国土交通省
 国土審議会調査改革部会
 第7回地域の自立・安定小委員会・議事概要

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  1. 日時
     平成15年11月7日(金)10:00〜12:00

  2. 場所
     中央合同庁舎3号館4階特別会議室

  3. 出席委員(50音順)
     池上委員、江崎委員、大西委員長、岡部委員、菅沼委員、古川委員、柳川委員

  4. 議事
    (1)開会
    (2)1地域ブロックの自立と拠点の形成について
        1.拠点都市圏の形成について
        2.産業集積拠点の形成について
        事務局より説明後、議論。
       2生活圏域レベルの広域的な対応(その2)
        事務局より説明後、議論。
       3地域の自立・安定小委員会中間報告(素案)
        事務局より説明後、議論。
    (3)その他
    (4)閉会

  5. 主な発言内容(順不同)
    (1)地域ブロックの自立と拠点の形成について
    • 拠点には、規模がある程度働いて都市圏を形成する核となり集積しているところと、規模は小さいが質が高いため集積しているところがあり、2つの角度から、拠点都市圏と産業集積拠点を考えるべきである。
    • 地域において雇用を与える産業は1グローバル産業、2小さくても強い地場産業3生活基盤産業の3層の構造があり、ここでの主題は2地元産業をより強くすることによって地域ブロックの自立を高めていくことであるが、その土台となる域内での生活基盤産業を確保しておけば、安心して暮らせる地域圏が形成され、より産業の育成に取り組める。
    • 国のレベルでの公共政策としては、地域の雇用の供給や地域の経済循環に安定的に貢献している生活基盤産業が地域で循環していることを地域ブロックの1つの要件として重視すべきである。このため、雇用の面とリンクさせ、生活を捉え、地域ブロックの自立を考える視点が欲しい。
    • 拠点の形成は製造業の立地が中心であったが、製造業の空洞化は今後も続き、サービス関係産業により地域の自立安定を図るべきである。
    • 現在は、生活基盤産業がワンセットそろっている生活圏域が広域化している。
    • 対面で受けるサービスについては、インフラの整備により、かつての自立的都市圏の範囲より広域的に受けられるようなっている。
    • 距離の概念が昔に比べ変化している。産業やサービスの種類により距離の概念が違うため、それにあった集積の概念が必要である。
    • 生活基盤産業は、雇用を確保したり、サービスを提供したり重要であるが、そのエリア内で両方を供給できない場合もあり、雇用の部分は隣のエリアで確保する等地域間のネットワークについても考えなければならない。
    • 資料3−2のP1の図が報告書のポイントとなる。その中で「ほどよいまち」が条件不利地域になるのか自立的になるのかによって、捉え方がかわってくる。
    • 4全総にも、ブロックを超えた連携としてインターブロック計画があった。                    
    • 地域ブロックの人口を1000万人規模と考えた場合、成長の極となるような産業が必要不可欠であり、それにより日本経済全体の牽引が図られるものである。
    • 成長の極となる産業が波及効果を及ぼすためには、1000万人規模においては国際競争力の高い企業を創っていく必要があり、そのためには、国の方策として規制緩和等で国際的な魅力を向上する必要がある。 
    • 古川町は交流人口が多いため、交流産業が地域の雇用を生み出している。
    • 条件不利地域のなかでも、交流人口が多いことや観光資源があること等の元気のいいまちとして捉えることもでき、従来型の指標ではなく、違う指標から整理する必要がある。
    • 都市経済学、経済地理学の観点からはある程度の集積は成長の大きなキーとなるため、産業集積拠点のコアを創ることは今後の地域経済の発展にとっても重要である。そのため、国が直接的に動かすのではなく、地域の特徴を活かすためのモデルケースを提示するやり方も重要である。
    • 集積のメリットは知的資本が各地域のなかにストックされていくことが重要であり、このため、従来の工場誘致とは違う発想を変えた産業集積拠点を形成することが重要である。
    • 日本は知的資本が一極集中しているが、ドイツの場合は全国各地に国営の研究所があり、そこで、大学と企業が連携しているため、拠点が分散されて形成されている。
    • 従来、国土計画は地方の拠点を重視してきたが、4全総では東京礼賛の方向に走った部分もある。このため、全国的な拠点の数と拠点の中での構成がポイントとなる。    

    (2)生活圏域レベルの広域的な対応(その2)

