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氏 名所 属
宇野 伸宏 京都大学大学院 経営管理研究部 准教授

■ご意見の内容


○これまでの道路政策の改善点について
・これからは、道路に関する問題把握を深めるべき。

・道路政策のPDCAサイクルにおいて、これまではP,Dに力点が置かれており、ある程度の道路網が形作られている。しかし、ネットワークがあっても、道路の性能が発揮できていない部分があるのではないか?混雑している道路でも、バス停のバスベイや右折レーンの設置など局所的な対応によって、交通の円滑化が期待できる。少ない投資で、道路性能の改善を大いに期待できる部分がある。

・これまでは、道路の問題点の科学的分析に必要なデータが不足していたが、最近ではセンサス、プローブ、走りやすさMap、VICSなど、道路や交通の状況を面的に、かつ、時間変動を加味して把握できるデータが揃ってきている。今必要なのは、これらを統合的にうまく利用し、科学的な分析により道路の問題点を検討する「道路の診断」が必要。

・対策の実施にあたっては、「道路の診断」結果について、コストをかけて対策を実施する必要があるか否か、行政的にPI等により問いかけを行い、問題点を実施に結びつけていく必要がある。またその検討過程をうまく情報発信することにより、無駄を省いた道づくりを進めている点を理解して頂くことが必要。

・諸外国の道路と比較しても、日本は1番目の道路(高速道路)はすばらしいが、2番目(集落間を高速で結ぶ道路)がないと思う。1番目の道路が造れないなら、2番目の道路として国道レベルの道路を線形改良、拡幅することにより、集落間は高速走行、集落内は安全速度で走行するような道路を整備するなど工夫が必要。

・暫定2車線供用している道路には、半ば永久的に暫定となる可能性が高いものがあり、円滑な交通に支障となっているものがある。当初から3車線道路(リバーシブルでない)として整備すれば、数キロおきに追い越し車線の設置が可能となり、ドライバーのイライラ感解消による安全性確保、工事規制時・故障車停車時における円滑な交通の確保に繋がる。


○道路政策全般に対する意見、要望
・14,000kmは国の骨格であり必要。社会システムの現状は、道路に依存している。

・「交通量が少ない道路は無駄」という意見があるが、国を守る観点でみれば必ずしもそうではない。災害等である地域に問題が起きた場合、道路は必要となる。例えば、新潟中越地震では、震災復旧にあたり関越道が果たした役割は大きい。道路は、飛行機や船と違い、人手を瞬時かつ大量に目的地まで運ぶことが出来る。

・改正まちづくり三法等により、今後は都心回帰、コンパクトシティー形成の傾向にある。このため、都心に人を呼び込む観点で道路づくりが必要。既存道路の改良、バス等公共交通の円滑化、またコンパクトシティー間を移動できるネットワーク等が必要となる。