第2回21世紀の国土・地域・社会と道路政策検討小委員会 議事概要



日時: 平成11年10月4日(月)18:00〜20:40
場所: 東條インペリアルパレス2階「千鳥の間」
議事: (1) 意見発表
    家田仁委員、玉川孝道委員、山内弘隆委員
    (2) フリートーキング
出席者: 森地茂委員長、家田仁委員、石田東生委員、幸田シャーミン委員、白石真澄委員、杉山雅洋委員、玉川孝道委員、橋元雅司委員、屋井鉄雄委員、山内弘隆委員、山根孟委員
意見発表及びフリートーキングにおける発言の概要は以下のとおり
  [意見発表]
   第一点としては、「使う道路行政」が重要。道路を整備する論理は議論されているが、つくられた道路が有効に活用されているかという点で、見る目が甘い。
 道路の容量をどのくらい有効に使っているかという指標を考えると、せっかくつくった道路を有効に活用していない。きちんと使っているかどうかを見られるようにすべき。
 道路情報のユーザーとの共有化という点では、道路にあるキロ程などがユーザーからよくわからないといった単純な情報についての問題がある。道路が好きになるような工夫はいくらでもありうる。
   第二点としては、「安全」をグレードアップして「安心の道路行政」ということが重要。
 電柱の存在は景観の問題と思われているが、通行時の障害・危険の問題や、災害時の危なさの問題がはるかに大きい。
 都道府県道、市町村道クラスの主たる問題は、質、レベルを含めた歩道の有無であり、分析、評価、目標設定が必要。ヘルメットを付けた小学生の通学風景はあってはならない。
 事故多発箇所をきちんと調べて本当に危険な箇所をナビや地図に入れる努力等も必要。
   第三点として、地方の幹線道路の整備理念という視点が重要。
 費用効果分析が実務の中に定着しつつあり、都会型の必要な道路の整備を正当化する論理として自信がついてきたが、地方における歩道つきの道路がほしいというニーズに応えきれない可能性がある。
 産業より生活の視点に重点を置いた論理と計画目標(高速道路の平均利用距離より少し短いトリップ)に持つべき。アクセス性が高くて、インターチェンジの間隔も短く、金銭的にもアクセス性が高いものが必要。
 生活が地方圏に定着すること(例えば、家族が週末に集まれる、高校生の子供を下宿させずに住むことができるなど)を整備の効果としてきちんと考えるべき。
 災害に対する道路のあり方について、施設面での対応だけでなく、災害発生後の通報システムなど管理側のシステムも含めて勉強の余地がある。
   第四点として連携の視点が重要。環境、事故、混雑といった外部経済効果の増大、規制緩和による効率化の要請などの背景から、競争に基礎を置いた連携の仕組みを持つ必要がある。やり方としては抽象論、一般論ではなく具体論が大事。
 道路と都市公共交通、土地利用、都市計画制度との連携について、例えば大規模施設の立地による交通へのインパクトのアセスメントなど、きちんとした制度づくりが必要。また、道路と文教、医療施設の配置はより密接に計画を持って行うべき。
 道路と都市公共交通について、路面電車、バスなど都市内の交通はユーザーにとってのパフォーマンスに大差はないが、インフラの技術的制度、事業の制度、運行に関する制度はばらばらで、ユーザーから見ると公平性上問題がある。
 バス停の屋根等は道路付属物として整備できるルールとなったが、規制緩和の中でバスの運行などについて、道路側も入って都市交通計画の中に位置付ける必要がある。
 公共交通機関と道路と連携する場合、道路機能の補助性と空間的一体性が要求されるが、道路の機能を確実に補助するであろうことが予測、評価され、道路として整備したほうが道路ユーザー全体にとってよいことであれば、必ずしも空間的に一体でなくても構わない。
 道路法の中の重要なコンセプトである「一般交通の用」という概念は、規制緩和により、バス事業者等も含むなどと解釈を考え直しても良いのではないか。
  [意見発表]
   空港、港湾の連結率は欧米の半分である。省庁統合もあり、社会資本のネットワーク化、特に道路とさまざまな交通機関とのネットワーク化を推進すべき。
   大分と北九州を結ぶ高規格道路ができて、大分から福岡県南の人が北九州の高度な病院へ救急で運ばれる率が2倍半に増えている。道路は日常的な生命維持装置として重要で生身のくらし、命と非常に結びついており、都市機能とのネットワーク論が重要。
   各地の様々な既成施設を高度利用できるよう道路行政を地域連携のパイプと考えていくべき。国土の多極化に向かって効率的な道路とネットワークづくり努力が求められる。
   人口減と高齢化が進むと車の保有台数は増える。ドアツードアの様々な暮らしの形もできるし、老齢者の車の活用率はますます高くなる。
   道の駅はヒット施策であり、ここから市民農園、安い民宿に引っ張っていくような方策など、情報と施設をうまくネットワーク化し、過疎地域の振興、都会の人の安らぎにつながるよう積極的に考えることも重要。
   高齢になっても帰る田舎がなく、都市が終の住み処とする人が増えてきた。稼ぎ場としての都市から、バリアフリーなど暮らしをして死んでいく場としての都市の道路行政を考えるべきであり、様々なもののネットワーク論を道路行政の中心に据えるべき。
   変わっていく都市、変わっていく我々の暮らしに合った中心街、道路のありよう全てを考え直すべき。
  [フリートーキング]
   歩道、歩道橋がこれからの社会には合わない。歩道幅を思いきって転換したり、ビルの中を使ったりして、バリアフリーを徹底的に進めるべき。
   九州の県庁所在都市間や、八代と熊本、太宰府と福岡といった中くらいの都市と県庁などは高速道路によりアクセスモビリティが高まって、産業、文化活動に量的に効いてきている。一方、人吉とえびのの間などには、集落はあるが、インターの間隔が離れており活用できない。このような部分のアクセスビリティを高めると道路資産の活用にもなり、くらしのパターンも向上するのではないか。
   料金が高く、負担になるので高速道路に乗らない人が多い。政策的に高速道路に乗せる方法があるのではないか。途中のインターを増やすより、中核都市のアクセスを良くするほうが、バランスのとれた都市構成が展望できる。
   高速道路整備の後発のデメリットをメリットに転換するためソフト面の地元対応が重要。
   東九州では延岡も含めて人口4、5万の都市の人口が減っている。高速道路整備が遅くなりすぎると衰退につながるのではないか。
 
