部会概要
 
第5回基本政策部会内容
日 時
平成14年5月13日(月) 16:00〜18:00 
場 所
国土交通省4階特別会議室
部 会 長
中村 英夫
武蔵工業大学教授
部会長代理
横島 庄治
高崎経済大学教授
委   員
越澤 明
北海道大学大学院教授
委   員
残間里江子
潟Lャンディッド・コミュニケーションズ゙代表取締役
委   員
白石 真澄
東洋大学助教授
委   員
家田 仁
東京大学大学院教授
委   員
 
中条 潮
慶應義塾大学教授
委   員
 
波頭 亮
鰍wEED代表取締役社長
委   員
 
リチャード・クー
竃村総合研究所主席研究員
       ○は出席した委員
外部有識者 熊坂 義裕 宮古市長
柏谷 増男 愛媛大学教授
 

第1回部会資料−2「基本政策部会の運営について(案)」に基づき、委員氏名は○○としています。
 
「安全を守る」「環境を保つ」をテーマに開催。

 第5回部会では、「安全を守る」ための道路政策のあり方についての白石委員からの発表、「環境を保つ」ための道路政策のあり方についての横島部会長代理からの発表がありました。また、地域の有識者として熊坂義裕氏(宮古市長)、柏谷増男氏(愛媛大学教授)よりご意見を伺い、それを受けて議論が行われました。

白石委員がテーマ「安全を守る」に沿って発表。

 「安全を守る」について議論するにあたり、白石委員(東洋大学助教授)より発表が行われました。白石委員発表では、今後の人口減少や少子高齢化を考慮すれば、「安全性の確保」「車中心から歩行者中心」「暮らしの基礎的サービスの享受」などを視野に入れた、道路・交通環境の創造が求められ、選択的な新規投資と既存ストックの質的向上が不可欠という認識のもと、道路に求められる基本政策として以下の項目が提案されました。
(1) 高齢者を含むすべての人が安全に歩ける道路環境
    (幅の広い歩道、歩行空間のバリアフリー化、既設歩道の改善 など)
(2) 歩行者や自転車の利用を優先した生活環境ゾーンの形成
    (外周を形成する幹線道路の円滑化、住宅地域内の通過交通の抑制 など)
(3) 安心して社会経済活動を営める道路インフラの確保
    (道路インフラのサービスレベルの維持・向上) このような提案のまとめとして、安全な道路・交通環境の創造が、人口減少社会における交流促進や活力ある高齢者のモビリティ向上につながると指摘されました。

横島部会長代理がテーマ「環境を保つ」に沿って発表。

 続いて、横島部会長代理(高崎経済大学教授)より発表が行われました。横島部会長代理発表では、「環境の改善・保全のため、道路行政としてどのような施策を実施すべきか。」という思考が重要であり、国民の意見に応えなくてはならないという認識が示され、環境重視の道路行政に向け、以下の提言がありました。
 1.国民と行政の意識改革
   ・責任の共有に向けた国民の意識改革
   ・責任の共有に向けた行政の意識改革
 2.新しい取組みへの挑戦
   ・環境対策に資する技術開発への取組み
   ・本格的な自動車交通量の抑制(TDM)
 3.行政機関の協働
   ・各行政分野の協働
   ・国と地方公共団体の協働

熊坂義裕氏、柏谷増男氏から地域の視点からのご意見の披露。

 宮古市長熊坂義裕氏より、市民とともに進める道づくりの取り組みとして、 宮古市道づくり検討会とその提言などについて発表が行われました。

  続いて、愛媛大学教授柏谷増男氏より発表が行われました。柏谷発表では、地方部の道路整備にあたり便益が小さいことを素直に認め、その上で地方の特殊性を考慮すべきとの指摘がありました。また、短期的には地方の道路整備に関する国の制度の改善、中・長期的には地方が実情に応じて責任を持って自主的に判断できる地方分権が必要、と主張しています。
  具体的には、以下のような点に留意すべきとの提案がありました。
<地方部の特殊性について>
 ・利用者一台あたりの便益額の大きさにも配慮すべき
 ・遠隔地住民の地方都市への交通に配慮すべき
 ・災害の多発する地域では通行規制という異常事態に対する評価をするべき
<制度的改善について>
 ・オーバースペックを止め現地の実情に合わせた柔軟な設計基準を適用すべき。
 ・様々な道路整備主体を調整すべき。

部会では、委員を中心に活発な議論を展開。
  • 「命を守る道路」というキーワードには感銘を受けた。費用便益分析の便益に入れるかどうかというより、それ以前の問題ではないか。
  • 「命を守る道路」とともに「世論の支持を得られる道路」という観点で、高齢者の問題とか、いい美容院に行きたいという問題をどう考えるのか。世論にもいろいろなものがあり、命の問題も含めて、プライオリティをどうつけていくかが問題ではないか。
  • 最も困難な地域から着手していくということも重要ではないか。
  • 道路の峻別が必要ということは異論のないところだと思うが、どうやって峻別するのかが大きな悩み。
  • 費用便益分析は、発展途上国では有益だが、日本のような成熟した国、地域ではあわない。古典的な費用便益分析ではなく、多目的な評価が必要ではないか。
  • 様々な観点から評価を行い点数化し事業採択の基準とすることも重要であるが、これらのプロセスや結果を公表し、透明性を高めることがより重要である。
  • 道路だけですべてを解決できるのか。救急医療の点では、例えばドイツはヘリコプターを導入して成功している。また、都市部へのアクセスについては不定期のバスを導入することによって、代替できるのではないか。こういった手段に道路財源を投入してもよいのではないか。地方の声をすべて道路で解決しようとした場合、財源の面から不可能になるのではないか。
  • 地方では、道路交通しか手段がなく、代替交通を考えていくのは困難。
  • 今後は「道路行政」ではなく、「交通管理行政」として考えなければいけなくなるのではないか。
  • 車というのは極めて便利な乗り物であり、特に地方において生活を楽しむためには不可欠なものである。今後の高齢化社会を考えた場合、活動する高齢者という観点から、車の利便性を高めるような方向を目指すべきではないか。
  • 車が便利なことは否定しないし、今後環境に配慮した車がでてくれば環境問題は解決されるかもしれない。しかし、事故と渋滞の問題は解決不可能。車の使い方、賢い使い分けを考えるべき。都市部では少し車を我慢すべきではないか。
  • 道路の峻別が重要だが、それをどうやってというのが大きな課題。また、TDMも重要だが、どうやって車を利用している人にあきらめさせるのか。現実的な方法はほとんどない。
  • 交通事故は減ったとの認識があるが、大きな間違い。死者数が減っただけで事故率は先進国の中でも極めて高い。交通安全は重要な問題。


次回の部会の進め方について合意。

次回の部会については、以下のように進めることが合意されました。
  • 中条委員、家田委員より、テーマ:「進め方を改革する」に関する提案が行われる予定。
 
 
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