか。予算的な問題があることから妥協のレベルの議論となるためコメントが難しい。

○国民の皆様に対し、幅広くご意見を頂くこととしておりますが、特に留意すべき点などがあればお教えください。
・ どうしても無視・軽視されそうな意見をどうやって拾っていくかを考える。

○その他、道路政策全般に関して、ご意見、ご要望があればお聞かせください。
・ 説明責任は大切であるが、説明責任について限界を感じていないかと問いかけたい。満足度等で説明責任を果たそうとすると、どん詰まりになってしまうのではないか?
・ PI手法やNPOとの連携・協働が民意を吸い上げになると思う。つまり、求められているのは有識者の示唆ではなくて、一般の方が自分が決したという達成感ではないか。
・ アイデアではないが、8号線などと堅い名称ではなく、地域に根ざした命名権を与え、この道路は僕等・私達の力・財政でなんとかしたという意識付けをする事が肝要である。リスク分散にもつながると思う。このような取り組みは将来的にコスト増が予想されるメンテナンスについても、水が跳ねたり、車がちょっと傷付こうと管理責任が問われないような仕組み結実しないか。