道路

道路特定財源の一般財源化について

道路特定財源の一般財源化については、先般より見直しの検討が進められ、平成17年12月9日に政府・与党による「道路特定財源の見直しに関する基本方針」が取りまとめられました。

この基本方針の内容を法文化した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(行政改革推進法)」が翌年6月に公布され、同法に沿って検討が進められることとなりました。

同年7月7日に閣議決定された「骨太の方針2006」においては、「行革推進法に基づき、一般財源化を図ることを前提に、早急に検討を進め、納税者の理解を得つつ、年内に具体案を取りまとめる。」とされました。

これらの方針に沿って、平成18年12月8日には「道路特定財源の見直しに関する具体策」が閣議決定されました。

この具体策に基づき、平成19年12月7日には、政府・与党合意「道路特定財源の見直しについて」がとりまとめられました。

その後、この政府・与党合意を踏まえ、第169回国会(常会)に関係法案を提出しましたが、国会審議における議論等を踏まえ、平成20年5月13日に「道路特定財源等に関する基本方針」が閣議決定されました。

この基本方針に基づき、平成20年12月8日に「道路特定財源の一般財源化等について」が政府・与党合意されました。この政府・与党合意を踏まえ、平成21年度より、道路特定財源をすべて一般財源化しました。

道路特定財源の見直しに関する基本方針(平成17年12月9日 政府・与党)

道路特定財源は、長年にわたり、立ち遅れた我が国の道路の整備状況に鑑み、自動車利用者の負担により、緊急かつ計画的に道路を整備するための財源としての使命を担ってきた。

しかしながら、その後、道路の整備水準の向上する中、近年の公共投資全体の抑制などを背景とする道路歳出の抑制等により、平成19年度には特定財源税収が歳出を大幅に上回ることが見込まれるに至っている。このため、現時点において、改めて、今後、真に必要となる道路整備のあり方について見極めるとともに、特定財源のあり方について、納税者の理解を得て、抜本的な見直しを行うことが喫緊の課題となっている。

その際、現下の危機的な財政事情に鑑みれば、見直しによって国の財政の悪化を招かないよう十分に配慮し、また、特定財源の使途のあり方について、納税者の理解の得られるよう、以下を基本方針として見直す。

  1. 道路整備に対するニーズを踏まえ、その必要性を具体的に見極めつつ、真に必要な道路は計画的に整備 を進める。その際、道路歳出は財源に関わらず厳格な事業評価や徹底したコスト縮減を行い、引き続き、重点化、効率化を図る。
  2. 厳しい財政事情の下、環境面への影響にも配慮し、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持する。
  3. 特定財源制度については、一般財源化を図ることを前提とし、来年の歳出・歳入一体改革の議論の中で、納税者に対して十分な説明を行い、その理解を得つつ、具体案を得る。

簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(抄)(平成18年6月2日公布)

(道路整備特別会計等の見直し)
第二十条 略

  1. 特定の税の収入額(これに相当する額を含む。以下この項において同じ。)の全部又は一部を道路に関する費用の財源に充てる制度(以下この項において「特定 財源制度」という。)については、国の財政状況の悪化をもたらさないよう十分に配慮しつつ、特定財源制度に係る税の収入額の使途の在り方について、納税者の理解を得られるよう、次の基本方針により、見直しを行うものとする。
  2. 道路の整備は、これに対する需要を踏まえ、その必要性を見極めつつ、計画的に進めるものとする。この場合において、道路の整備に係る歳出については、一層の重点化及び効率化を図るものとする。
    特定財源制度に係る税については、厳しい財政状況にかんがみ、及び環境への影響に配慮し、平成十七年十二月における税率の水準を維持するものとする。
    特定財源制度に係る税の収入額については、一般財源化を図ることを前提とし、平成十九年度以降の歳出及び歳入の在り方に関する検討と併せて、納税者の理解を得つつ、具体的な改正の案を作成するものとする。

道路特定財源の見直しに関する具体策(平成18年12月8日 閣議決定)

我が国の競争力、成長力の確保や地域の活性化のため必要な道路整備を計画的に進めることは、引き続き、重要な課題である。他方、我が国財政は極めて厳しい状況にあり、国民負担の最小化のため、歳出削減を徹底し、ゼロベースで見直すことが必要となっている。

