1) 検討体制・組織のメンバー

 Q2−1 取組を進めるためには、どのような体制がいいのか。

当該取組の計画の策定・実施に当たり協議・調整、協力が必要な関係部局、機関が検討の目的に応じて参画した体制とすることが、円滑に検討を進めるために必要。

 検討体制としては、庁内の検討体制と、外部の関係者も参画した検討体制(検討会、委員会等)の2種類がある。
当該取組の実施に当たり、協議・調整、協力が必要な関係部局、機関は、当初から情報を共有しておくことが、検討が円滑に進むポイントである。
 一方、関係者が増えるほど、利害の対立や責任の所在が不明確になることなど、マイナス面もあることから、検討の目的に応じて適切な主体をメンバーとすることが重要である。
 必ずしも組織的な検討体制を整えていない場合もあるが、その場合でも調査・分析に相当な力点がおかれていることに留意する必要がある。

■庁内の検討体制

 担当課に加え、目的に応じて必要な部局を入れ、全庁的な連携体制を構築することが重要である。また、協議・調整の場としての検討体制というより、企画立案を中心としたプロジェクトチームを設置している事例もある。

 組織の枠を超えたプロジェクトチームにより地域交通の問題を全庁的に検討

・京都府京丹後市では、総合計画の実現と、複雑多様化する行政需要に対応するため、様々な重要施策や行政課題について、調査研究、企画立案及び施策形成を行うことを目的に、既存の部課等組織の枠を超えたプロジェクトチームを設置した。
・プロジェクトチームのひとつに「新交通体系構築」があり、同チームでは、通院、通学その他福祉増進及び観光客の利用拡大等に向けた路線バス、市営バスその他交通システムのあり方が検討されている。
・チームのメンバーは、バスを所管する市民課のほか、子育て支援、高齢者福祉、観光振興、商工振興、教育総務、総合戦略など多様な構成となっている。
・プロジェクトチーム構成員の所属長は、事務分掌の配分をはじめ、必要な配慮を行うことや、同僚職員も、プロジェクトチームの職務遂行に積極的に協力することが明確化されているほか、市長も財政部局に対し、プロジェクトチームの検討結果に対する予算上の配慮を指示している。
・「200円上限バス」で脚光を浴びている京丹後市の取組の背景には、地域のことを熟知している自治体の職員がプロ意識を持って頑張ることができる環境があったことも大きい。
・さらに、公共交通を所管していた市の生活環境部局(市民課)から、平成21年4月からは企画部局(企画総務部企画政策課)に移管替えし、公共交通施策でまちの活性化を図っていくことを強く明示させることとなった。市町村合併(平成16年4月)以後、市役所内部の専門性を継続・向上させるため、担当者を固定(6年目突入)する。


■外部機関も加えた検討体制

 本調査で実施したアンケート結果を見ると、検討体制のメンバー(当該市区町村の部署を除く)として最も回答が多かったのは、交通事業者であり、次いで地域住民、学識経験者、国(地方運輸局)、都道府県(交通関係部署)、地元商工会、福祉・障害団体、その他市民団体、警察、都道府県(土木関係部署)、学校関係団体の順となっている。こうした主体が検討体制のメンバーの候補になると考えられる。
 交通事業者は、地域交通の現状の把握や、既存の交通サービスとの調整、交通サービスのプロとしての提案などの役割が期待される。
 地域住民は、交通サービスのユーザーであることから、ニーズに合致した運行計画を立案する上で重要であるとともに、取組を実現する上では、住民の理解も不可欠である。
 学識経験者は、特定の利害に捉われず、利害関係者に中立的な立場で関われる面があり、また、より広く、理論的な観点から考察し、議論を主導する役割が期待できる。
 当該取組の実施に当たり、協議・調整、協力が必要な主体としては、警察や道路管理者も必要に応じ、メンバーとすることが重要である。
 また、取組の背景となる課題に応じ、地元商工会や、福祉・障害団体、その他市民団体、学校関係団体など多様な主体と連携できる体制とすることも重要である。
 なお、検討体制を設置できない場合でも、専門家や住民、関係者から意見を聴く機会を設けるほか、調査・分析をしっかり行うことなども考えられる。


 Q2−2 交通事業者に参加してもらいたいが、どうすればいいか。

日常から交通事業者との接点を持っておくことが重要。
制度的な枠組みとしては、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく法定協議会などを活用。

