<はじめに>

 地域のモビリティ(移動の利便性)の確保は、一人一人のアクティビティ(活動の質と量)を向上・拡大し、交流と連携を活性化することにより、「自立的な地域の形成」にもつながります。これは、国土形成計画の全国計画や広域地方計画においても基本的かつ重要な要素となります。

 このような認識の下、平成19年度には、各広域ブロックで進められている広域地方計画の検討や策定後の推進等を支援するため、地域が総合的な交通体系の構築によるモビリティ確保に向けた取組を進める際の参考となる着眼点や留意点等について、有識者等による勉強会で検討・とりまとめた成果を、「地域の自立的発展のためのモビリティ確保に向けた検討の手引き」(以下「手引き」)として編集し、地方自治体等に配布しました。

 平成20年度は、平成19年度の成果をさらに掘り下げ、実際に取組を進める際の具体的な進め方や道筋など、地域のモビリティ確保に向けた施策や取組を効果的に計画・実施するための「知恵」を、先進的に取り組んでいる地方自治体や交通事業者、NPO等(以下、「地方自治体等」)へのアンケートやヒアリング※により抽出し、主に陸上の公共交通分野について「知恵袋」として取りまとめを試みました。本書は、その成果です。

 これまで、地方自治体等の担当者等の努力により幾多の取組が実施されてきました。その結果、期待通りの結果が出たものもあれば、残念ながらそうでなかったものもあります。これは、成功している事例のやり方をただ真似ても成功するとは限らないことを示しています。
 もとより、モビリティの確保に限らず地域づくりの施策は、それぞれの地域の実情に合わせて講じなければならず、「答え」は一つではありません。
 従って、本書で示す内容も、普遍的に利用が可能な「正解」では無いことに注意が必要です。
 但し、それぞれの地域での試行錯誤、創意工夫によって生み出された方法は、その成果のみならず成果にたどり着くまでのプロセスも含めて、これから取組を進めようとする地域の担当者にとって参考となる情報であると考えられます。
 本書に取りまとめた「知恵」や、これまでに蓄積された知見等を体系化した「計画技術」を参照することにより、これまで知識や情報が極めて少ない状態から始めなければならなかった状況に比べて、より効率的に検討などを進めることが可能となり、取組を進める地方自治体等で担当されている皆様の負担の軽減につながることを期待しています。
 また、本書をきっかけとして、地域の組織・担当者同士による“横のつながり(ネットワーク)”ができ、情報(知恵)の交換が活発になることを期待しています。

〜地域のモビリティ(移動の利便性)をどのようにしていくべきか、お困りの皆様へ〜

本書が、全国で地域のモビリティ確保に向けた施策や取組を進めようとする担当者の方々にとって有用な情報となれば、幸いです。

※アンケート、ヒアリングにご協力頂いた機関は、以下に記載しています。


本書の作成にあたっては、全国160件の事例の実施機関に対するアンケート、38機関に対するヒアリングを実施し、取組の経緯や創意工夫により生み出した「知恵」等の貴重な情報を得るとともに、学識経験者等による勉強会を設置してご指導・助言を頂きました。ご協力を頂いた皆様に、ここに謝意を表します。

◇ご協力頂いた機関、学識経験者

アンケート:160件の事例について、147機関(地方自治体、交通事業者、NPO等)
      に郵送により送付。うち130件・123機関より回答

ヒアリング:38機関を対象に実施。
      【地方自治体】(22機関)
       青森市、岩手県滝沢村、福島県北塩原村※、茨城県土浦市、龍ヶ崎市、
       埼玉県三郷市、東京都台東区、新潟市※、富山市、富山県南砺市、金沢市、
       長野県上田市※、東御市、木曽町、愛知県三好町、京都府、京都府綾部市、
       京丹後市、松江市、松山市、大分市、大分県宇佐市
       ※北塩原村は磐梯東都バス鰍ノも実施
        新潟市は、江南区、茅野山・早通地区生活交通協議会にも実施
        上田市は、上田電鉄鰍ノも実施
      【交通事業者】(13機関)
       秋北バス梶A岩手県交通梶A磐梯東都バス梶Aイーグルバス梶A
       上田電鉄梶A万葉線梶A三岐鉄道梶A叶_戸電鉄、北近畿タンゴ鉄道梶A
       和歌山電鐵梶A両備ホールディングス梶A樺国バス、高松琴平電気鉄道
      【NPO法人等】(2機関)
       NPO法人生活バス四日市、茅野山・早通生活交通協議会

学識経験者:岩崎 美紀子 筑波大学大学院 教授 
      喜多 秀行  神戸大学 教授 
      田村 亨   室蘭工業大学 教授  
      寺部 慎太郎 東京理科大学 准教授