このため、昨年末の政府与党合意、行革推進法等に基づく道路特定財源の見直しについては、以下に定めるところにより行うものとする。

  1. 道路整備に対するニーズを踏まえ、その必要性を具体的に精査し、引き続き、重点化、効率化を進めつつ、真に必要な道路整備は計画的に進めることとし、19年中に、今後の具体的な道路整備の姿を示した中期的な計画を作成する。
    特に、地域間格差への対応や生活者重視の視点を踏まえつつ、地方の活性化や自立に必要な地域の基幹道路の整備や渋滞解消のためのバイパス整備、高速道路や高次医療施設への広域的アクセスの強化など、地域の自主性にも配慮しながら、適切に措置する。
  2. 20年度以降も、厳しい財政事情の下、環境面への影響にも配慮し、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持する。
  3. 一般財源化を前提とした国の道路特定財源全体の見直しについては、税率を維持しながら、納税者の理解を得ることとの整合性を保ち、
    ① 税収の全額を、毎年度の予算で道路整備に充てることを義務付けている現在の仕組みはこれを改めることとし、20年の通常国会において所要の法改正を行う。
    ② また、毎年度の予算において、道路歳出を上回る税収は一般財源とする。
  4. なお、以上の見直しと併せて、我が国の成長力や地域経済の強化、安全安心の確保など国民が改革の成果を実感できる政策課題に重点的に取り組む。その一環として、国民の要望の強い高速道路料金の引下げなどによる既存高速ネットワークの効率的活用・機能強化のための新たな措置を講ずることとし、20年の通常国会において、所要の法案を提出する。

道路特定財源の見直しについて(平成19年12月7日 政府・与党)

昨年末の「道路特定財源の見直しに関する具体策」に基づき、以下の措置を講じることとし、関連法案を次期通常国会に提出する。

  1. 真に必要な道路整備の計画的な推進
    1. 中期計画の策定及び推進

      ① 国際競争力の強化、地域の活性化、安全・安心の確保、環境の保全と豊かな生活環境の創造といった政策課題に対応するため、今後10年間を見据えた道路の中期計画を策定し、真に必要な道路整備は計画的に進める。
      ② 計画の推進に当たっては、厳格な事業評価や徹底したコスト縮減により重点化、効率化を図るとともに、道路に関連する施策の実施や高速道路料金の引下げ等を効果的に活用する。
      ③ 中期計画の事業量は、59兆円を上回らないものとする。
      ④ 中期計画は、今後の社会経済情勢の変化や財政事情等を勘案しつつ、5年後を目処として、必要に応じ、所要の見直しを行う。

    2. 地域の道路整備の促進
      地域間格差への対応や生活者重視の視点から、地方の自主性にも配慮しつつ、地域のニーズを踏まえた、真に必要な道路整備を促進する。特に、

      ① 地方道路整備臨時交付金の制度改善(対象の拡大及び財政状況に応じた交付率の引き上げ)
      ② 道路整備に関する地方の財政負担の軽減を図るための臨時措置(5年間、総額5000億円規模)として、無利子貸付制度の創設(償還時に国債整理基金特別会計に繰り入れ)

      を行う。
  2. 既存高速道路ネットワークの有効活用・機能強化
    地域の活性化、物流の効率化、都市部の深刻な渋滞の解消、地球温暖化対策等の政策課題に対応する観点から、高速道路料金の引下げ、スマートIC(インターチェンジ)の増設など既存高速道路ネットワークの有効活用・機能強化策を推進する。
    このため、地方公共団体との連携を図るとともに、道路関係四公団民営化の趣旨を踏まえ、高速道路会社においてコスト縮減など更なる経営合理化に取り組むことによる追加的な措置の実施と併せて、国の道路特定財源を活用して2.5兆円の範囲内で債務を国が承継する。
  3. 道路特定財源制度の見直し
    揮発油税の税収等の全額を、毎年度の予算において道路整備に充てることを義務付けている道路整備費の財源等の特例に関する法律第3条の規定を改める。
    また、毎年度の予算において、道路歳出を上回る税収については、環境対策等の政策課題への対応も考慮して、納税者の理解の得られる歳出の範囲内で、一般財源として活用する。
    なお、厳しい財政事情を勘案し、平成20年度予算において、納税者の理解の得られる歳出の範囲内で、平成19年度を上回る額を一般財源として活用する。
  4. 税率水準の維持
    国及び地方の道路特定財源については、上記措置を着実に進める必要性及び、厳しい財政事情や環境面への影響にも配慮し、20年度以降10年間、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持する。
    なお、1.I .④の見直しを踏まえ、道路整備の状況等を勘案し、必要に応じ、所要の検討を加えることとする。
    また、自動車関係諸税については、税制の簡素化が必要との指摘もあり、今後の抜本的な税制改革にあわせ、道路の整備状況、環境に与える影響、厳しい財政状況等も踏まえつつ、暫定税率を含め、そのあり方を総合的に検討する。

道路特定財源等に関する基本方針(平成20年5月13日 閣議決定)

