国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会(第9回)
議事概要
- 本年6月、7月に米沢、長岡、八戸で行われた「新たな東北開発促進計画策定に関する意見聴取」の結果(概要は別紙2のとおり)について報告するとともに、「国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会調査検討報告(案)」(概要は別紙1のとおり)について議論を行った。
- 委員からの主な意見は以下のとおりである。
- 東北での意見聴取でも出たが、多様な主体の取組において住民、NPO等を重視すべきである。
- 北東北では交通基盤の遅れが指摘されており、日本海沿岸や三陸における高規格幹線道路整備の重要性を表現できないか。
- 東北は西日本との密度、文化などの違いがあるのでそういう部分を表現してほしい。価値観、美意識、感性が文化であり、そこから空間の差が生じるのではないか。
- グローバルな競争に東北もさらされており、国際競争に耐えうる人材育成を進めるべきである。
- 東北に海外から優秀な人材が来ても、子弟の教育の問題で他の国へ行ってしまった例がある。高度な人材の受け入れ体制についても地域開発という観点から考えられないか。
- 海外との意志疎通にあたってランゲージバリアがあり、通訳は東京から来てもらっている現状がある。このような現状を解決するような東京と東北のリンクを盛り込めないか。
- 地域の人にとって暮らしやすい地域が訪問者にとっても暮らしやすく、訪問者にとって暮らしやすくすることにより地元の人も暮らしやすくなるという双方向のプロセスが意識されるとよい。
- 東北の意見聴取の中で、家族で赴任した人が子供がある年齢になると大都市に帰るという問題があり、最大の問題は教育だと感じた。
- 観光や交流で来た人だけでなく、大学、プロジェクトなど教育や仕事のために来た人が東北に再び戻ってくる地域をつくるということを書いてほしい。
- 多彩なライフスタイルの展開について、東京の24時間緊張した生活だけではなく、東北でのゆったり流れる生活を選択し、自分で組み立てられるというイメージが入るとよい。
- 今後のスケジュールについて
11月に開催される国土審議会東北地方開発特別委員会において「企画部会調査検討報告」を報告することとされた。また、特別委員会の後、特別委員会の議論及び関係県、市、団体の意見を踏まえて計画案を作成し、関係各省庁とも調整した上で、さらに企画部会で審議を行うこととされた。
国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会調査検討報告(案)の概要
第1章 東北開発促進計画の性格と課題
第1節 計画策定の意義
1 計画策定の意義
2 計画期間
3 計画の性格
第2節 東北の歴史と国土
1 東北の歩み
2 東北の国土
第3節 新たな東北開発促進計画の課題
1 20世紀の日本の国土構造
2 近年の東北を取り巻く状況の変化
3 社会経済環境・人々の意識の変化
4 新たな東北開発促進計画の課題
第2章 計画の基本目標と基本方針
第1節 計画の基本目標
「多彩なライフスタイルの展開が可能で、暮らしやすい東北
第2節 計画の基本方針
1 ゆとりある暮らしの中で、自然の恵み、都市的サービスを享受できる東北
2 国内のみならず世界と人々や情報、文化が交流する開かれた東北
3 魅力ある職場が存在し、産業に活力のある東北
第3節 計画推進に向けた多様な主体による取組
第4節 東北の人口・社会経済の動向
1 東北の人口・世帯の動向
2 東北の社会経済の動向
第3章 東北整備のための方向と施策
第1節 ゆとりある暮らしを営むために
1 地域の創意と工夫が活かされた地域づくり
2 多彩なライフスタイルの展開が可能な総合的居住環境の整備
3 都市と農山漁村が結びついた多自然居住地域の形成
4 生活をゆったり過ごせ、子供がのびのび育ち、高齢者等が安心して暮らせる環境整備
5 文化を大切にする美しい地域づくり
6 東北における都市のネットワーク形成と多彩で高度な都市機能の充実
7 半島・離島地域の利便性向上
(1)半島地域
