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氏 名所 属
吉田 博宣 日本大学 生物資源科学部 教授

■ご意見の内容

・ 道路建設により土地利用が活発になる反面、土地利用が進みすぎると交通渋滞を誘発するなど、道路と土地利用は相互に作用し、密接に関連していると言える。一方で、道路と環境も相互に作用し、密接に関連していると言えるが、従来は道路建設による環境への負荷を考慮するにとどまり、環境保全の見地から道路建設を捉えるという視点が見過ごされてきたのではないか。

・ 従来、道路建設による環境への影響を回避、最小化、回復、軽減、代償するという手法を採るにあたっても、ルートありき、道路建設ありきの枠組みの中にとどまっていたと感じている。住民等の合意形成を図るパブリックインボルブメントについても同様で、目的合理性と手続きの正当性を確立するために実施されてきたにとどまり、今後、環境保全に対する合意形成の手段として捉えるべきではないか。

・ 環境保全の視点からは、ルートを選定する計画段階で、環境への影響を回避、最小化、回復、軽減、代償するという手法を採ることが不可欠。

・ 今後、道路建設による経済効果と環境影響を価値観対等の立場でチェックすることが求められるようになると考えられるが、そのためには環境を経済価値で評価する必要がある。

・ 従来、当該地区には貴重な猛禽類が生息しているから対策を実施する、といった個別対応に終始していたと感じている。ルート全体で俯瞰し、生態系を維持するという視点で、路線の選定から道路構造に至るまで道路建設を評価し、環境的外部不経済を回避すべき。

・ 河川事業では、多自然型河川をはじめ環境を内部目的化しているが、今後、道路においても同じ視点が必要ではないか。これは、単なるエコロードやビオトープにとどまらない。

・ 人々の生活をも含めた地域環境が大切であり、その環境課題の認識共有化が重要。その追求がアカウンタビリティの獲得につながる。

・ 最近、都市再生機構をはじめ建築業界では、どこにどのような利用可能木が存在するかというデータを共有する仕組み(グリーンバンク)を構築し、既存樹木の有効活用が図られている。武蔵野緑町団地をはじめ老朽化した団地の建替にあたって、既存の「緑」をインフラとして捉え有効活用し、住民からも高い評価を得ているという事例がある。道路行政においても活かせる仕組みではないか。