    • 古川町が入る飛騨圏域の人口は15万人で岐阜県の面積の5割を占めている。  これからは富山圏域とのつながりが強くなっていく。
    • 仮に生活圏域に線を引いた場合、交通、通信の発達や買い物行動等需要側の行動も広がりにより、定住圏より圏域数は少なくなる。規模が広がっていることは生活基盤産業が充足される圏域が広がっていることである。
    • 定住圏の時とくらべて、生活圏域は数も減り、広がっているがこのような量的に面に加え、質的にも変わってきている。定住圏は中心都市が1つあって、排他的な圏域があり、皆、中心都市に依存していたが、生活圏域で中心になるのは生活者一人一人であり、それがオーバーラップしている。そのため、圏域の1つの中心都市ではなく、オーバーラップしている部分にある程度の吸引力のある核があることが生活の多様性に結びつき、重要である。
    • 生活圏域について、都市の間で機能分担をしている場合、1の都市が倒れた場合、その他の都市が共倒れしてしまう危険性があり、中心となる都市を育てていかないと圏域全体が大都市に従属してしまう。
    • 生活圏域を固定的に考えるのではなく、多様化に対応することは重要な視点である。現在は、エリアの概念が変化し、階層的にバラエティをもつようになってきているため、計画をつくってエリアの線を引くことはは難しくなってきている。このため、現実の多様性の変化に対応して、線引きを後追いできめることも重要な発想である。
    • 過疎化に対応して、それぞれの補完性を保つことについては、最初から理想的な都市をつくるのではなく、都市の中の現実の動きに対応して、アレンジしていくような柔軟な発想による圏域の設定も必要である。
    • 人の行動については、ウィークデイは住んでいる市ですごし、週末は大都市に行く等生活圏が1週間の中でわかれるところと1週間を通して生活圏が保たれいるところと階差ができているため、同じ生活圏として括れず、複合的になってきている。
    • 海に面している県の県庁所在地は海岸沿いにあることとが多いため、山間地は県境になっていることが多い。このため、国土計画としての生活圏域と行政区分はずれており、生活圏のための施策を講じるときに、どこの県が行うかが問題となる。道州性の話になるが、現実には政策的には多様なフレキシビリティが必要となってくる。
    • 地方分権が進むと、県を超えた連携が増え、また、市場が決める面が増えれば、行政区分は関係なくなってしまう。
    • 人口減少地域をいかに自立させるかは規制緩和が重要である。現在は市町村合併の動きが活発だが、次は道州制に移行していき、県を越えた圏域の問題も解決する。
    • これからは地域の特徴を活かしたまちづくりが重要であり、そのための知恵を出した地域には支援が必要である。
    • 国土計画は県境意識を低くして、生活圏で将来の姿を想定し、インフラ整備を考えていく必要がある。
    • ヨーロッパでは国境を越えたリージョンがあり、大きい文化圏にはさまれた小さな文化圏はたくさんの知恵が蓄積されている。EUレベルの施策としては、境界地域に空間計画の重点をおき、境界地域のインフラ整備を行い国境を越えた不連続を解消している。このため、日本においても、地方分権が進めば、国の役割としては県境地域を中心に考える必要がある。

    (3)地域の自立・安定小委員会中間報告(素案)

    • 今回の中間報告書については、もっとポイントを絞るべきである。例えば現状と課題の中の「成熟する経済社会のトレンド」については、グローバル化、情報化、環境対応が21世紀の生活、社会、産業に最も影響を及ぼすファクターであり、それをファクターとして国土計画として地域の自立・安定をどうすべきかを提案として今後の方向性を示すべきである。
    • 今後の方向性については、資料3−1にあるとおり、地域ブロックの拠点の形成については、「選択と集中」により、より生産性の高い土地に重点的な投資をし、それにより富が生産されたら、それを生活圏に波及させていくプッシュ型、ポジティブ型の考え方がでているが、中間報告では従来どおりの生活圏と産業経済を育成させることとのバランス論になってしまっており、国土計画としての最も重視する部分が薄まってしまっている。もう少し明確な主張のあるものにするべきである。その際、「選択と集中」の考え方は地域の切り捨て論にもとられる可能性もあるため、拠点の成長により、周辺地域を牽引することを補足するべきである。
    • 今までの国土計画はグロースポールセオリーに則って、新産都市のように地域の中で可能性のある地域に集中投資をして、波及効果を及ぼしてきたが、今日ではインフラの整備により可能性のある地域が増えてきており、また、成長の核となる産業も多様になってきている。
    • 「ほどよいまち」については否定的な用語にとらえられてしまう。それぞれの地域は目標をもって活動をしているが、今後、人口減少等により突出した成長は見込めないため、ほどよさの積極的な意味を整理する必要がある。例えば、テクノポリスのように生活面と産業面のバランスを取ることは重要であり、バランスをとれば人間の満足度は高まり、ほどよさにつながり、ほどよさの積極的、今日的な意味を書き込めば、語感からくる誤解は防げる。
    • 中間報告には環境という視点による緑地や自然環境の保全が足りないため、都市と郊外のスポット当て方のバランスが取れていない。ここでは情報化により、産業・生活スタイルをかえていくという視点が強いが、その情報化により、グローバル化という世界的に交流していくことがもう1つのファクターであり、日本としてはサスティーナブル・ディベロップメントの牽引者として環境を考える必要がある。その視点があれば、小さい都市が地域において必然性、重要性があることに帰着される。
    • 中間報告は新たな国土計画の出発点となるため、議論を呼ぶ表現を入れ込んだ方がよい。
    • 国際的や国際性という言葉はアメリカ追従型に念頭がおかれているため、日本の伝統的、独自の文化を活かしてものをベースして国際的な展開という視点が必要である。
    • 選択と集中の考え方は高度成長期からとられていた政策であるが、現在は転換期にきており、集中投資をしてもまわりに波及効果が期待できるかは疑問である。そのため、地域全体で下から集中を要求し、地域全体を支える拠点を押し上げ、それが再び地域に波及していく循環をつくりだすような発想の転換が必要である。

(速報のため事後修正の可能性あり)


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