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氏 名所 属
八嶋 厚 岐阜大学 工学部 教授

■ご意見の内容

1) バイパスなどの新規道路をつくるときの広報が下手。距離の短縮など1本の道路としての効果の広報ばかりではなく、道路がネットワークとして機能することに着目した効果をきちんと広報すべき。高規格道路のネットワークとローカルネットワークの(相乗効果の)PRをすべき。

2) 道路の老朽化が進んでいる。国民は特に直轄については安全だと思っている。維持管理が大切だ。管理延長がのびる一方で老朽化が進んでいる。今まで以上にお金がいることを、きちんと国民に伝えてほしい。産業界(運送業、製造業等)は道路がタダだと思っている。受益者負担の根幹である特定財源が他に回り、道路が止まったときには産業界に甚大な影響が出ることをきちんと伝えるべき。防災にもっとお金をかけるべき。災害時には鉄道などは止まるが、道路は冗長性があるためすぐに通行が復旧するし、道路交通は止まらない。道路は常時は経済活動を支え、災害時には復旧活動を支えることを知ってもらうべき。災害に強いタフな道路が必要だが、それを実現するには道路特定財源だけでは足らず一般財源の投入も必要になるくらいお金がかかる。

3) 今の直轄管理と自治体管理の分担(負担率)を見直すべき。維持管理費の当初予算でみると岐阜県内では直轄が150億円450km、県が150億円4200km程度と思う。県には直轄の裏負担があるので実質県が使えるのは100億程度ではないか。これには補正などは含んでいないが、掛けられるお金が10倍位の違いがある。直轄は第一次緊急輸送路だが、県管理の道路にも第一次緊急輸送路もあれば、高次の医療施設につながる道もある。速やかに緊急輸送路の見直しをして、直轄と県の分担を見直すべき。県では技術者が減っており、直轄には県管理の部分を引き受けるのは大変との思いもあるだろうが、限られた道路財源で必要なネットワークをきちんと見る観点から、緊急輸送路、交通量、バス路線などを元に管理の分担(指定区分)を見直すべき時期に来ている。直轄も事業費が不足しているが、県はさらにお金が無くて困っている。財源投資の優先順位も付けるべきだ。

4) 広報が下手だ。東名阪の例にもあるように道路をつくると産業が起きる。逆に道路交通がないのに工業団地をつくってもだめ。新規道路ネットワークにより、誘発した産業振興の例である。

三重県の製造業の割合は岐阜県の7割程度であったが、今は逆転している。これは、テレビ製造業における亀山ブランドが、貢献している。製造業界と運送業界には道路がないと成り立たない(誘致出来ない)ことを強く言うべき。道路が産業や地域の根幹であることは明らか。自分たちの根幹にお金が出せない仕組みがよいわけがない。道路をつくることによって産業が起き雇用が創出され格差是正を図ることが可能となるが、道路特定財源の一般化によって地域格差を是正する手段をも失うことになる。少子高齢化社会の中で、病院に行くにも道路が必要。この必要性がますます増している。実際は道路特定財源だけでは不足だ。

5) 無駄は個人によって考え方が違う。道路の効果をきちんと広報すれば無駄な道路と言われることは無くなるのではないか。もちろん環境への負荷など負の遺産はあるが、これは自動車産業と一体となってより環境への負荷が少ない交通をつくり出していくべきもの。受益者負担にも通ずるものである。

6) 厳しい言い方をすれば、日本の道路は畦道の段階。東海環状にしても暫定2/4車線供用の部分は畦道に毛が生えた程度で、欧米に比べ大変遅れている。

7) 防災の取り組みが対症療法的である。なにかあったらその対応をやることばかりを繰り返していると、他の先を見越した道路投資が無駄に見えるようになる。

8) 優先度が高い道路を整備しているわけだが、国民に「優先度が高い」「優先度が低い」の判断について指標を用いてきちんと示しているのか?この面が不足している。