 本来的には日常から交通事業者との接点を持っておくことが重要である。自治体の職員と交通事業者が定期的に情報交換の場を開いたり、地域交通の問題について議論する場を設定したりするなどして問題意識を共有するなどの工夫を行っている事例がある(Q2−10参照)。
 また、交通事業者にとっても、地域交通の検討の場に参画することにより、事業者単独ではできない利用者の実態調査や住民のニーズ調査の成果を得ることができ、ビジネスチャンスにつながる可能性もある。このようなメリットを交通事業者に提示することも重要である。
 制度的な枠組みとしては、「道路運送法」に基づく地域公共交通会議や「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく法定協議会などを活用することが考えられる。このうち、特に後者については、市町村から通知を受けたバス事業者などの関係交通事業者等は、正当な理由がある場合を除き、協議に応じなければならないといった協議会への参加要請応諾義務がある。



 Q2−3 学識経験者には、参加してもらった方が良いか。

学識経験者は、専門的、中立的な立場から議論を主導する役割が期待できる。

 学識経験者は、特定の利害に捉われず、利害関係者に中立的な立場で関われる面があるほか、より広く、理論的な観点から考察し、議論を主導する役割が期待できる。
 また、学識経験者は、キーパーソンとして、取組の実現をけん引する役割も期待できる。自治体内部や地域の関係者にキーパーソンが存在しない場合の有効な手法と言える。(キーパーソンについてはQ2−13も参照のこと)。
 さらに、共同研究ということで参画してもらうことができれば、データの取得・分析の助言を得ることも期待できる。



 Q2−4 計画技術者には、参加してもらった方が良いか。

計画技術のうち、経営に関するものは交通事業者、法制度に関するものは運輸局、調査・分析等はコンサルタント等それぞれの得意分野に応じて活用することが有効。

 計画技術とは、計画を作成するために必要な知見を整理し、体系化したものである。そのうち、経営に関するものは交通事業者、法制度に関するものは運輸局、調査・分析や需要に応じたルート・ダイヤの作成はコンサルタント等、それぞれ得意分野がある。
 それぞれの得意分野に応じた活用を図ることにより、効率的に検討を進めることが可能となる。また、自治体の担当者が、計画技術を身につける上でも、既に技術をもっている人から教えてもらうことが早道である。
 このため、検討体制を設置する際には、交通事業者、運輸局に参加してもらうことが望ましい。また、調査、分析、資料の取りまとめ等については、コンサルタントに委託し活用することができる。



2) 体制・組織の運営

 Q2−5 検討の体制・組織の運営上、注意すべきことは何か。


関係者で本音の議論ができるよう信頼関係を構築すること。
特に自治体は、コーディネーターとして議論をけん引する役割を意識すること。
関係主体の役割を明確にして議論を進めること。


 形だけの検討の場、協議の場では意味がないため、関係者が本音で議論ができるよう、関係者との間で信頼関係を構築することに留意する必要がある。
 特に、自治体は、検討の初期の段階において、コーディネーターとして議論をけん引する役割が求められる。
 また、地域交通の取組の実現には、多様な主体が関与するため、検討の成果が「絵に描いた餅」とならないためにも、検討体制・組織の運営にあたっては、関係主体の役割を明らかにして議論を進めることが重要である。


 Q2−6 どのような内容を議論すればよいのか。

議論の入り口で、関係者が共有できる大きなテーマで議論をはじめること。

 関係者間で共通の目的意識を持つことが重要であり、そのためにも議論の入り口で、問題意識を共有することが重要である。
 いきなり交通の議論からはじめるのではなく、地域の活性化や住民の利便性向上といった大所高所のところで問題を共有することができれば、多少の利害の違いは乗り越えることができる。