(2)離島地域
第2節 自然の恵みを守り、味わうために
1 自然と共存する地域整備
(1)水系、森林、海浜等豊かな環境の管理
(2)環境と調和した地域整備
(3)公害・環境ホルモン等への対応
2 中山間地域での国土保全と周辺地域との連携
3 災害に強い地域づくり
4 流域圏に着目した国土の保全と管理
(1)河川の上下流連携と管理
(2)森林の管理
(3)農用地等の管理
5 雪と共存する地域づくり
6 廃棄物・リサイクル問題への対応
7 自然と人とのふれあい
第3節 国内のみならず世界と人々や情報、文化が交流する開かれた東北のために
1 東北での北東国土軸、日本海国土軸、東西軸の整備によるラダー型地域構造の形成
(1)東北の地域構造の現状
(2)東北のラダー型地域構造形成のための基盤整備
2 世界に開かれた広域国際交流圏「東北」の形成
(1)広域国際交流圏形成へ向けての東北のポテンシャルと課題
(2)広域国際交流圏「東北」形成への取組
3 広域連携による地域づくり
4 首都圏との連携と交流
第4節 魅力ある職場を確保し、活力ある産業を育てるために
1 独創的な研究開発機能の充実と成長分野の産業育成
2 多彩なライフスタイルを支える産業の展開
3 高度化、高付加価値化による産業構造の強化と多彩な地域産業の充実
4 豊かな農林水産業の展開
(1)農業
(2)林業
(3)水産業
(4)地域間交流等における農林水産業の役割
5 東北の活力を支える人材の育成
6 エネルギーの安定供給
7 地域金融の充実
第4章 計画実施にあたっての留意点
1 住民参加による計画推進
2 重点的かつ効率的な地域整備
3 他計画等との調整
4 計画の評価及び弾力的な運用
新たな東北開発促進計画策定に関する意見聴取の結果について
1 意見聴取の目的
新たな東北開発促進計画については、平成l0年3月の「21世紀の国土のグランドテザイン」の閣議決定を受け、本年度中を目途に策定作業が進められている。
新たな計画においては「参加と連携」が基本的な考え方とされており、東北開発促進計画の策定に当たっても、東北に住む幅広い層の意見を聴取し、これを反映していく必要がある。このため、東北各地において新たな東北開発促進計画策定に向けた意見聴取を実施した。
2 議事内容
意見聴取は、北東北会場(青森県、岩手県、秋田県の住民が参加)、南東北会場(宮城県、山形県、福島県、仙台市の住民が参加)、新潟県会場(新潟県、山形県、福島県の住民が参加)の3ヵ所で開催した。各県市から参加していただいた住民の方々については、年齢、職業、性別等にできるだけ偏りがないようにした。
議事内容としては、国土庁から「新たな東北開発促進計画スケルトン素案」について説明したのち、国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会委員が今後の東北に望むものについて提言を行い、参加者からの新たな計画に対する提言を中心に意見を伺い、企画部会委員が意見の総括を行った。
3 出席者
・各県市からの参加者(計60名)
【性 別】男性38名、女性22名
【年代別】20代3名、30代14名、40代20名、50代13名、60代9名、70代1名
【職業別】会社員5名、会社役員22名、自営業5名、農業8名、公務等14名、
主婦5名、学生1名
(会社役員が多いが、企業家としての立場よりも地域づくり、
地域間交流等の活動の代表者としての立場から御発言いただいた方が多い)
・国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会委員
・国土庁地方振興局、各県・市企画担当部局、関係団体等
4 開催地及び開催場所
- 平成10年6月24日(水)南東北(米沢市:置賜総合文化センター)
- 平成10年7月17日(金)新潟県(長岡市:長岡商工会議所)
- 平成10年7月28日(火)北東北(八戸市:八戸市公民館)
5 全体の意見の特徴
全体的にみると、自然環境の保全・活用についての意見が最も多く出された。
また、地域づくり、まちづくり及びボランティア、NPOなどを含む市民参加についての意見がそれに次いだ。
