国土審議会東北地方開発特別委員会(第12回)
議事概要
- 特別委員会の下に設けられている企画部会において新たな東北開発促進計画の基本的方向等について検討してきた審議経過を報告し(別添参照)、東北地方の新たな発展のためにどのような施策を重点的に推進していくべきかについて自由な討議を行った。
- 委員からの主な意見は以下のとおりである。
- 地方への公共投資は未だ必要であるので、全国一律に減らすべきではなく、基礎的社会資本整備を進めるべきである。
- 東北は豊かな自然を有しており、これを活かすとともに、人を呼ぶためにはさらに歴史性、物語性等を発掘していかなければならない。
- 21世紀はじめての計画であり、新たな百年、千年のはじまりの計画である。過去の延長線上でない、新たな理念の位置づけが必要である。
- 津軽海峡軸を北海道、東北を結ぶ軸として位置づけるべきである。
- 首都機能移転については一極集中是正の面からも進めるべきである。
- 東北新幹線は地域連携の上からも重要であるので、早期に整備してほしい。
- 北東国土軸と日本海国土軸及びそれらをつなぐ複数の地域連携軸から形成されるラダー型地域構造の形成は評価できる。
- 東北は自律的発展力が脆弱なので自律的発展が可能な地域整備を進めてほしい。
- 東北の産業集積、経済基盤強化のため地域政策金融を明確に位置づけるべきである。
- 中山間地域の公益的な国土保全機能を重視すべきである。
- 仙台、新潟の中枢拠点都市圏としての役割を明確化すべきである。
- ロシアが今後APECに参加することもあり、環日本海交流を進めるべきである。
- 老人が街の中で暮らせるようにすることが市街地空洞化への対策である。
- 東北は日本では北というイメージだが、アメリカの知的センターはもっと北にある。
ポテンシャルはあるので、知的交流をもっと進めていくべきである。
- 今後は人口減少が激しくなるので、それに対する対応を進めなければならない。
- 精神的活性化のためにも歴史的遺産を重要視すべきである。
- 今後は東北の内回りだけではなく外回り(沿岸部)の整備を進めるべきではないか。
- 新たな東北開発促進計画の策定作業スケジュールについて
新しい全国総合開発計画の策定後、企画部会を中心に計画策定に向けた検討を本格化させ、概ね1年後の平成10年度末を目途に新しい計画を策定する予定である。
国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会審議経過報告(概要)
- 東北の現状についての認識
近年、東北を取り巻く環境には以下の構造的な変化が生じている。
・高速交通基盤等の整備が逐次進展
・東北からの人口流出の沈静化
・過疎化・高齢化の進展と地域社会の活力低下への危惧
・心の豊かさ、自然とのふれあいをより大切にする価値観
・中心市街地の活力の低下、産業における国際競争力強化、高度情報化、産業技術の高度化等へ
の対応の要請
このような状況の中、豊かな森林、河川などの自然や田園の中に中枢・中核都市や中小都市が多核的に分散しているという東北の特徴を生かして、活力あふれる産業活動と日々の生活の中にゆとりと潤いが享受できる自然共生型の地域の形成を図るとともに、個性的な都市とそれを取り囲む地域との間のさまざまな交流・連携、環太平洋地域、環日本海地域などの国内外の地域との活発な交流を促進することが期待されている。
このような東北の将来像を実現する新たな東北開発促進計画が求められている。
- 東北地方の新たな発展への基本的方向
(1)多彩なライフスタイルの展開
東北地方の自然、美しい景観、貴重な遺跡、伝統的な文化、地域社会を大切にしながら、新しい文化の創造、多彩なライフスタイルの展開を実現するため、自然環境と都市的サービスの双方が享受できるよう都市地域と周辺地域のアクセスの向上を図る。
東北の貴重な自然・文化を世界に向けて情報発信を図るとともに、中山間地域の公益的機能の維持、自然共生型の地域づくりを進める。
@ 美しい自然と都市的サービスの享受 A 豊かな自然と文化が融和した地域づくり
B 交流連携に向けた自主的な取り組み
(2)広域的な連携による地域づくり
地域の諸機能の高度化、多様化を図るため、市町村の枠を越え、広域的な観点からさまざまな機能の共有化、高度化を進めるとともに、医療・福祉、災害対策等での広域の協力体制を進め、地域の自立的発展の条件整備を図る。
地域住民の広域的な交流や地域づくりへの意識の高まりを踏まえ地域整備を進める。
@ 市町村の枠を越えた連携の推進 A 東北における広域的な取り組み
(3)開かれた東北の形成
東北の主要都市と首都圏を縦方向に結ぶ交通基盤に加え、東西方向の交通網の整備の進展によるラダー型地域構造に向けた基礎が築かれつつあるが、日本海沿岸、三陸沿岸など高速交通基盤の整備が十分ではない地域での基盤整備をさらに進めていく。
高度情報通信基盤の整備を進めることにより21世紀の自律的な発展を促進していく。
日本海国土軸やブロックを越えた地域連携の取組みを踏まえ、地域整備を進める。
@ 自律的発展のための基盤の整備 A 新しい地域連携の方向
B 日本海沿岸地域の特性を生かした交流 C ブロックを越えた取り組み
(4)広域的な国際交流圏の形成
環日本海、環太平洋地域を視野に入れた広域的な国際交流圏の形成のための基盤整備、国際交流機能の充実を、中枢拠点都市圏や中核都市圏を中心に進めていく。
東北における優れた研究開発機能の充実を図り、その成果を世界に向け発信するとともに、海外に向けて東北の各地域の個性の発信に努める。
@ 東北からの国際交流 A 国際交流機能の充実
B 東北から世界への情報発信
(5)時代の動きを先導する産業の高度化
既存産業の高付加価値化を図るとともに産学官の研究機関のネットワーク化により独創的な研究開発機能の充実を目指す。また、ベンチャー型産業の展開活動を支援する。
産業界の多様な需要、研究開発の高度化、国際化に対応した人材育成を進める。
農林水産業の環境整備を図るとともに、体験型、参加型の農林水産業の展開を推進する。
@ 高度化・高付加価値化が求められる産業活動 A 独創的な研究開発機能の充実
B 新しい分野への産業の展開 C 農林水産業の多様な展開
- 新計画策定に向けた方針
新たな計画の策定に当たっては、本報告の基本的な考え方を踏まえ、
(1)財政構造改革等の最近の諸情勢
(2)新しく策定される全国総合開発計画との整合
(3)地方公共団体をはじめとする地方の各層の意見
等に留意しながら、議論がさらに深められていくことを期待する。
問合せ先:国土庁地方振興局東北開発室 (課長補佐)中島、(係長)中川
(電話)03-5510-8060 (FAX)03-3580-7415