 地域の活性化という大きなテーマでの議論が、利害の違いを乗り越える

・平成17年11月に京都府を事務局とした「分かりやすく、使いやすい公共交通ネットワーク実現会議(丹後地域)」(以下「実現会議」)が設置された。
・メンバーは、関係自治体、交通事業者、利用者代表、経済団体、商工観光団体、旅行会社、有識者などから構成されている。
・住民にとってより良い「生活交通」と観光を一層振興する「交通」の2つの視点から議論をはじめたほか、実現会議のメンバーで現地調査を行うなど、問題意識の共有化に留意している。
・この結果、それぞれの主体が横の連携を強化していこうという機運が高まり、いわゆる提案型ではない「改善実行計画」を関係者の協働により作成し、できるところから実行に移している。
・地域の活性化のために何が必要か、地域住民がどうすれば喜んでくれるかという思いは、いずれの主体も同じなので、多少の違いはあったとしても大きなところで譲り合えることができた。
(京都府・京丹後市・北近畿タンゴ鉄道(京都府))


 Q2−7 どのような手順で進めればいいのか。

関係者が共有できるテーマ・課題を議論の中心に据えること。
関係者の共同作業による実態把握(現地調査)などにより問題意識を「体感」すること。
その上で、改善点を洗い出し、計画を策定し、できるところから実施すること。
実施したら終わりではなく、関係者が一体となってPDCAサイクルにより改善を継続すること。

 利用者の増加といった近視眼的な議論からはじめるのではなく、地域の活性化や地域住民の利便性向上といった関係者が問題意識を共有できるテーマを設定することが重要である。
 その上で、関係者間で問題意識を醸成する工夫としては、関係者の共同作業による地域交通の現地調査や、膝をつきあわせての徹底した議論など、問題意識を体感・共有することが不可欠である。
 このような過程を経て、ネットワーク全体のなかで、個々の交通モードの改善点を洗い出し、優先順位をつけて、できるところから連携して実施していくことが重要である。
 また、計画の策定や改善事業の着手によって、検討を終えるのではなく、取組実施後のフォローアップを行い、その結果を関係者が共有するなど、関係者が一体となってPDCAサイクルにより改善を継続する取組へと定着させることが重要である。



3) 合意形成・調整

 Q2−8 合意形成や調整を行う必要がある対象 (主体) は何か。


交通事業者、住民、交通管理者、道路管理者、国・県等。





 Q2−9 合意形成や調整を進めるに当たって、それぞれの主体に求められるものは何か。

自治体、交通事業者、住民等の各主体が地域交通を支えているという自覚。

 地域交通の再生には、自治体、交通事業者、住民等すべての関係者の協力が不可欠である。各主体が地域交通を支えているという自覚を持つことが重要である。特に、「自分のところだけ良ければ」という発想ではうまくいかない。



 Q2−10 合意形成や調整を進めるに当たって留意すべきこと、調整を円滑に進めるためのコツは何か。

覚悟や率先行動、利害が異なる主体との課題意識の共有、調整相手との思惑の一致、自治体のコーディネイト機能の発揮、データに基づく説得、交通事業者の経営体力への配慮。

 公共交通の利便性向上に取り組んでいる自治体等の担当者が、関係者(許認可権者を含む)の合意形成・調整の局面でぶつかった「壁」を、どのようにして乗り越えたのかを見ると、事業主体としての覚悟や率先行動により関係者の理解を得た事例、利害が異なる主体と課題(取組の必要性)を共有するための工夫を行った事例、当該取組が関係者の利益にもなることを説明するなど、思惑を一致させるための工夫を行った事例、利害の対立する関係者の間に自治体が入って調整力を発揮した事例、客観的なデータの提示を通じて関係者の理解を得た事例がある。


 自治体の覚悟や率先行動が、相手の意識を変える

・JR高山本線の増発社会実験の実施にあたっては、前例がないということで、当初、鉄道事業者との調整が課題となった。しかし、市がまちづくりの観点から責任をもって取り組む事業であることがJR西日本に理解され実現した。(富山市)
・「上限200円バス」の導入に当たり、近畿運輸局は、これまで前例がないこともあって、当初、調整が課題となった。近畿運輸局は、値下げで赤字となった分をどうするのかと言っていたが、市が負担することを明確に伝え、市の覚悟を確認した上で了解した。(京都府京丹後市)


 利害が異なる主体も問題意識の共有化を通じてお互いの理解が深まる

・バス事業者と一緒に、バス路線を一つ一つスクリーンに映して、「この路線がなぜ必要なのか」、「なぜこのようなルートになっているのか」、「なぜこのようなダイヤになっているのか」を、全便チェックした。この過程において、自治体もバス路線のことがわかるようになり、何よりも自治体とバス事業者との間の信頼関係が深まった。(京都府京丹後市)
・松山市の交通担当者と伊予鉄道社員は、若手が中心となって、それぞれが持ち回りで講師を担当する勉強会を月に1回程度、自主的に開催するなど、強い連携が図られていった。(松山市)


