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氏 名所 属
梅林 秀伍 大分経済同友会 代表幹事

■ご意見の内容

これまで社会資本整備は「全国統一」との視点で進められてきたが、最近になって「個性ある地域づくり」ということになってきた。聞こえのよい言葉ではあるが、これまでの社会資本整備の恩恵にあずかれずに人口増加ができずにいる地域が置き去りになるようでは問題である。

アジア地域では、中国からベトナムやラオスを経由しシンガポールまで結ぶ4000kmの道路が今年にも完成予定、中国では、8万kmの道路ネットワーク整備計画がある。このような中にあって、少子高齢化時代の我が国で国際競争力をつけ、経済浮揚を図り、経済発展をするためには道路整備が不可欠である。

経済発展など中長期の視点から国家の戦略として最優先に行うべきことは、基幹となる循環型道路網の整備である。このような観点から、東九州自動車道や中九州横断道路、中津日田道路などの道路は最重要な道路である。また、この基幹道路に肉付けする形でのアクセス道路やバイパスの整備も重要である。大分自動車道も霧が出ると頻繁に通行止めになるという問題があり、こういう点でも代替機能を持つ道路の整備は必要である。

さらに地域の医療を支えるような命綱の道路についても重要である。救急救命センターを備えた三次医療施設に1時間以内に到達できるという指標があるが、九州では全国の他の地域に比較して到達できない地域の割合が高い。

大分自動車道の開通は、東名自動車道が開通して30年以上も経ってからである。このような例を見ても、大分地域は道路整備が非常に遅れている。西九州では道路網が整備されている上に福岡と鹿児島を結ぶ新幹線(鹿児島ルート)が平成22年に開通する計画となっているが、東西九州のバランスのとれた地域整備という観点でも、東九州道をはじめとする道路の整備が不可欠である。

都会では災害もほとんどなく、道路以外の移動手段が公共交通として担保されている。このような状況であれば、住民にとって環状道路以外の道路はそれほど必要性が大きくないとの意見もわからないではない。しかし今後、地方では地下鉄などの都市近郊形の鉄道の整備は採算上不可能であり、道路が移動手段として命綱である。

地方の道路に無駄が多いという意見があるが、無駄な道路はない。一部分のみ開通した道路みて「地方の道路は交通量が少ない」との意見もあるようだが、道路は全線がつながって初めて効果が出るものであり、そのような状況を見ないままの議論は全く意味がない。

国家の戦略としての道路整備は特別な予算枠を確保して、整備を行う重要な政策であり、その貴重な予算を一般財源化するなどの議論は理解不能である。

九州知事会では九州地域では6兆円の道路整備が必要との提言もまとめており、「無駄な道路がある」「道路予算が余っている」との指摘は間違っている。

九州地方整備局では「ちゃくちゃくプロジェクト」という取り組みを行っているが、地域活性化の観点やまちづくりの観点で非常にありがたい取り組みである。道路の完成時期が明示されれば、それを基礎とした開発を計画的に行うことができるので、産業界としても非常に助かっている。