地域資源の再評価、第一次産業の役割、観光についても多くの意見が出された。市民活動への支援など行政の役割についての意見もみられた。これに、東北人の意識改革、北東北で特に多かった交通網の整備が続いた。生活環境の整備、地域連携の推進、東北からの情報発信、教育の充実に関する発言等もみられた。
6 分野別の意見の特徴
- 最も関心の高かった自然環境の面では、自然環境の保全・活用について多くの意見が出され、自然の恵みを享受している東北の人々の自然への関心の高さが示された。
- 地域資源の再評価に対する意見が比較的多く出された。
- 「参加と連携」をキーワードに市民参加について多くの意見が出された。具体的には、市民が活動に参加しやすい環境を整えることが必要との意見があった。東北人自らの意識改革が必要という意見や東北からの積極的な情報発信についての意見が比較的多く出された。
- 産業・雇用については、農業をはじめ第一次産業の維持・再評価、自然資源等を活かした観光産業の育成、グリーンツーリズムに関する意見が多く出された。
- 社会資本整備については、北東北三県を中心に交通網の整備に対する意見がかなり多く出された。具体的には、盛岡以北や日本海沿岸地域における高速交通体系の整備促進や東北を東西に結ぶ横断軸の整備促進などについての意見が出された。
- 生活関連の意見では、自然環境を残しつつ、都市的サービスを享受できる生活環境の充実などの意見が出された。大学等の高等教育機関の充実や高度医療や福祉環境の充実に対する意見も出され、北東北でこの分野への意見が多かった。
- 地域間交流に関する意見としては、青函インターブロックや東北の横断軸、子供も含めた都市と農村の交流などの意見が出された。
7 会場別の意見の特徴
全会場で多くみられたのが、自然環境に対する意見である。地域づくりなど市民参加への関心も、新潟県で特に高かったが、全体にも高かった。交通網整備、医療・福祉への関心は北東北で高かった。観光への関心は、北東北、南東北で高く、第一次産業への関心は、南東北、新潟県で高かった。地域資源の再評価、東北人の意識改革への関心は、南東北、新潟県で高かった。地域連携の意見は、南東北で多くみられた。
(1)南東北会場(米沢市)での主要意見
- 自然環境の保全・活用についての意見が最も多かった。具体的には、地域に住む人たちが 里山の環境をもっと知る必要性や自然を残すにはある程度人間の手を加えていく必要があるといった意見が出された。
- 産業・雇用の面では、農業を中心とした第一次産業の維持・再評価についての意見が多 かったほか、グリーンツーリズムや観光施設のネットワーク化、観光情報の発信の場の整備 など観光振興に関する意見が多かった。
- 東北人自らの意識改革が必要で、東北のイメージを変えていく必要があるという意見が多 く、あわせて東北からもっと情報発信をしていくべきだとの意見も比較的多かった。
(2)新潟県会場(長岡市)での主要意見
- 南東北会場と似たような傾向がみられ、「参加と連携」に対して関心が集まったこともあ り、市民活動・NPOへの支援等に関する意見や東北人自らの意識改革が必要といった意見 が多く出された。
- 自然環境については、これからの国土計画は開発と保全の両面で考えていくべき、ブナな どの山林は自然の循環を大切にして残してほしいなど多くの意見が出された。
- 地域資源の再評価についても、東北7県に共通する雪、水、資源などの地域資源を掘り起 こし、それを前提に開発を検討するべきなどの意見が出された。
(3)北東北会場(八戸市)での主要意見
- 北東北においては、新幹線や高速道路といった高速交通を中心に交通網を整備を促進してほしいとの意見が、他の二会場に比べて多かった。
- 自然環境の保全・活用についても意見が多く、工場や農業において生産過程で出される産業廃棄物の処理、あるいはリサイクルについて、行政の支援も含めて考える必要があるという意見などが出された。
- 市民活動・NPO等に関する意見やその支援に関連する行政の役割についての意見も多く出された。
問合せ先:国土庁地方振興局東北開発室 (課長補佐)中島、(係長)藤原
(電話)03-5510-8060 (FAX)03-3580-7415