国土交通省
 国土審議会調査改革部会
 第8回地域の自立・安定小委員会・議事概要

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  1. 日時
     平成15年11月21日(金)18:00〜20:00

  2. 場所
     中央合同庁舎3号館11階特別会議室

  3. 出席委員(50音順)
     荒井委員、池上委員、江崎委員、大西委員長、岡部委員、菅沼委員、古川委員、柳川委員

  4. 議事
     (1)地域の自立・安定小委員会中間報告(案)
     (2)その他

  5. 主な発言内容(順不同。矢印は事務局の発言。)
    • 地域ブロックがどのようなものかわかりづらい。具体的な姿をどのように表現するのか議論が必要である。
    • 地域ブロックの経済的な自立について、「自給自足のことではない」「生産力など富を生み出す何らかの源泉を有し、雇用機会を生み出すこと」という記述は、経済学的にみて正しいのか。
       → 内部での議論や有識者の方々のご意見をもとにしたものである。
    • 高度成長を支えてきた中小製造業が地域ブロックと生活圏域との2極の間に落ちてしまい、切り捨てられるというように読める。P.26にある生活基盤産業では、今失われている中小企業の雇用を全て吸収することは不可能である。今、雇用を支えているのは中小零細企業であり、これまで国は薄く広く支援をしてきたが、今後はそのような支援をなくすのか。雇用なき成長となってしまっても良いのか。
       → 資源が限られるなか国として繁栄するために、拠点に重点的に投資し、波及効果を期待するという考え方を出した。P.22の2で4つの目標を掲げ、頭脳労働者から現場労働者まで幅広い層の雇用を産業集積拠点総体で目指していこうという趣旨である。
    • P.17の3)の「限られた資源(労働、資本)を生産性の高い拠点に重点的に投入」とは、国が支援として投入するのか、それとも、市場経済に基づいて分配される労働、資本が重点的に投入されるように国が支援を行うのか。
       → P.20の(3)にあるように、国は「重点的に投入すべく誘導する」ことが基本だと考えている。
    • P.20の(3)の「日本のなかで限られた労働と資本」「日本全体の地盤沈下」という表現をみると、「選択と集中」という考え方は、日本の中で特定のブロックを選択し集中するというように見え、ブロック内での選択と集中とは読みにくい。
    • P.20の(3)は、「地域ブロックの牽引役」と書き出されているが、日本全体のことも書かれており、拠点が何を牽引するのかが不明確となっている。
    • 資源はどこから投入されるのか。経済的自立と言うならブロック内の資源だろうが、外からの資源の投入を前提とするならば、自立と言えるのか議論の余地がある。資源の投入を決める主体や権限、投入される資源がどこから来るのかといったことを明確にしなければ、自立という概念が分かりづらい。
       → ブロック内の資源が基本であると考えている。一方、あるブロックが自立するまで国がてこ入れする可能性はあるだろう。また、地域づくりに当たっては外部からの工場・プロジェクトの誘致に依存しないという前提で地域に根付いた産業を作るべきであるという考え方を前面に出している。
    • 投入の主体は、経済原則に則って生産性の高い土地へと動く民間である。書き方がやや曖昧である。民の動きがスムーズにいくかどうかについて、規制等で上手くいかなかったり、そもそも極がないので上手くいかないという部分を、規制緩和やインフラ整備等で国が対応していくという考え方が産業政策としてはあり得る。
    • ブロック外からの資源の投入があり得るのなら、その目的は地域ブロック間のバランスを保つということか。ブロック間格差を是認するか否かという話だが、従来からの地域間格差の是正という考え方を今後とも維持するのであれば、文章中で明確にしなければ著しい誤解を生む。
    • 「「国を栄えさせる」ために、拠点に重点的に投入すべき」とあるが、地方切り捨てという意味に取れる。拠点だけが栄えても日本が栄えるとは言えず、均衡ある国土という観点が必要であり、配慮すべき。
    • 拠点都市圏とその他の地域の議論は、ある意味、ライフスタイルの2極を表しているのだろう。拠点都市圏に集まる一生懸命働く人々とその他の地域ののんびりと暮らす人々は、個人単位で所得が違っていてもそれぞれが幸せな人生の選択であればそれでよいのではないか。ただ、のんびりと幸せに暮らすという部分が文章では見えにくく、切り捨てと取られる可能性がある。それなりに幸せにやっていけるような姿を意図しているのならば、もう少し丁寧に書いた方が良い。
    • 地域ブロックの中で拠点とその他を分ければ、中小企業をどうするのかという話隣、日本全体で拠点とその他を分ければ、農山漁村はどうするのかという話になる。日本全体の話と地域ブロック内の話を分け、また、拠点でない地域についても触れる必要がある。
    • ブロック内にしてもブロック間にしても、どこかに拠点を作って集中すると、その他の地域はどうなるのかという議論がどうしても出てくるが、一方、現実問題としてどこかに頑張ってもらわないとならないということもある。伝統的な産業の集中で頑張る地域、新しい技術で頑張る地域、住みやすさや観光資源で頑張る地域など、それぞれの特色を活かした極を作っていくという書き方があり得るのではないか。