[意見発表]
   道路政策を取り巻く環境について、経済環境の変化ということでは経済成長の鈍化、財政赤字、環境制約の高まりがある。過去にはない安定低成長ということを前提として我々は何ができるとプラスになるかを考えるべき。
   経済成長や豊かなくらしを維持するための構造改革をどのように支えていくかがインフラの仕事であり、それを見極める必要がある。ただ、技術革新は予測できないのでこれに応えるのはかなり難しいが、変化をしているんだという認識のもとに次の計画なり施策なりを考えなければならない。
   公共事業の有効需要創出、地域間の所得再配分、事後の地域経済の発展、国土構造の変化といった道路の整備効果のひとつひとつを見極めて、何が重要か、どれとどれを結び付けるかなどを考え直す時期にある。
   基本政策のトレンドとして、総合化が挙げられる。長い目で見れば、総合化の中で範囲の経済をいかに生かしていくかという議論になる。また、道路のネットワークをどう使うのか、様々なネットワークが一緒になることによる経済効果がいかに発揮されるのかも総合化のテーマである。
   また、二つ目のトレンドとして、意思決定プロセスの多様化、多段階化が考えられる。政策評価のなかで評価結果を上位の段階にフィードバックするループをつくっていくことが意思決定のプロセスを柔軟化させ、納得性、アカウンタビリティにつながる。
   行政における非常に多段階のプリンシパル・エージェント問題(委託者と受託者の持つ情報が異なるために生じる問題)を、意思決定を多様化することにより軽減するシステムが重要。
   費用負担と納得性の問題に関連し、パブリックインボルブメントはプリンシパル・エージェント問題を緩和する力がある。
   また、できたものをどのように評価するかという満足度の調査も重要で、具体的にそれを採り入れていくようなシステムは必要。
   特別会計は収入から需要量を測る有効な手段であり、費用と負担が結びついているので納得性が高い一方、財政が硬直するデメリットを持つ。政策の総合化が求められる一方、費用と負担の公平性が求められており、特定会計の論理付けが極めて重要。
  [フリートーキング]
   歩道の幅や渋滞時間の解消などの定量的な満足度(CS)以外に景観、地域性などの定性的な満足度の把握があるのではないか。
   例えば、TDMの協議会などボトムアップ、アイデアを汲み上げる仕組みが必要。
   CSとコスト負担の関係、どういう負担なら納得してもらえるかは非常に重要。都心にロードプライシングを導入する案に賛成が多くなっているなど、時代のニーズに合わせても多様性、幅広い議論があってもよい。
   安全、安心な歩道を考えるとき、自転車の扱いをどうするのか。
   道路行政と文教、医療その他はいっしょに考えるべきである。
   費用便益分析は理念としては良くできているが、前提として多くの仮定があり、相当な近似になっている。実務の経験に基づきながら、納得できるものに改善することが必要。ただし、地方の道路はこの論理だけで推し進めるべきではない。
   連携については、例えば計画のリンケージなど現実的な手法を考えることが重要。
   CSは、都市の人が持っている道路はいやなものだという考えを切り替えること、もっといい姿があることを納得してもらうことに役割がある。
   国民が行政に対して「いかがわしい」と考えており、専門家が機能していない。専門性を細かく切ってエンジニアがレベルアップし、なるほど専門家に聞いた方がよいと思われる仕組み、工夫が必要。
   固定情報の不足について、路線番号がよく分からないと言う話もある。
   道路は空気のようなもので、CSの理屈は議論されていなかった。良く考えると、道路は必要だし、まだ足りない、質が悪いということになるものであり、注意を喚起、必要性を強調することは重要。
   新しい負担のあり方として、一般的なことで全てをくくるのではなく、例えば自転車道というように目的をはっきりして国民の意向を募ってみると喜んで負担する人もいるのではないか。
   ミニマムパフォーマンス重視の整備をどのように考えるかは重要。生活の定着、家族の効用など本当の日常生活にとっての意味をカウントしないのは無責任である。
   都市における道路の不要論に対しては、現実に多くの人が不利益を被っていることをきちんと説明しうるアカウンタビリティを考える必要がある。
   少子高齢化社会に対応する施策として、広い歩道や緑化などの必要性が高まってくるが、燃料税との関係を説明するための議論をしておく必要がある。
   CSに関しては広報のあり方のようなものでとらえられて良いのではないか。


[本議事要旨は暫定版のため、今後修正の可能性があります。]





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