 取組が調整相手の利益にもなることを説明するなど、思惑を一致させる

・富山市では、路面への軌道の敷設にあたり、当初、警察との調整が課題となったが、ライトレール化により自動車からの転換が生じ、結果として交通事故が減るということを示すことで説得した。途中から警察は協力的になった。


 自治体がコーディネイトして利害の異なる交通事業者の妥協点を見出す

・岩手県滝沢村では、鉄道とバスの異業者間の乗継切符の導入にあたり、鉄道事業者とバス事業者との間で思惑が異なっていたため、ある程度の妥協点が見つかるまで、鉄道事業者とバス事業者を検討会議(実務者協議)に同席させなかった。異業者間の取りまとめは、村で行った。


  データによる裏づけのある説得が効果的

・バス路線再編前に、需要予測調査を実施し、それをバス会社に提示した。また、TDMの補助金なども考慮して、各バス事業者がどのくらい運行するのかを決めていった。(埼玉県三郷市)
・交通事業者にとっては、バスの運賃を半額にした場合、利用者が2倍にならないと収支が合わないこととなる。金沢市は、運賃の値下げ後に利用者が増えない場合、交通事業者が運賃を元に戻しても構わないことを条件とした協定を締結する方法を考えた。しかし、交通事業者にとって、一度値下げした運賃を元に戻す(値上げする)ことは、利用者に理解が得られにくいことであるため、金沢市は、利用者のニーズ等のアンケート調査を実施し、運賃を半額にすれば利用者が2倍以上増加するという調査結果を提示したところ、交通事業者から了解を得ることができた。(金沢市)


  交通事業者側の費用負担にこだわり過ぎると、結果として取り組みが頓挫することもある

・大分市では、モビリティマネジメントの取り組みを進めるに当たり、バス事業者の直接的な費用負担は求めなかった。その代わりに人的な面での協力は要請した。
・行政的・社会的にメリットがある取り組みでも、バス事業者にとっては必ずしも企業経営上魅力的なものとは限らず、交通事業者側の費用負担にこだわり過ぎると、結果として取り組みが進まないこともある。


  鉄道沿線の複数の自治体が、鉄道活性化のための一元的な窓口を設置

・北勢線(三重県)は、近畿日本鉄道が経営していたが、累積赤字を理由に近鉄が廃止の意向を打ち出したため、沿線自治体の支援により三岐鉄道が経営を継承した。
・沿線自治体は、北勢線担当の専門部署である「北勢線対策室」を設置し、そこに沿線自治体の職員が常駐している。
・専門かつ常設の部署があることは、鉄道事業者にとっても自治体との円滑な協議・調整や、信頼関係を確立する上で効果的な取組であると評価されている。(三岐鉄道(三重県))



 Q2−11 民間の交通事業者の協力・支援を仰ぎたい。

地域の熱意と支援(負担)を示し、実行することが、民間の交通事業者の協力・支援を得るための条件。

 近年、既存の交通事業者が撤退を表明した鉄道やバス路線の再生に取り組んでいる交通事業者も現れている。これらの交通事業者は、利便性の向上に向けたノウハウをもっている。また、地域における公共交通の役割を重視しており、単に収支だけで事業の可否を判断しない傾向がある。
 これらの交通事業者は、地域の熱意と支援(負担)を、再生を請け負うための条件としている。自治体と地域住民がまとまれば、交通サービスのプロである交通事業者の協力・支援を仰ぐこともできる。





 Q2−12 住民の理解を得るために留意すべきこと、調整を円滑に進めるためのコツは何か。

地域交通の維持・拡充の社会的な便益が、地域全体に帰属することを説明。

 単に赤字を税金で補填するという説明ではなく、地域交通の維持・拡充の社会的な便益が、地域全体に帰属することを、データに基づいて説明することで、地域住民の理解を深めることができる。