    • P.20の(3)の「拠点に重点的に投入する」は削除して欲しい。地域にはそれぞれの役割があり、今日がある。市町村合併によってある程度の拠点もできてくる。地方を守るのも国土計画の大きな役割であり、地方を支援するという表現を入れて欲しい。
    • 真剣に取り組んでいる地域に期待を持たせるような書き方をして欲しい。
    • P.20の(3)に「生産性の低い土地から生産性の高い土地に重点的に投入すべく誘導する」とあるが、市場に任せておけば、労働と資本は生産性の高い土地へと動いていく。自然な動きを妨げるような規制を緩和していくということになるのではないか。
    • 国が地域を選んで工場を集めインフラを整備するといった政策を止めることがある種の合意となっているのではないか。産業政策は、地域ではなく産業やそのメカニズムを支援するという方向ではないか。また、地域を国が選ぶとしても地域自らがブロックの中で行うということは考えられる。このような状況を踏まえるべきである。
       → P.22で「地域の自助努力が基本であり、国は間接的に支援を行う」としている。国が地域を指定し支援するのではなく、地域の中で個性を生かして自助努力で発展してくる拠点があればそれを国が支援するという意味である。
    • 地域を選んでインフラ整備等の支援を行うとなると一全総と同様になる。「成長の極」も聞いたことのある言葉である。市場経済の下で諸物が動いてきた結果として今の状況があることを踏まえ、政策の果たすべきポイントを慎重に考えなければ、新しさが出ない。
       → P.20の中程にあるが、一全総との違いは、今回の拠点が「産業、生活、環境のバランスが取れた構造」であり、「働く人とその家族全員」のことまで考えたものだ得るという点である。
    • P.23の3)の「比較的規模が大きく、「生産性が高い土地」」は地域ブロック内の大きな拠点都市を指すのだろうが、その都市を明確にするのか。
       → 拠点都市圏については、「21世紀の国土のグランドデザイン」で示されている中枢拠点都市圏が1つの候補となる。産業集積拠点については、多種多様な拠点がありうるため、現段階では明確にしていない。
    • 拠点都市圏の都市型産業機能と産業集積拠点とは違うものか。
       → 同じ場合もあれば違う場合もある。産業集積拠点の方が広い範囲を想定している。
    • 拠点都市圏は生活面も含まれており、まさに1つの都市圏を指している。一方、産業集積拠点は、いくつかのブロックや都市にまたがってネットワークを形成しているということもあり得る。
    • 拠点都市圏と産業集積拠点は、区別と連関が分かるように書いた方が分かりやすい。産業集積拠点の核となる都市は拠点都市圏と重なる場合が多い。都市としてみた場合と産業集積としてみた場合とで別の切り口で地域を見ているということが明確になれば良い。
       → 産業集積拠点が拠点都市等の大都市から離れて位置することもあり得ることから、書き分けている。
    • 産業集積拠点の位置づけが分かりづらい。バーチャルな概念でも良いが、地理的には一定の空間に産業が集まっているということである。地場産業、これまで育成されてきた産業都市、観光なども対象に考え、都市概念と結びつけることで、重視すべき都市群が多様化するのではないか。
    • 東京だけに集中するのではなく、8つや9つあるブロックを重視する。それぞれのブロックの中に拠点があり、その拠点がブロックを牽引する。拠点は成長の核であり市場に任せておけば資源が集まる場所なので、ブロック内の動きを妨げるような規制等を外すことで自ずから拠点が育成されていく。公的資金は、拠点とまではいかないが核となり得る都市に重点的に投じる。このようにしてブロック内で複数の核を育成することが可能なのではないか。
       → P.20の(3)の「誘導」には規制緩和等も含まれるが、それが明確となるよう、書き方を工夫する。
    • 従来は市場に任せると三大都市圏で鉄道や道路の混雑等のボトルネックが生じるため、地方分散のための施策が取られてきた。今後は、人口減少によってその議論をする必要はあまりしなくても良いと考えている。しかしながら、群雄割拠型の国土構造の方が良いと考えており、地域ブロックの尊重とブロック内の競争原理に関しては共通認識があると思うが、競争原理の対象となる拠点が1つだけだとなると極端である。多様な顔を持った元気の良い都市という観点があったほうがよい。
    • 選択して集中する拠点は1ヶ所だけなのか。この書き方だと1ヶ所と読める。
    • 地域ブロック内には、大きな拠点都市は1つか2つだろうが、県庁所在市はそれなりに自立しており、また、地場産業や観光等に特化して国際的に名声を博している都市もある。それがわかるような書き振りとして欲しい。様々なタイプを例示すれば良い。
    • 中枢都市、中核都市、中心都市、拠点都市と似たような言葉が多く出てきており、議論が混乱してしまう。今までの拠点なり中枢都市なりを引きずって地域ブロックの拠点を考えると、大きな期待がかかってしまい、逆にそこに入れないと切り捨てというニュアンスにもなってしまう。
