閉じる
氏 名所 属
吉原 忠男 埼玉県医師会 会長

■ご意見の内容

T、無駄な道路というものは無い
 道路政策について無駄は無いかと配慮しておられるようですが、基本的には道路を作って無駄になるということは無いと考えています。シルクロードを例に挙げるまでも無く、道路によって遠隔地との交易が発展し、文化や文明が伝播していくことは明らかなことです。
 日本国内においても、高速道路や幹線道路は勿論、僻地や中山間における道路に至るまで、今まで全て、地方に対する経済効果が上がっており、食文化を始めとして教育、美術や歴史など教養の伝播、最新機器の普及、そして救急医療を含めて一般ならびに高度先進医療の圏域の拡大など、日本人の生活に大きく寄与していると考えます。
 問題は、職員の人数、入札による予算決定などの面で、コストパフォーマンスにいかに配慮するか、そして自然との共存をいかに図るか、ということでしょう。

U、環境破壊の元凶とならないように最大の配慮が必要
 道路建設による環境破壊は、単に森林や田園の緑の喪失ばかりではなく、周辺住民の喘息やアレルギー性疾患、少数ではあるが肺がん等を増加させ、また昆虫、鳥獣など、そして農作物にも悪影響があることは知られています。例えば中国縦貫自動車道が完成したために、中国地方や四国、九州への利便性、経済効果は大きく増加しましたが、岡山県が日本一の出荷量を誇っていたマツタケの産出が激減しました。これは道路工事に伴う粉塵のためとも、車の排気量によるためとも言われています。車両によって排出されるCO2、窒素酸化物等は人間ばかりではなく植物にも害を及ぼすことを国土交通省はもっとシビアに考えるべきです。
 環境破壊を防止し自然と共存するために、排気ガス規制を強化しなければ、沿線住民の真のコンセンサスは得られないと考えます。特に高速道路料金所には、新しい排気ガス規制に合格したIDステッカーを貼った車両しか入れない自動システムを開発・設置すべきであります。
 経済の活性化は国際競争上必要かもしれませんが、文明の発展とともに文化が衰退することはローマ帝国、通商国家ヴェネツイアなど多くの国の歴史が証明し、歴史学者たちが繰り返し警告していることです。政府各機関はグローバル化する経済発展に追随するあまり、自国の文化破壊に無意識に手を貸していることに気付くべきです。私は京都議定書を日本が提示し、エコロジーの面で世界をリードしていることを大きく評価しています。国土交通省もそれに同調すべきです。

V、医療圏域の拡大は住民への最大メリットである事を周知すべきである
 Iの項で述べましたが、現在の医師や基幹病院の偏在、小児救急医療や周産期医療システムの不足などを、発達した基幹道路、高速道路は大きく補うことになる、ということには気付かない住民も多いと思うので、PRすべきです。
 特に周産期医療、つまり重症の臨月の産婦を搬送して無事に出産させて母子の生命を守ることは、少子高齢社会を迎えている日本においては最優先させるべきことであります。この周産期医療センターが各地で不足しています。道路整備による医療圏の拡大はこの点でも大きなメリットがあります。
 また、大災害時なども含めて救急医療には、道路による患者さんや医療チームの移動を迅速に行うことが出来ることが重要です。僻地の道路も、医師の往診や救急車の移動を可能とするので、きちんと整備すべきであります。

W、財源については、国は地方に多くの支援をすべきである
 この分野については、私は専門家ではないので多くを言えませんが、一時言われていた道路公団の天下りや工事会社の談合などを透明化合理化し、さらにいろいろ問題視されている特別会計の無駄を省くなどの国側の努力もより必要でありましょう。

X、細部における改善要望
1、高規格道路の耐震建築の徹底化
 阪神・淡路大震災や上越地震の際に、耐震工事がなされていなかった道路の崩壊によって、消火活動、救助医療活動、ライフライン確保が困難を極めたことをよく研究すべきであります。  
2、何故、料金所の通過にキャッシュ・カードが使えないのか
  ETCカードの通過機能を改善すれば、市内で使われている一般の各種キャッシュカードを使えるようになるのではないか。そうすれば料金所の渋滞を相当防げると思う。
3、高速道路や高規格道路の橋脚下部のスペースをライフラインの幹線配管集約化に利用できないか
 緊急用の給水管、電気配線、ガス管、電話線、各地の首長と政府のホットラインを高速道路の下部に吊り下げ型の共同耐震パイプを設置することによって、少なくとも幹線周辺にはライフラインを確保し、さらに遠隔地域にも分岐させ臨時配線・配管が可能になると思います。
4、高速道路や高規格道路において緊急時の避難口が非常に少なく、避難方法の表示も曖昧な所が多い。
 都内の高速道路でも緊急時に前に何メーター逃げるか後ろに何メーター走るか、避難者が迷うような標識が多い。特に地震などの大災害時の避難方法が研究されていないように思います。
5、東北地方以北には路面凍結防止装置が必要でしょう。
6、大災害時やテロ発生時に高速道路にヘリが発着できるような幅広いスペースを随所に設置すべきでありましょう。