  市民が選ぶ10大ニュースの1位に選ばれたのは「路線バスの再生」

・京都府京丹後市では、路線バスの運賃の上限を1,150円から200円としたことや様々な利便性向上を図ることで市民の満足度が大きく変わった。
・市内高校生へのアンケートでは、運賃を値下げる前は692人が「運賃が高い」と回答していたが、利便性向上策後には60人に激減した。
・また、満足度の調査結果(高校生)で、「高校進学時に高校の選択の幅が広がった」28人、「マイカー通学からバス通学になり保護者の負担が減った」88人、「まちづくりの発展への期待が膨らみ、地域で誇れるバスになった」85人、「こづかいが増えた」17人、などがある。
・さらに、マイカーからバス利用へ転換する高齢者が出てきたことや、貸切バスではなく路線バスを利用した遠足や地域行事を行なう団体等が増えてきている。
・これらを象徴する事例として、市民の投票により決定する市の年間10大ニュースで、「200上限バス」が、2007年は第1位に、2008年は第2位に選ばれるなど、地域交通の維持・拡充が、地域全体に大きなインパクトを与えたことを示している。


  市長が108回にも及ぶタウンミーティングを開催

・富山市が進めている「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」では、公共交通活性化の第一弾として富山ライトレール開業、第二弾としてJR高山本線の増発社会実験を行っている。
・特に富山ライトレールでは沿線の住民だけでなく、全市的な市民からの支持を得ていることに特徴がある。
・具体的には、富山ライトレールの開業後に実施したアンケートで、市域全域で8割以上の市民が富山ライトレールを評価すると回答している。
・この背景には、市長が108回(H17〜H19)にも及ぶタウンミーティングを市内各地で開催し、
@このままでは車を使えない市民にとって極めて生活しづらい街になること
A市街地の拡散は都市管理の行政コストの上昇につながること
B都心の空洞化は都市全体の活力低下と魅力の喪失につながること
を、客観的なデータを用いて説明するとともに、公共交通の活性化の全体像を示し、富山ライトレールやJR高山本線だけでは終わらないことを市民に示していることがある。


  地域交通再生の効果は、交通以外の効果もあることを力説

・「上限200円バス」の導入に際しては、公共交通を利用しない市民にも取組のメリットを提示することが重要であると考え、行政コストの削減につながることを打ち出した。また、仮に財政支出が抑えられなかったとしても、現状よりも利用者が増えれば、それは活きた補助金の支出になるという捉え方をした。即ち、従来の700円×2人ではなく、7人×200円の発想であり、住民福祉の増進を図る施策として位置付けた。(京都府京丹後市)
・鉄道は「住民の足」であるとともに、環境や教育にも重要な役割を果たすことを市民に訴え、公的資金を投入することの理解を得た。(長野県上田市)


  住民はキチンと話せば、納得する

・地域住民への説明会を開催すると、コミュニティバスの導入に対する要望は多いが、幹(幹線)を育てることなく、末端(支線)だけを育てても、しっかりとしたものができない。住民に対しては、幹線を動脈に、枝線を毛細血管に例えて、「コミュニティバスについては、幹線がしっかり育つまで待ってください」と説明し、住民の理解に努めている。(京都府京丹後市)
・住民が主体となったバス制度を創設するにあたり、地元との意見交換会で、バス交通の維持には住民参画が必要である旨を説明したが、一部の住民からは、「住民におしつけることなく、市の方でバス交通の面倒をみるべきだ」と言われた。そこで、四日市の住民バスの事例をビデオで住民に見せたところ、住民主体でもできることを理解したようで、それ以降、市でバスの面倒を見てほしいといわれなくなった。(新潟市)



4) キーパーソン

 Q2−13 キーパーソンは必要か。また、キーパーソンに求められる役割は何か。


利害が対立しやすい取組については、キーパーソンがいると有効。

 本調査で実施したアンケート結果を見ると、取組による期待以上の効果を得ている事例については、キーパーソンがいると回答した割合が高い。
 一方、特にキーパーソンはいないとする事例も相当数あることから、必ずしもキーパーソンが不可欠であるとは言えない。
 ただし、キーパーソンが果たした役割について見ると、合意形成・意見調整が突出しており、利害が対立しやすい取組については、キーパーソンがいると円滑に進みやすいと言える。
 また、キーパーソンの属性としては、学識経験者が最も多く、次いで自治体関係者の順となっており、庁内等にキーパーソンとなるべき人物が見当たらない場合は、学識経験者等外部の人材を活用することも有効である。