道路特定財源等については、以下の基本方針のとおりとする。

  1. 道路関連公益法人や道路整備関係の特別会計関連支出の無駄を徹底的に排除する。
    政府全体で、行政と密接な関係にある公益法人について、6月末までに集中点検を実施し、支出の無駄を徹底的に是正する。
  2. 道路特定財源制度は今年の税制抜本改革時に廃止し21年度から一般財源化する。
    その際、地方財政に影響を及ぼさないように措置する。また、必要と判断される道路は着実に整備する。
    一般財源化の法改正により、道路整備費の財源等の特例に関する法律案における道路特定財源制度の規定は21年度から適用されないこととなる。
  3. 暫定税率分も含めた税率は、環境問題への国際的な取組み、地方の道路整備の必要性、国・地方の厳しい財政状況等を踏まえて、今年の税制抜本改革時に検討する。
  4. 道路の中期計画は5年とし、最新の需要推計などを基礎に、新たな整備計画を策定する。この計画は、20年度道路予算の執行にも厳格に反映する。
  5. ガソリン税などの暫定税率の失効期間中の地方の減収については、各地方団体の財政運営に支障が生じないよう、国の責任において適切な財源措置を講じる。その際、地方の意見にも十分配慮する。
  6. これらの具体化を進めるため、道路特定財源等に関する関係閣僚会議を設置する。

道路特定財源の一般財源化等について(平成20年12月8日 政府・与党)

本年5月の閣議決定「道路特定財源等に関する基本方針」等に基づき、以下の措置を講ずることとし、関連法案を次期通常国会に提出する。

  1. 道路関連支出の無駄の排除
    道路事業・道路関係業務の執行に対する様々な指摘を踏まえ、平成21年度予算において、徹底したコスト縮減、ムダの排除に取り組む。
  2. 道路特定財源制度の廃止
    平成21年度予算において道路特定財源制度を廃止することとし、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律第3条の規定を削除するとともに、地方税法などの所要の改正を行う。
    また、特定財源制度を前提とし、社会資本整備事業特別会計に直入されている地方道路整備臨時交付金を廃止する。
  3. 新たな中期計画
    道路特定財源制度の廃止に際し、新たな中期計画は、道路のみ事業費を閣議決定している仕組みを改め、他の公共事業の計画と同様とする。事業費ありきの計画を改め、計画内容を「事業費」から「達成される成果」(アウトカム目標)へと転換し、今後の選択と集中の基本的な方向性を示すものとする。また、他の社会資本整備との連携を図り、社会資本整備重点計画と一体化することとする。
    今後の道路整備に当たっては、最新のデータに基づく交通需要推計結果をもとに、見直した評価手法を用いて厳格な評価を行うことを明確にする。
  4. 地域の基盤整備
    地方からの要望を踏まえ、地方の道路整備や財政の状況に配慮し、地方道路整備臨時交付金に代わるものとして、道路を中心に関連する他のインフラ整備や関連するソフト事業も含め、地方の実情に応じて使用できる1兆円程度の「地域活力基盤創造交付金(仮称)」を平成21年度予算において創設する。その際、これまで道路特定財源が充てられていた道路整備費等の見直しにより財源を捻出する。
    また、地方道路整備臨時貸付金制度については、引き続き維持する。
  5. 既存高速道路ネットワークの有効活用・機能強化
    昨年12月の政府・与党合意「道路特定財源の見直しについて」に基づき、総額2.5兆円の債務承継を本年度末までに行い、地域の活性化、物流の効率化、都市部の深刻な渋滞の解消、地球温暖化対策等の政策課題に対応する観点からの高速道路料金の引下げ等を着実に実施する。
    なお、都市高速については、「生活対策」(平成20年10月30日新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)における重点的な引下げの後に、上限料金を抑えつつ、対距離料金制度を検討する。
  6. 一般財源化に伴う関係税制の税率のあり方
    道路特定財源の一般財源化に伴う関係税制の暫定税率分も含めた税率のあり方については、今後の税制抜本改革時に検討することとし、それまでの間、地球温暖化問題への国際的な取組み、地方の道路整備の必要性、国・地方の厳しい財政状況等を踏まえて、現行の税率水準を原則維持する。ただし、納税者の理解、景気及び環境対策という観点から、自動車関係諸税の負担を時限的に軽減する。
  7. 平成20年度予算における措置
    平成20年度予算において揮発油税収の減額補正が行われる場合には、これに伴い地方道路整備臨時交付金の減額補正も必要となるが、地方の道路整備や財政の状況に配慮し、この交付金の減額を行わないこととし、当初予算額どおり交付金を執行できるよう、法的措置を講ずることとする。

(附記)
地方交付税は予算編成過程で増額。

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