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氏 名所 属
渡辺 千賀恵 九州東海大学 工学部 教授

■ご意見の内容

・これまでの道路政策に関しては、2つの改善点がある。
@段階構成が不徹底。
  道路は、高速道路、幹線道路、裏道(生活道路)等の段階構成で成り立っている。限られたお金で、効率的、重点的に整備をしようとすると、交通量の多い幹線道路しか整備できない。道路の役割、性格を考えた政策を立案し、必要な生活道路等の整備も行うべきである。
A道路構造令と同様に道路運用令が必要。
  道路構造令には、道路を造る場合を想定した記載しかなく、既設の道路をどのように使っていくかについては、なんら記載がない。従って、例えば1本の道を一方通行にさせようとしたときに、地元住民は2〜3年にわたって運動を展開し、県警の了解を得ないと実現できない状況である。道路の使い方について、国土交通省令くらいの位置づけの仕組みを用意すべき時期である。

・今後の道路政策においては、無駄を排して効率化を徹底する必要があるなかで、特に重視すべき点は、大都市と地方において、同じ基準を使うべきではない。大都市と地方とでは、公共交通機関の充実度合いなどの状況が違うからである。地方においては、公共交通機関は、赤字で減っていきつつあるし、今後も必ず減っていく。こういった現状の中で、地方においては、5〜10年先を考えると公共交通機関には、たよっていられなくなる。そうすると生きていく生活の足場はマイカーしかない。この切実さが大都市とは異なる。よって、大都市と地方において、一律な道路整備の判断基準を使うべきではない。

・国土交通省の道路法や道路構造令と農林水産省の農道システムを早急に合わせてほしい。道路法でいう道路と、河川堤防の道路と、農道などをもっと広い視野で調整がとれるようにするべきである。

・優先度が高い課題は、既存の道路を活用した休日(観光)交通量に対応できるネットワーク整備である。田舎においては、公共投資が激減して建設会社が成り立たたなくなってきた中で、これから可能性のある産業は田舎の自然を活かした観光である。観光を活かすためには、道路整備が必要であるが、これまでの道路は、平日の昼間の交通量を前提に計画されてきたために、平日はあまり混雑しない道路も休日は、渋滞が発生している。新しく休日(観光)交通量に対応できる道路を整備するとなると、お金がないため難しい。そこで、既存の道路ネットワークで、例えば1kmつなげば、スムーズに迂回ができる箇所がいくつかある。このような箇所を見つけ出して、休日(観光)交通量に対応した道路ネットワークの整備を行うべきである。