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氏 名所 属
山上 拓男 徳島大学大学院 ソシオテクノサイエンス研究部 教授

■ご意見の内容

○日本全国一律ではなく、地域の実情に合わせた道路整備に関する議論や施策が必要であると考える。
○徳島県の道路を中心とした社会基盤整備は、南海・東南海地震と切り離すことはできない。この地震に如何に向き合って、被害を最小限に抑えるかが重要な課題である。
 船やヘリコプターなどによる救援活動もあるが、救援活動の大部分や復旧活動は道路に依存せざるを得ない。地震後すぐにとは言わないまでもスムーズな救援活動・復旧活動ができるような道路とすべきである。
 県の南部は、今後ますます人口が減少すると予想される。このような人口過疎地域の道路整備は、費用対効果や全国一律の議論で律すべきではない。地方にあっても安心して暮らせるために必要な地方固有の道路整備の有り様を検討願いたい。
 地震による被害は、徳島県下一円に及び、取り分け県南ほど激しいものと予想される。それ故、救助・救援活動は本州を含む北側から駆けつけて頂かねばならない。しかし、徳島県は吉野川や那賀川などの大河川が東西に流れているため、こういった河川を渡らなければ救助・救援活動ができない。したがって、少なくとも1橋は、大規模地震に対しても安心できる橋梁を含む道路の確保が不可欠である。

○平成16年8月、台風10号により24時間雨量が1,300mmを超えるというわが国最大の24時間雨量を記録した。この豪雨のため、山腹崩壊などにより旧木沢村(現那賀町)等で集落の孤立が相次いだ。人生観が変わるほどの規模の災害であった。
 徳島県の場合、山間に集落が点在し、その多くは集落間が災害に対して脆弱な単一の道路で結ばれているのが実態である。近時、気候変動の影響で、想定し得ない規模の自然現象が多数発生していることと合わせ考えると、旧木沢村のような状況は、県内の至る所で再発しかねない。災害が発生する度に「自然はいつも人の裏をかく」との台詞を実感するが、国には災害に備えて常に抜かりのない取り組みを期待したい。

○地方では、自動車がないと生活できない状況である。憲法でも、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しているが、現在の地方においては、道路を利用して移動しなければ、健康で文化的な最低限度の生活を営むことができない。そういった観点から、特に、都市部に集中する医療機関や文化施設へのアクセスなど必要最低限の道路整備水準があるのではないか。現代のような車社会にあっては、国民が等しく高速道路を利用できることも上記の憲法が保障する権利に含まれていると考える。地方の道路整備は経済効果だけで論じられるべきではない所以である。