    • 地域ブロックが1層目の地域を構成しており、経済活動の単位に概ね当たる。地域ブロックは、全国に1つや2つではなく、8、9つの地域ブロックそれぞれが十分に自立的に発展しうる可能性があるということを確認したい。全てのブロックが大事であるという立場をはっきりさせる。ここに国の役割があるかもしれない。ブロックには中心的な都市圏があるはずであり、国は介入せずに頑張ってもらう。2番手以降の都市の育成を国が担当するということで良いか。
    • ブロック内の2番手以降の都市の話は生活圏域とも関連する。5〜10万人都市は軒並み衰退基調であり、拠点性の低下が心配である。機能分担と相互補完というと、域内の市町村がそれぞれ頑張れという感じがし、共倒れしてしまえば4番手、5番手が育たない地域が結構出てくるのではないか。これこそ、選択と集中が必要という感じがする。
       → 地域ブロックにおいては経済的な観点から集積の外部効果を得るために政策的な誘導によって最適なパイを生じさせるという考え方から拠点を打ち出しているが、生活の観点からは集積によって外部効果が大きく生じたり人口移動が起こることには限界があるため、現に住んでいる人を前提に機能分担と相互補完によって対応するという考え方にしかならないのではないかと思う。
    • モデルとして考えるのであれば、効率性からみても、生活圏域内で拠点となる都市に機能を集中させるということになると思う。しかしながら、これまで生活権域内で地域の核が歴史性を持って地域構造が保たれてきた地域において、どの都市を選択するのかということではなく、歴史的に継承されてきた地域構造を持続させていくことも1つの選択である。機能分担と相互補完はきれいごとであり共倒れに終わるという議論もあるが、個人的には支持したい。また、国土政策として、生活圏域の中で選択と集中を行うという考え方もいかがなものかと思う。
    • 多自然居住地域という観点からも、都市的機能の分担のみならず、都市的な賑わいのある魅力ある都市とそこに食料を供給する周辺地域といった機能分担を含めて、幅広く解釈できるようにした方が良い。
    • 拠点性をもった都市は現に多くあるが、それらについてはこの報告書では言及していない。現にあるものを維持していくということが暗黙のうちに意識されていると思う。
    • 科学技術基本計画に基づく重点4分野の地域毎の割り当ては、必ずしも従来のストックをもとに考えるという訳ではない。ここでは、これまでの産業集積を核としてより大きな拠点化を図るという考え方だと思うが、他の政策と整合するように表現を変えたほうがよいのではないか。
    • P.23の3)には「国が支援する場合には、比較的規模が大きく、「生産性が高い土地」に限定する。」とあるが、そのようなところに支援は必要ない。東京には支援は必要ないだろう。8、9つの拠点を作るためにはブロック内のNo.2、No.3を支援しなければならない。ブロック内の1番手の都市は規制緩和等で自由にやってもらい、2番手以降の都市に様々な支援を行うということではないか。あるいは、地域支援という概念は止め、行為に対する支援という考え方もある。支援に関する思想をどうするかは重要な点である。
    • 国の支援の話は、「間接的」とあり、何を支援するのか答えにくい。
    • インフラの整備は間接的な支援と言えるが、国土計画としては、もう少しインフラ整備に積極的な意味を持たせても良いのではないか。
    • 間接的な支援とは何かわかりづらい。支援とはもともと間接的な意味合いのある言葉である。インフラ整備は、そのものが産業支援とは言えないが結果として産業が興るとすれば、間接的な支援と言える。だが、手法としては古典的なものであり、これまで相当に行われてきた。これまで培ってきた基盤の上に花を咲かせようという時代に入ってきたという認識があると思うが、そこを明確にしなければ、まだインフラが足りないという議論に結びついてしまう。
       → ハード面の支援を否定しないが、主にソフト面の支援を考えている。P.23の3)に、ネットワーク形成等に対する資金援助等のソフト支援を記述している。
    • 間接的な支援には、1国ではなく地方が決める、2ハードではなくソフト、3民間が自然と集まることによって集積が決まる、という3つのポイントがあると思う。基本は民間であるという発想を国土計画に取り込んでいくという意志が「間接的に」という言葉の中に込められているのではないか。
    • P.20の(3)の記述が固まれば他の部分も固まるだろう。地方切り捨てという印象を与えていることは否めず、改めなければならない。日本全体のためには、地域ブロックそれぞれが花開いて頑張るという姿が必要である。地域のこれまでの頑張りを評価するという暖かい姿勢は貫きたい。経済活動の厳しさも考えると、産業活動からのアプローチで成長の極を議論していったほうが良いが、産業活動も多様なものがあり、それぞれが異質性をもって頑張っているため、複数のケースがあり得ると考えた方が良い。支援については、従来型と区別がつくようにする。

(速報のため事後修正の可能性あり)


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